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系統連系|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

系統連系とは

太陽光発電や風力発電などで発電した電力を、
電力会社から受電する電力と接続する技術を系統連系と呼びます。

系統連系では、
自家発電した電力でまかない切れない負荷電力を電力会社線からの供給で補完でき、
さらに余剰電力が発生した場合は電力会社線への電気の逆流も可能なため、
発電設備の負荷率を最大100%まで引き上げられます。

系統連系を行う場合、電力会社が供給する電力と同様の品質が要求されるため、
太陽光発電や風力発電で発生した電圧が過電圧や不足電圧になったり、
周波数上昇や低下が発生すると、電力会社の系統全体の品質に悪影響を及ぼします。

これら不具合を検出する継電器を設置して、
電圧や周波数の異常を検出した際には即座に電力会社系統から切り離す必要があります。
これを解列と呼びます。

系統連系は、電力会社の電力系統に発電設備を接続することを示しており、
電力会社の配電線に対して電力を送り込むかは別問題です。
電力会社の配電線に電力を送り込む場合、逆潮流という技術を理解する必要があります。

逆潮流

系統連系状態の電路において、消費する電力よりも自家発電する電力が多くなると、
その余剰電力は電力会社の線側に戻って行きます。
これを逆潮流と呼びます。
電力会社はその逆潮流された電力を他の需要家に供給出来るため、
電力を供給する一需要家が発電所として機能します。

自前の発電設備から逆潮流を行う需要家は、電力会社と契約することにより、
逆潮流した分の電力を一定の電気料金で買い取ってもらえます。

発電設備から発電した電力のうち、構内で消費出来なかった余剰の電力は、
電力会社の配電線を通して使い切られるため、
負荷率を常に100%と出来るという利点があります。
発電設備を休ませる事なく最大効率で運用出来ます。

自家発電と売電買電

太陽光発電や風力発電で発電した電力の売単価は、受電契約と同等の電気料金です。
一般住宅では従量電灯契約などが普通であり、
約24円/kwh程度の単価で買い取ってもらえますが、高圧受電の需要家では、
電力の単価が安いため、12~16円/kwh程度の買取額です。
高圧需要家では、逆潮流による売電のメリットはかなり小さいといえます。

太陽光発電設備の電力買取価格は頻繫に変動しており、
平成21年11月から平成22年度までに電力会社へ契約申し込みを実施した場合、
住宅用10kw未満で48円/kwh、
非住宅用は24円/kwhの買取価格となっていましたが、
平成23年度に新たに契約申し込みをした場合は、住宅用10kw未満は42円/kwh、
非住宅用は40円/kwhとなりました。

上記金額は、太陽光発電設備を単独で設置している場合の買取価格であり、
太陽光発電設備以外の発電設備を持っている場合、買取価格が低減されるため注意が必要です。
資源エネルギー庁では「ダブル発電」という名称で区別を行っています。

  • バンク逆潮流

バンク逆潮流は、大規模な発電設備が需要家側に設けられた場合に発生する問題の一つです。
電力会社の変電所のバンク単位で、
高圧系統から特別高圧系統に向かって電気の流れ(潮流)が発生することで、
配電線の電圧品質の悪化や、保護協調の不良を発生させる原因になります。

バンク逆潮流に対応出来ない変電所では、電圧の異常変動を防止するため、
逆潮流に対応した電圧調整を行う自動電圧調整装置を導入するといった対策を行います。
保護協調に対しては、接地形計器用変圧器や事故検出用のOVGRを設ける対策を行います。

これら工事負担は接続する発電事業者に請求されることになり、
各電力会社毎に負担金額の単価が定められています。

発電電力の品質安定化

需要家側から電力会社線に逆潮流する場合、
同じ系統に接続されている需要家へ悪影響を及ぼさないため、
電力品質を一定以上に確保しなければなりません。

電力や周波数などが、電力会社が決めた規定値以上に変動した場合、
自動的に電路を遮断する装置を設ける必要があります。

電力の品質確保は、資源エネルギー庁が提示している
「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」
と呼ばれる指針に合致するよう求められています。

このガイドラインは昭和61年に策定され、何度もの改定を経て、
平成27年4月にも改定が行われました。
電力自由化に伴う多様な発電設備業者の扱いにも適合しており、
このガイドラインを満足するよう計画することが求められています。

  • パワーコンディショナーによる電力の安定化

太陽光発電設備を系統連系する場合を考えてみましょう。
太陽光発電設備から発電される電力は直流の電源であり、
そのまま交流である電力会社の電線に接続出来ません。

ここで、直流の電源を「パワーコンディショナー」と呼ばれる電力変換装置を通して、
交流電源に変換します。
パワーコンディショナーでは、交直変換に合わせて、
電圧の調整や、周波数の安定化も併せて行います。

パワーコンディショナーからは安定した電力が供給されますが、
電圧や周波数の値が大きく変動した際には、
電路を切り離すことで健全性を保つ必要があります。

電源の安定性が乱された場合に、
これらを開放する安全装置がパワーコンディショナーに内蔵されています。
太陽光発電や風力発電によって発電された不安定な電力は、
パワーコンディショナーを経由することで、一定以上の品質を保った電力に調節されています。

  • 電圧変動の対策

電力会社の配電系統は、電気事業法の定めにより
「標準電圧100Vに対して101±6V以内」
「標準電圧200Vに対して202±20V以内」に電圧を維持すること。

自家発電設備から逆潮流を受けた場合であっても、この電圧を維持する必要があるので、
系統連系をする発電設備の設置者は、
電圧を著しく乱さないような対策を講じる必要があります。

逆潮流によって系統側の電圧が適正値を逸脱する恐れがある場合、
進相無効電力制御機能(発電装置から系統に向かって無効電力を制御して電圧を調整する機能)や出力制御機能(発電装置の出力を制限して電圧を調整する機能)を搭載し、
電圧の変動を抑制しなければなりません。

  • 瞬時電圧変動の対策

発電設備が並列運転を開始したり、解列した瞬間に大きな瞬時電圧変動を引き起こします。
近年はOA機器や半導体を多用した設備の普及が著しく、
電圧変動によって故障や機能停止を引き起こす恐れがあるため、
瞬時電圧変動についても抑制が求められています。

電圧変動に対しては、配電線の増強、限流リアクトルの設置、
専用連系線への振替えなどが対策として考えられています。

 

次回は電力会社の系統に逆潮流する発電設備の防止機能について考えてみたいと思います。

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