終わっても終わらないのです!存続条項|契約の教科書(3)
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
契約の教科書(3)
存続条項
弊所で使用している、存続条項の雛形・ひな形・記載例はこちらになります。
(契約終了後の効力) |
この条項の解説
契約には、必ずどんなものにも終わりが来ます。
無限に存続することはないのです。
契約は、基本的にその時の力関係によってなされるものです。
その為、状況が変われば必ず、契約内容の見直し・解約は当然あるものですし、
あるべきです。
どちらかの会社が、成長・衰退すれば当然に契約内容は変わるものです。
社長・役員・担当社員等が変われば、変わることもあり得ます。
同じ人でも、時の経過とともに、いくらでも、心変わりはあり得るのです。
もちろん、そのような場合であっても、
急に取引がなくならないように契約書があって、安定化を図っています。
それでも、契約更新の場合などに、終わることは当然です。
そのため、契約をする際には、必ず終了条件(通常は存続条件)を定めます。
存続できずに、終了した際に、どの条項が残るのかは、
契約を終えられないという意味でとても重要です。
しかし、大抵の場合、ここが一番ミスも多いですし、
よく考えられていません。
必ず、どの条項が存続し、どの条項が存続しないかは確認しましょう。
存続条項での注意
この条項は、契約書作成の際にやり取りをして条文の数が変化すると、第〇条、第〇条という部分が
どんどん変わってしまうので、注意が必要です。
その対応としては、上記例のように、単に第〇条とするだけではなく、
第〇条の横に(秘密保持)などと書いておくと、
後から、記載・チェックすることが楽になります。
当然、私も契約書の作成などをするのですが、
何が大変かというと、何度も修正していくと、この存続条項の記載が変わることが多く、
かなり大変です。
もっと根本的なミスを予防する方法
なぜ、この条項にミスが多いかというと、
契約書案の最初は、大抵しっかり見て、第何条と書いて確認しているのです。
そのため、この段階ではミスはないのです。
その後、修正などをしているうちに、第〇条がどんどん変わってしまい、
それに追従できず、ミスが生じてしまうのです。
そこで、実はこのような存続条項という独立した条項を作るのではなく、
後述する、存続させたい条項の最後の項に、「本条は契約終了後○年有効とする」と記載することも
対応策として有効だと思います。
第○条(守秘義務) ポラリスと植村国際とは、秘密を守ることに同意する。・・・ 2 但し、・・・・・・・ 3 本条は、契約が満了・終了・解除された場合であっても、〇年間有効とする。 4 前項において契約解除された後に、本条に違反があった場合は、通常の損害の2倍の損害賠償を負うものとする。ただし、契約解除後、2年以降においては、1倍とする。 |
という感じです。
このような書き方だと、
条項ごとに存続期間を変化させたり、
条件を付けたり、
存続しつつ、一部緩和させたり、
契約終了後の円滑な関係解消などを記載したりできるので、
大変便利だと思います。
このように考えると、存続条項を、まとめて書く、
従来の契約書は、良くないということが容易にわかると思います。
どのような条項が存続条項となるのか?
もちろん、契約によって千差万別ですが、以下のものは一般に存続されます。
ただ、自分にとって不利な条項は、あえて存続させないようにするというのは、良いと思います。
特に、(3)裁判籍などは、相手には無くても気が付かないと思います。
(1)守秘義務条項
契約解除になった瞬間、守秘義務契約がなくなってしまうと
とても困るので、通常は、守秘義務契約は存続させます。
ただ、永遠にするか否は、検討したほうがいいです。
もし、自分が守秘義務を守る立場の場合は、
3~5年ぐらいに勘弁してもらった方がいいと思います。
(2)損害賠償条項
通常は、損害賠償契約は、契約を解除しなければならないような、
債務不履行や、不信が原因であることが多いです。
そのため、契約を解除した後も損害賠償請求権が残る必要があります。
よって、損害賠償の条項は残しましょう。
また、債務不履行の場合に契約解除する場合に、契約解除した場合の違約金なども、
存続条項として記載したうえで、加重する(3倍取るとか)も容易に記載できます。
(3)裁判籍条項
損害賠償の条項は残すべきなので、裁判籍の条項は普通残すべきです。
自分に有利でないのであれば、あえて消すということも十分にあり得る選択肢です。
たぶん、ここまでは見ていないので、無くても気が付かないと思います。
(4)契約不適合責任条項(瑕疵担保条項)
すぐに分からない不適合(瑕疵)なので、契約解除前には分からず、
数年して分かるということが十分にあり得るので、残すべきです。
ただ、期間の定めをなくするか、期間を区切るかはある程度
相手との交渉の余地があると思います。
(5)知的財産権条項
私の専門なのですが、特許の場合、契約解除後に侵害で訴えられることもあり得ますので、
残す場合もあるようです。
また、改良発明についての規定などは、契約解除後にその分野の発明をされたくないということで、残す場合もあるようです。
ただ、あまり一般的ではないと思います。
(6)PL法条項(製造物責任知的財産権)
PL法に関する問題については、契約解除後も対応してくださいということで、
残すこともあるようです。
ただ、あまり一般的ではないと思います。
(7)反社勢力の排除条項(反社条項)
契約解除後なので、まあ、特段必要ないかもしれませんが、
何かあると嫌なので、念のためですね。
等になります。
契約の終了の理由により存続条項の中身は違うはず
更に検討したほうがいいこと(終了によって内容を変えるべきか)
この存続条項については、どのような条件の場合に存続するのかも考えて、
契約に反映させた方がいいです。
例えば、
普通に契約期間の満了の場合と、
延長が無かったことによる終了と、
一方の債務不履行による終了と、
相手の破産等による終了と、
では異なるはずです。
もし余裕があるなら、契約段階で検討すべきです。
債務不履行による終了の場合、破産の場合には、存続条項の存在価値があるかなどです。
契約書関連ページ
その他の契約関するページをまとめたものは↓ページです。
サルでもわかる契約!まとめ:契約書の教科書(契約書チェック・作成)
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