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感知器の検出器項の違いと特徴|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

感知器の検出器項の違いと特徴

感知器には、定温式、光電式のように、火災を感知する仕組みによって機種が分かれています。
設置する方法によって分布型やスポット型があり、
感知器を設置する場所によって使い分けることが重要です。

感知器の仕組みと設置方法

差動式スポット型感知器 

差動式スポット型感知器は、
周囲温度が一定の温度上昇率になった際に、火災信号を発信する熱感知器です。

空調による温度変化や日射による温度上昇など、
通常の温度上昇や変化では膨張空気をリーク孔から逃がしますが、
火災時の急激な温度上昇ではダイヤフラムを膨張させるため、接点間隔が狭くなります。

急激な温度上昇が一定範囲を超え、接点が閉じれば、閉回路となり電流が流れ、
受信機に火災信号として伝送されます。

 

定温式スポット型感知器

定温式スポット型感知器は、感知器の周囲温度が一定の温度以上になった際に、
火災信号を発信する熱感知器です。

温度上昇に応じて内部のバイメタルが湾曲していき、
接点が閉じて閉回路となれば、受信機に信号が伝送されます。

火災検出の感度が差動式よりも遅いため、温度の高い場所での設置が一般的です。
消防機関から「原則、差動式を設けること」「差動式の防水型を使って欲しい」
といった指導を受けることもあります。

 

差動式分布型感知器(空気管式)

空気管式の差動式分布型感知器は、外径2mm程度の鋼管(空気管)を室内に張り巡らし、
火災時には、空気管の温度上昇によってダイヤフラムが膨張し、
接点が閉じて閉回路を構成する機構を持つ熱感知器です。

倉庫や体育館など、大空間の警戒に適しています。

空気の膨張によって火災検出するので、動作原理が単純で施工実績が多いため、
大空間の警戒が必要な場面で広く採用されています。

 

差動式分布型感知器(熱電対式)

熱電対式の差動式分布型感知器は、
室内の広範囲に渡る熱の累積によって作動する熱感知器です。

差動式分布型感知器は、鉄とコンスタンタンの金属接点に温度差が生じた際に、
起電力が生じて火災を知らせます。

ハンダ付けを伴う空気管式の施工より、
工事が簡易かつメンテナンスが容易という特徴がありますが、
熱電対式の分布型感知器はあまり普及しておらず、
大空間の警戒は空気管式を採用するのが一般的です。

 

光電式煙感知器

光電式煙感知器は、暗箱内に煙が流入する際に、光束の拡散を利用して火災感知を行います。
一般的に「煙感知器」と呼ばれるのは、この光電式煙感知器です。

警戒場所に応じて、1種・2種・3種の感度を使い分けて警戒します。

煙の進入によって発生する光束散乱を光電素子で捉えて動作します。
埃や粉塵の多い場所は、光電素子が煙と判断する恐れがあるので設置に適していません。

 

光電式分布型感知器

 光電式分布型感知器は、信号発生器を内蔵した送光部と、受光部から成っており、
煙によって光の到達量の減少を測定し、火災信号を伝送する煙感知器です。

5mから100mの公称監視距離を持っており、吹き抜けなど高天井空間に適しています。

送光部と受光部の光軸がずれると発報するので、地震はもちろん、
固定している造営材の熱膨張によって光軸がずれた場合も、エラーが発生します。

送光部と受光部のガラス面が汚れると、光量不足によりエラーが発生するので、
定期的な清掃が必要でしょう。

 

紫外線式スポット型炎感知器

紫外線式スポット型炎感知器は、火災時に発生する炎から放出される紫外線を感知しており、
紫外線の変化が一定量以上になった際に、火災信号を伝送するする感知器です。

紫外線は水銀灯の光や溶接時に出る青白い光にも含まれているので、
これらの電気機器等が多数設置される場所には適していません。

 

赤外線式スポット型炎感知器

赤外線式スポット型炎感知器は、炎から放出される赤外線を感知し、
赤外線量の変化が一定量を超えた際に火災信号を発します。

炎から発生する赤外線は、照明器具から発生する赤外線と違い、
大きく揺らぐ性質があるので、火災時の赤外線か、
それ以外の赤外線かお区別することで誤報を防いでいます。

太陽光から放出される赤外線は揺らぐ性質を持っているため、
直射日光の当たる場所では誤作動の原因となります。
付近に水面がある場合も赤外線が揺らぐので誤動作の原因となります。

 

感知器の設置を免除できる部分

不燃材料で造られている建築物の場合、
場所によって感知器の設置免除が可能な部分があります。

消防法施行令32条の特別申請を必要とするもの、
慣例的に設置不要とされている部分など様々ですが、幾つか紹介しましょう。

軒下に設置する熱感知器や、外気が流通する有効に開放された場所においては、
その開放された部分から5m以内の感知器を免除してもらえる場合があります。

所轄消防に免除判断の有無が違うため、
自走式の立体駐車場などを計画する場合は、確認してみると良いでしょう。

感知器の設置が免除される部分は、
どれも「火災発生の可能性が著しく低い部分」とされている場所に限られており、
トイレや浴室、プール上部などは火災の発生が少ない場所とされ、感知器設置を免除されます。

しかし、トイレについては日常利用で火気を使うことはありませんが、
多くの利用者がタバコによって火災を起こしている事や、
いたずらによるトイレットペーパーへの放火の危険性があるため、
所轄消防によっては、トイレ内に感知器の設置を指導する場合があるので、
計画時には注意が必要です。

法的には不要であっても、安全性を高めるために感知器を設置するのは、
火災予防として有効でしょう。

床面の水洗いをするような湿式トイレの場合、
煙感知器では内部結露で故障や誤動作の可能性があるので、
防水型の作動感知器を採用するのが安心でしょう。

 

感知器の設置を免除される場所の代表例

 感知器を設置しなくても良い場所として、政令で定められているのは下記の通りです。

  • 主要構造部(壁・柱・梁・屋根・階段)を耐火構造とした建築物の天井裏
  • 準耐火構造建築物の天井裏や小屋裏で、不燃材料の壁、天井、床で区画された部分
  • 天井裏であって、上階の床との距離が0.5m未満
  • プールの上部
  • プールサイド(売場がない場合)
  • スケートリンクの滑走部
  • トイレ・浴室・これらに類する部分
  • 金庫室内
  • 恒温室・冷蔵庫内(温度異常警報装置が必要)
  • 感知器の機能保持が著しく困難な部分

感知器の設置が免状される部分は
「火災の発生が著しく少ない」と認められる場所に限られています。

感知器が免除出来る部分については、
所轄消防により代替措置を条例化している場合があるため、
そのまま運用出来ないことがあります。

免除を受けられる場所であっても、感知器の無い空間は、
火災の早期発見が出来ないため、危険と判断されます。

所轄消防は原則として「感知器を設置しない」という措置を手放しに認めないことがあり、
代替措置を求めてきます。

所轄消防の考え方によっては、感知器を設置しない代わりに、
消火器や消火栓、補助散水栓などを追加で設置し、消化能力を高めて欲しいと要望して来ます。所轄消防との十分な協議が不可欠です。

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