従業員を裁判でもこき使いましょう!裁判管轄(簡易裁判所):契約書チェック|契約書の教科書(2)

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

契約の教科書(2)

続・裁判籍(管轄)について:簡易裁判所

弊所で使っている裁判管轄の条項の記載例(雛形・ひな形・記載例)は以下になります。

第〇条 (合意管轄裁判所)

本契約及び個別契約に起因し又は関連する一切の紛争については、訴額に応じて〇〇地方裁判所、又は、〇〇簡易裁判所所を第一審の専属管轄裁判所とする。

前回のこのページで、相手の住所を管轄する裁判所で裁判しなければならないことが、
どれだけ負担かということを書かせていただきました。

簡易裁判所の裁判籍について

今回は、地方裁判所と、簡易裁判所の違いについて説明させていただきます。

契約書の最後の条文を見る時に、

 ① 「地方裁判所又は簡易裁判所」とだけ書いているのか

 ② 「訴額に応じて、地方裁判所又は簡易裁判所」とかいているのか

 ③ 「地方裁判所」だけが書いてあるのか

 も重要です!

3つの違い

その違いを説明しますと、

地方裁判所で裁判する場合に裁判所に出て訴訟を遂行できるのは、
基本的に、代表取締役又は弁護士だけです。

他方、簡易裁判所の場合、裁判所に出て訴訟を遂行できるのは、
代表取締役、弁護士又は従業員です。

つまり、簡易裁判の場合は、従業員が訴訟を遂行できるのです。

社長様自体が、裁判に出るのは時間的・経済的にも通常はコストが合わないはずです。
裁判の知識もなく、相手にいいようにされてしまうかもしれません。

そうした場合に、弁護士を頼むとすると、弁護士費用はとても高いです。
一回、訴訟に出てもらうだけで、簡単に数十万円かかってしまいます。
それがとても負担になってしまうのです。

そのような場合に、少しだけでも訴訟に長けた従業員がいたら、
コストも安く済ませられるのではないでしょうか。
弁護士に費用をかけたらとても合わないけど、
従業員へのコスト負担だけなら戦えるという場面は多いのではないでしょうか?

そのため、簡易裁判所を入れておくのは有意義なのです。

簡易裁判所は従業員も訴訟遂行可

大企業の契約書

大手企業の場合は、あえて、【③の地方裁判所だけ】を入れる場合もあります。

一見すると、大企業さんも費用が掛かるからと思いますが、
大資本のある大企業の場合、弁護士に頼む費用はそれほど負担ではありません。

下請・中小がその負担を感じることになり、
それは、ひるがえって、大企業が訴えられるリスクを一方的に減らすということになるのです。

そのため、中小企業が扱う程度の少額での訴訟も戦えるように、
地方裁判所だけではなく簡易裁判所も入れるべきなのです。
そのため③の表記はやめるべきです。

簡易裁判所での訴訟を強制する

次に、①の場合は、問題ないように思いますが、
相手は、簡易裁判所でも争える訴訟を簡易裁判所でも地方裁判所でも好きな方を選べるのです。

一見すると合理的に見えますが、
安い訴訟は、弁護士を介さずに安く済ませたいのではないでしょうか?
負けるにしても勝つにしても。
そのため、①も避けた方がいいと思います。

その結果、
簡易裁判所で争えるものは簡易裁判所での争いを強制する②がベスト
だと思います。

もちろん、逆に、御社の方が上記内容をコントロールしたいという場合は、
あえて、③又は①にすることも可能です。

最後に、弁護士の作る契約書だと、③とする場合も多いように思います。
訴訟になった時に儲けるチャンスを得るためだと思います。

140万円の壁

なお、簡易裁判所で訴訟で争える額の上限は、140万円までです。
そのため、140万円を超える場合は、いずれにしても地方裁判所で争うことになります。

関連情報

裁判管轄について裁判所のページは、こちらになります。

 

契約書関連ページ

その他の契約関するページをまとめたものは↓ページです。
サルでもわかる契約!まとめ:契約書の教科書(契約書チェック・作成)

消費者庁の契約に関するページ

 © 行政書士 植村総合事務所 所長 行政書士 植村貴昭

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