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殺虫器③|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

電撃殺虫器の設置計画と注意点

電撃殺虫器は高い電圧を発生させる機器であり、
人が容易に触れられる場所に設置してはなりません。

特に業務用の電撃殺虫器は高い電圧を発生させているので、
子供などが容易に手を触れられず、
異物を挿し込むような事が無い位置に取り付けるのが基本です。

火花を発生させる電気機器のため、
爆発性のある危険物や粉塵の多い場所への設置も厳禁です。

電撃殺虫器の安全な取り付け高さ

業務用など、数千ボルトの高電圧を発生させる電撃殺虫器であれば、
電気設備技術基準に準拠し、安全な高さが定められています。

通常、取扱説明書に記載されていますが、軒下に設置する場合は高さ1.8m以上、
屋外で3.5m以上の高さに設置しなければなりません。
樹木などが触れると、異常放電して火災の原因となるため、30cm以上の離隔を確保し、
葉や枝が電撃殺虫器に接触しないように配置します。

電撃殺虫器の設置は1.8m以上

電撃殺虫器を取り付けてはならない場所

粉塵が多い場所、羽毛などが多く飛散する場所に電撃殺虫器を設置してはなりません。
高電圧の火花によって粉塵に引火すると、爆発を引き起こす恐れがあり大変危険です。

ガソリンスタンドなど、揮発性の引火物を取扱う施設の付近も同様で、
引火し爆発する恐れもあるので設置してはなりません。
殺虫剤やスプレーを照射するのも危険です。

建物の近くや窓の近くに電撃殺虫器を設置すると、
青い光に誘われて開口部に虫が近寄り、害虫が建物内に入り込む事があるので、
開口部からできるだけ離隔して設置すると良いでしょう。

建物の出入口や窓の付近には設置せず、開口部から離れた場所に設置するのが基本となります。
外から虫を呼び込んでしまうので注意しましょう。

電撃殺虫器を室内に設置する場合の注意点

電撃殺虫器を室内に設置する場合、衛生面で重要な場所に虫が入り込まないよう、
人の出入りがある出入口付近に設置し、
人と一緒に侵入してくる虫を捕獲するという考え方が基本となります。

建物外部からの虫の呼び込みを避けるため、
必ず「外から光が見えない場所」に設置しなければなりません。
外部から誘虫の青い光が見えると、光に向かって室内に虫が飛び込んでくる恐れがあります。

電撃殺虫器に入り込んだ虫は、
衝撃でトレイ内部に入らず、トレイの外まで飛散する恐れがあります。
床を清掃し易い場所に本体を設置するのを原則とし、
部屋の中央に設置しないように注意しましょう。

衛生面に配慮が必要な食品工場などでは、
生産機器の上部に電撃殺虫器や捕虫器を設置してはなりません。
捕虫時に虫が機器内から飛び出して落下した場合、虫がラインに混入する恐れがあります。

果樹園などに設置する場合の注意点

果樹園に電撃殺虫器や捕虫器を設置する場合、
紫外線ランプの放つ青い光によって害虫、益虫を問わず、多数の虫が集中します。
樹木に対して必要な虫まで誘い込む恐れがあり、生育に悪影響を及ぼすことが懸念されます。

通信機器へのノイズ原因となる

電撃殺虫器が動作する瞬間の高電圧で、
無線機器など通信機器にノイズが発生する恐れがあります。
付近で無線機器を使用していたり、常設している通信機器がある場合は、
その影響への配慮が必要です。

蚊とハエは誘虫効果が薄い

電撃殺虫器は、害虫の代表的な「ハエ」や「蚊」を誘い込みにくくなっています。
ハエは種類により、光に誘引される個体とされない個体があり、
一般的には光よりも「臭気」に強く誘引されます。

蚊も同様に、光によって誘引されない場合があります。
蚊の誘引は紫外線ではなく、人間の呼吸や、生ゴミなどから発生する炭酸ガスなど、
二酸化炭素に強く誘引されるという性質があります。
蚊による被害を防止するために、紫外線を誘虫に用いる電撃殺虫器を計画しても、
効果が発揮されません。

電撃殺虫器に誘引された虫の死骸は、時間によって炭酸ガスを放出するため、
このガスに引かれて蚊が入り込む可能性がありますが、時間を要する上に、
二酸化炭素を多量に放出するような状態ではトレイに大量の死骸が入っている可能性があり、
衛生面からも推奨されることではありません。

トレイを清掃せずに、長時間使用するのは避けるべきであり、
炭酸ガスの発生を目的として、清掃をしないという使い方は望ましい利用方法ではありません。蚊やハエなど、電撃殺虫器では捕獲しにくい害虫の対策としては、
薬剤などを使用して誘い込む事を検討すると良いと思います。

薬剤を利用する場合でも、充電部分に薬剤が触れないよう注意を要します。

JISに規定された電撃殺虫器の仕様と安全性

電撃殺虫器はJISC9335-2-59に規定された電気機器であり、
高い安全性が確保されています。

電撃殺虫器は「2以上のグリッド間に、電圧を印加することによって
昆虫を感電死させる機器」として定義されており、
「二次開放電圧7,000V以下の場合、または保護装置を設けた場合であれば、
地上から1.8m以上の高さに設置できる。」
「保護装置がないもの等は、高さ3.5m以上に設置しなければならない」と規定され、
安全性を維持するために、取り付け方法に規制を与えています。

JISでは、電気機器の製造者に対して「取扱説明に記載する事項」
「安全を確保するための構造・試験方法」などを定めており
「ガーデンホースの水を電撃殺虫器に向けると感電の危険があることを明記すること」
という詳細な規定までを含ませました。

「清掃方法」「ランプ交換頻度・交換時の予防措置」なども明記対象とされており、
電撃殺虫器はそれだけ危険性が高く、
取扱いを間違えると事故につながりやすい電気機器と理解しなければなりません。

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