当社の責任ではありません。不可抗力条項

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

当社の責任ではありません。不可抗力条項

不可抗力とは

このコラムを書いている時期はちょうど2度目の非常事態宣言が埼玉にも出されており、
当社も政府の要請通り原則テレワーク勤務となっています。

テレワーク勤務となっていいこともありますが、準備が整っておらず業務スピードが遅くなっています。

そこで、このような非常事態宣言で納品等が遅滞した場合には誰の責任となるのか、
だれにも責任がないため損害が出たとしても泣き寝入りしないといけないのでしょうか?

不可抗力条項とは

一般的な不可抗力条項とは、正確には不可抗力免責条項といい、
地震や津波などの天災、戦争、テロ行為など契約当事者の努力では回避できない要因により
契約上の義務を負う者(通常は債務者)が債務の履行ができないことを証明することにより、
損害賠償等の責任を免責される条項になります。

前述のとおり、不可抗力と定められている対象や範囲は様々であるため、
不可抗力条項があるからといってそれだけで損害賠償等の責任が免責されることになるわけではありませんので注意が必要となります。

不可抗力による損害賠償免責とは

不可抗力の例

例えば、国交省が公開している民間建設工事標準請負契約約款には不可抗力条項として以下の条文があります。

(不可抗力による損害)

1 天災その他自然的又は人為的な事象であって、発注者又は受注者のいずれにもその責めを帰することのできない事由(以下「不可抗力」という。)によって、工事の出来形部分、工事仮設物、工事現場に搬入した工事材料、建築設備の機器(有償支給材料を含む。)又は施工用機器について損害が生じたときは、受注者は、事実発生後速やかにその状況を発注者に通知する。

2 前項の損害について、発注者及び受注者が協議して重大なものと認め、かつ、受注者が善良な管理者としての注意をしたと認められるものは、発注者がこれを負担する。

この条文によれば、例えば地震など不可抗力によって、受注者が施行していた建築物にひびなどの損害が生じたとしても、直ちに発注者がその損害を負担するわけではありません。

不可抗力となるには

まずは不可抗力が生じた事情(なぜ地震により建築物にひびが生じたのか)を発注者と受注者とで情報を共有しなぜこのような状況になってしまったのかを相談する必要があります。

そのうえで、受注者が建築確認を受けた図面などに基づいてきちんと工事をしたにもかかわらず、地震の揺れによってひびが生じた場合についてのみ発注者が負担することになります。

コロナの場合は?

では、昨年の4月の新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が出たことで、
工事材料を期日までに納品できなかった場合はどうなるでしょうか?

単に緊急事態宣言が出たことを理由として納入業者が納入をしなかったとしても、
他の業者などに委託をすることで納品自体は可能ですのでこのような場合には不可抗力に当たらないとされる可能性が高いと思います。

このように、単に天災などの不可抗力が生じたからといって損害賠償等の責任が免責されるわけではありませんので、
まずは弁護士や行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

なお、金銭債務については民法419条3項で不可抗力により不履行になることはないとされていますので、くれぐれも注意が必要です。

金銭債務については?

(金銭債務の特則)

第419条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

とありますので、お金で支払うべきものを支払わなかった場合などは、
たとえ不可抗力であっても、免責されないということになります。

遅延損害金利率の2020年民法改正についてはこちら

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サルでもわかる契約!まとめ:契約書の教科書(契約書チェック・作成)

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©行政書士 植村総合事務所 代表行政書士 植村貴昭

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