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防火戸連動用感知器の仕組み|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

防火戸連動用感知器の仕組み

常時開放されている防火シャッターや防火戸は、火災の防火区画内に限定するため、
自動閉鎖させなければなりません。
煙感知器や熱感知器の信号によって、これら防火設備を自動閉鎖させ、
防火区画や防煙区画を形成する為の感知器を「連動感知器」と呼びます。

常時開放の防火戸・防火ダンパー・可動式の防煙垂れ壁で防火区画や防煙区画を形成する場合、感知器の連動によって閉鎖または動作することが義務付けられているため、
これらの設備に付随して連動感知器を設置します。

連動感知器は、連動対象の防火シャッターや防火戸などから
「1m以上かつ10m以内」の場所に設置することが法的に規制されています。

防火シャッターから連動感知器までの距離

シャッターが多数設けられている通路では、
一つの感知器で全シャッターを警戒するのではなく、
およそ7mから8m間隔で連動感知器を設置し、
全てのシャッターから10m以内に連動感知器が存在するように配置します。

原則として、多数ある感知器のうち、一つでも連動感知器が動作した場合、
その感知器が設置されている区画内の全ての防火戸を閉鎖し、防火区画を構成します。
所轄消防や建築指導課の担当者によっては、区画全体ではなく、
部分的な閉鎖で良いと回答されることもあります。

大きな吹き抜け空間を持っている場所で、連動感知器によって防火区画を構成するため、
一度に数十から数百台あるシャッターを同時降下させるといった計画も考えられます。
信号線の電圧降下なども考慮し、
シャッターが適正に降下するよう連動試験を行って確認しましょう。

感知器による排煙設備との連動

大規模な建築物では、防火設備として排煙設備を設けています。
感知器の作動によって排煙設備を動かすことも可能ではありますが、
これは好ましくはありません。

感知器は誤作動するのが常であり、感知器の汚れ、タバコの煙など、
非火災報による火災発報動作が頻繫に発生します。
その度に排煙機が運転してしまうのは、運用面からも望ましいことではありません。

排煙機の運転は、火災を発見した人の手により「手動開放装置」を操作して起動させるか、
防災センターや中央管理室からの遠隔手動運転とするのが一般的です。
これも所轄の行政機関から、排煙機と感知器の連動を指導されることも考えられるので、
注意が必要です。

排煙機の動作と空調停止

排煙機は、火災によって発生した有害な煙を大風量で吸い出します。
換気設備や空調機が当該室内で運転していると、排煙機が吸い込んでいる煙を攪拌してしまい、排煙機の能力を低下させる原因となります。

自動火災報知設備の動作または排煙機の運転信号に
換気設備や空調機を停止させることが望まれます。

「排煙設備技術指針」によれば、火災発生時には空調機や換気設備を停止することが
「望ましい」とされていますが、
行政によっては火災時の空調停止を強く指導されることもあります。

中央監視設備を持つような大規模施設であれば、
換気ファンや空調機の運転を中央監視装置によって一括管理しており、
火災信号を中央監視装置に送り、強制停止させる方法が採用されています。

この方法の場合、中央監視している動力ファンや空調機などは対応出来ますが、
小部屋用の100Vファンなどは対応出来ません。

排煙機の運転に支障がない場合は、換気や空調を停止しなくても良いことになっているため、
小型ファンや、単独で完結しているパッケージエアコンの空調機など、
多数の室をダクトで繋いで空調していることが無ければ、
空調停止に含まなくても良いと定められています。

感知器の塗装対応

店舗や映画館は意匠的に凝った内装デザインを行うのが多く、
ベージュやオフホワイトカラーの標準色感知器では意匠性を損ねるという理由で、
感知器の色を変更したいという要望が多々発生します。

「天井色に合わせた色にしたい」「黒色の感知器はないか」という質問は多く、
現場塗装をしたいという要望を受けることもあります。

感知器は、器具本体そのものが消防認定品であり、
納品された感知器に直接色を塗ると認定失効になります。

熱感知器は感知器表面の温度を検出し、内部の検出装置の接点を開閉する仕組みのため、
塗装によって検出温度が変化すると正常な検出が阻害されます。現場塗装は厳禁です。

一般感知器は発注後即納品される普及品ですが、特殊仕様とした感知器は、
新規に認定を受けるといった書類手続きのコストが削減されます。
感知器一つであっても、非常に高いコストが発生します。

工場での製作と認定手続きの関係で、納期が非常に長くなります。
メーカーの調達状況にもよりますが、納期30~60日という長時間となる事例もあります。

新築の工事現場では、工期内に機器取り付けをして消防検査を受けられるか、
十分な調整を要します。

感知器の現場塗装は出来ない

熱感知器を塗装すると、熱を検出する機構が塗装によって阻害され、熱の検出が阻害されます。本来必要な機能が満足に出来ません。

煙感知器は熱を検出する製品ではありませんが、メッシュ部にスプレーや塗料が接触すると、
塗装が詰まってしまい、煙が感知器内部に到達出来ず、火災検出ができなくなる恐れがあります。熱感知器と同様に、煙感知器であっても、必要な機能が阻害されます。

感知器を指定色にしたいという要望があった場合、メーカーの工場で塗装を行い、
塗装された本体で消防設備認定を受けて納品する、という手順で感知器を手配します。
メーカーによっては、
ベージュ色以外の感知器を標準設計品として確保している場合があるため、
問い合わせにて確認すると良いでしょう。

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