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感知器の機能と概要|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

感知器の機能と概要

自動火災報知設備は、感知器によって火災を早期検知し、
住人や建物管理者に知らせて避難を促す設備です。
非常ベルを鳴動させたり、放送設備に信号を送って、非常放送によって避難を促します。

火災感知後、非常ベルなどで避難を促す

火災の検出には、感知器と呼ばれる検出装置が用いられます。

熱によって警報を発する「熱感知器」、煙によって警報を発する「煙感知器」、
炎が発する赤外線や紫外線を検出する「炎感知器」の3種類が代表的であり、
これらを天井に設けて、火災を検出します。

ここでは、感知器の種類と選定方法、設計時の注意点、
代表的な火災受信機の種類と特徴について解説します。

 

感知器とは

感知器とは
「火災によって発生する熱・煙・炎を利用して、自動的に火災を感知し、
火災信号や火災情報信号を受信機・中継器・消火設備に発信するもの」とされています。

熱を感知するものを熱感知器、煙を感知するものを煙感知器、
炎を感知するものを炎感知器として区分されています。

火災が発生すると、
大きく分けて「熱」「煙」「炎」の3種類の要素が、火災場所に発生します。

それぞれに大きな違いがあり、何を検出するかによって感知器の種類や設置方法が変わります。

火災初期まず「煙」が発生し、
時間が経つと周囲の可燃物に引火して、「熱」を発生し、
大きな「炎」となって周囲に伝搬していきます。

煙発生の段階で検出すれば、出火に移行する前に消し止められる可能性があるので、
煙感知器を設置すれば初期消火に役立ちます。

熱感知器は、煙から火に移行した後の熱を検出する機器であり、
熱感知器が動作する頃には、その室内はすでに出火している可能性が高くなります。

もし大空間であって、
煙や炎が天井面にたどり着けず拡散してしまうような高い天井の環境であれば、
炎から発生する紫外線や赤外線を検出する炎感知器を設けます。

どのような環境において、何の感知器を設置するか、
全て消防法によって細かく規定されています。
法規に満足出来る感知器を選定し、適合した場所に計画していきます。

建築プランによっては、消防法に記載されている設置基準を満足出来ない事があります。
所轄消防に対して「感知器を設置しない」という回答は認められないことが多く、
消火設備を強化するなど、代替案を求められるのが一般的です。

 

感知器の設置基準

熱感知器は、感知器周辺の熱を検出して警報を発信する感知器です。
煙感知器や炎感知器よりも安価で、広く普及しています。

熱を検出するという性質から、
熱感知器が作動した際にはすでにその場所は出火状態となっており、
火災の早期検知の観点からすれば、火災検出能力は煙感知器には及びません。

熱感知器は、感知器本体に熱を与えない限り動作しないため、
熱感知器が動作する頃には、かなりの火災の進行が考えられ、
火災の早期検知を必要とする場合には、煙感知器を採用するのがよいと思います。

熱感知器の設置基準として、防火対象物の無窓階判定に注意が必要です。

消防法における「無窓階かつ特定用途建築物」、
または「無窓階かつ別表15項に該当する事業所」は煙感知器を設置する義務が発生します。
埃や湿度が多い場所などを除いて、熱感知器を使用できません。

無窓階の判定は消防隊が進入する開口部が少ないため、
避難活動に支障が発生する可能性が高く、
熱感知器による警戒では危険性が高いことが理由です。

もし開口部が十分に確保出来れば、
消防法上の普通階として判定され、熱感知器を使用出来ます。

しかし、廊下や階段などは重要な避難経路となるため、
原則として熱感知器を使用できず、計画には注意が必要です。
熱感知器の設置基準で覚えておくべき項目は下記の通りです。

  • 感知区域は壁から400mm以上の突出物で区画される
  • 空調や換気吹出口から1,500mm以上離隔する
  • 400mm以上の段差がある場合は、同一感知区域に出来ない

感知器の取り付け高さ・設置基準

熱感知器や煙感知器は、天井高さが高い空間に設置すると、
煙や熱を検出するための時間が長くなるため、警戒面積を小さくしなければなりません。

高さ4mを境界として、警戒面積が半減します。
意匠上天井を下げられるなら、感知器の能力を有効に発揮させられるので、
天井高さは4mを超えないように計画するのが良いでしょう。

煙感知器や熱感知器は、設置する高さが4mを超えると感知区域が半分になるため、
天井高さを4mとして計画している場合、
天井高さを3.99mに変更すれば、感知器の削減を図れます。

 

特殊条件下での感知器の計画

一般的な厨房や台所では、防水型の特殊熱感知器を使用する計画としますが、
さらなる温湿度の条件がある場合は、種類を変える必要があります。

熱感知器は防水・防湿度・高温型など多様な機種があり、
サウナ室のような100℃近い高温の部屋に設置する場合は、
100℃型や150℃型の熱感知器を選定しなければ、誤動作の原因となります。

ミストサウナ室や岩盤浴室など、高温かつ高湿度の空調にも、
高温仕様の熱感知器を適用出来ます。

湿度の高い部屋の感知器設置は、原則として熱感知器とします。

煙感知器は検出部に結露すると使い物にならないため使用禁止です。
防水性能を持つ熱感知器は、屋外でも使用出来るので、
外気に開放された駐車場では、軒下に熱感知器を設置して火災警戒を行います。

外気に開放された場所に設置する熱感知器は、
開放された外部との外壁ラインから5m以内の部分について、感知器の設置を免除出来ます。
所轄消防との協議によっては設置を求められるので、綿密な打ち合わせを行うべです。

 

熱感知器の誤作動防止

熱感知器の誤動作を防止するためには、
常時高い温度になる場所、レンジフードといった発熱体の付近などを避けるように計画します。

熱感知器の検出器機構は「バイメタル」を利用しているため、
煙感知器と比較して誤動作が発生しにくい機構ですが、
設置場所を誤れば非火災報の原因となります。

熱感知器には「屋内仕様」と「屋外仕様」があり、軒下や厨房内など、雨の吹き込みや、
常に湿気があるような場所に熱感知器を設置する場合は、
屋外仕様の防水型熱感知器を選定するのが有効です。

「差動式スポット型感知器」と呼ばれる、
急激な温度変化による内圧上昇で接点動作をする熱感知器があります。

厨房内や、浴室扉の前など、急激な温度変化にさらされる場所に設置すると、
温度変化を火災と認識し、非火災報を誘発します。

防水性能がない差動式感知器を軒下や厨房内に設置した場合、
感知器内部に浸水・結露することで接点が導通してしまい、非火災報となります。

周辺温度が設定値以上になったことで接点が閉じる「定温式スポット型感知器」では、
差動式スポット型感知器のように、厨房器具の直上や、
レンジフードの直近に設置されると、厨房機器使用時に加熱されてしまい、
非火災報の可能性があるので、熱の影響が無いように離隔して設置しなければなりません。

次回は煙感知器についてご説明します。

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