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煙感知器の設置基準|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

煙感知器の設置基準

煙感知器は、火災時に発生する煙を検出する感知器です。
煙は、火災が本格化する前に発生し広がるため、煙感知器で警戒することにより、
火災の早期発見に効果を発揮します。

煙感知器は検出能力の高さや機構の複雑さから、熱感知器よりも価格が高く、
多数設置することによりイニシャルコストの増加につながります。

煙感知器は火災の早期検知に非常に有効であり、
感知面積は熱感知器よりも大きいという特徴があります。

消防法上の無窓階判定を受けた特定防火対象物では、
煙感知器を選定しなければならないといった制約も発生するため、
煙感知器を使用する機会が多くなります。

煙感知器の構造と設置基準

煙感知器は、動作感度の違いによって1種から3種まで区分されています。
一般的な火災警戒には、「2種」の煙感知器が使用され、煙濃度10%で発報します。

エレベーター昇降路の頂部など、煙の早期検出が必要な部分では、
最も感度の高い「1種」の煙感知器を使用しなければなりません。
1種の煙感知器は煙濃度5%で発報する超高感度感知器です。

防火戸や防火シャッターの連動動作用としても、煙感知器が使用されます。

これら防災連動を基本とする設備は、
誤動作によって防火シャッターや防火戸が閉鎖すると、二次災害につながるので、
煙濃度が火災警戒濃度よりも高くなければ動作しない「3種」の煙感知器が選定されます。

3種の煙感知器は、煙濃度15%で発報し、シャッターや防火戸を閉鎖します。
煙感知器の設置基準で、覚えておくべき項目は下記の通りです。

    • 感知区域は600mm以上の突出物で区画される
    • 壁から600mm以上離隔する
    • 空調や換気吹出口から1,500mm以上離隔する
    • 600mm以上の段差がある場合は、同一感知区域に出来ない煙の濃度と種類

煙感知器の誤動作防止

煙感知器は、熱感知器よりも湿気や粉塵に弱いという特性に注意しなければなりません。
煙感知器は、本体にメッシュ状の検出機構があり、
検出機構の内部に侵入した煙で光軸が屈折することを検出し、発報するという仕組みです。

メッシュ内部に結露が発生したり、粉塵が内部に侵入すると、
煙を検出した時と同じように光軸が屈折してしまい、
火災信号を発信してしまうことがあります。

結露や粉塵により、「煙感知器が濃度の高い煙に包まれている」と判断すると、
連動シャッターや防火戸を閉鎖させてしまうこともあります。

煙感知器を設置する場合は、湿度の高い空間や、
粉塵が飛散している環境を避けなければなりません。

立体駐車場などの軒下空間での誤動作事例

感知器の誤動作が多い空間として、立体駐車場などの軒下空間が挙げられます。

立体駐車場は外気に開放された空間ですが、
建物と同様に一定面積ごとに防火区画を形成しなければならないため、
多くの連動感知器が設けられています。

軒下に設ける感知器は、湿気に強い防水型の熱感知器とするが基本ですが、
「連動感知器は煙による」と一様に計画すると、結露や粉塵による誤動作で、
シャッターが閉鎖することがあります。

煙感知器は汚れにも弱く、風が流通するような場所では検出機構に汚れが著しく付着し、
誤動作の原因になります。
蓄積型の煙感知器を使用したとしても、汚れに対して抵抗があるわけではなく、
蓄積状態の頻発や、発報につながることも多くなります。

このような環境では、煙感知器の本来の性能を維持することは困難になるため、
熱感知器への変更を計画すべきです。

シャッターや防火戸連動感知器の誤動作は、挟まれや衝突事故につながる恐れがあり、
大変危険です。

吹出口から1.5m以上の離隔確保の重要性

感知器は「空調機等の吹き出しから1.5m以上離隔する」
と消防法によって定められています。

感知器に気流を当てることによる粉塵の侵入による誤動作の防止の他、
冷風を感知器に当てることで、煙感知器内部に結露が発生し、
検出機構の光軸が屈折して非火災報につながる恐れがあることが理由です。

煙感知器はその動作原理上、光軸の屈折が検出機構であることから、
火災による煙以外であっても、屈折が発生すれば動作します。
喫煙所内に煙感知器が設置されていた場合、タバコの煙によって誤検出し、
感知器が発報する恐れがあります。

煙が発生することが明瞭な場合な場合は、
煙感知器ではなく熱感知器を使用する計画とすべきです。

煙感知器が発報するには一定以上の煙濃度が必要であり、
広い部屋で一人がタバコを吸っている程度では、
空気中に煙が拡散してしまうので誤動作することはほとんどありません。

煙感知器に直接煙を吹きかけたり、多人数で同時に喫煙することで、
煙濃度が高まった際に、非火災報の恐れがあるので、
定常的に煙が発生する空間では、煙感知器の設置に適さない室と判断し、
熱感知器を計画すると良いでしょう。

次回は炎感知器について、ご説明します。

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