違約金は1億円?:違約金条項
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
違約金は1億円?
違約金条項
当社の契約書の雛形でも以下のような損が賠償の条文があります。
「○○及び○○は、本契約の履行にあたり、自己の責めに帰すべき事由により相手方に損害を与えた場合には、当該損害を法律に基づき賠償するものとする。」
先月当社の営業担当者から「今回の契約は重要であり、絶対に期日に納品をさせたいので雛形のような条文ではなく「違約金として1億円を払わなければならない」と記載してもらいたいのですが可能でしょうか」との相談がありましたので、今回は損害賠償の予定について話をさせて頂きます。
民法の規定
まず、民法には損害賠償について以下のような条文があります。
(賠償額の予定)
第四百二十条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。
契約自由の原則
前回のコラムでもお話しましたが民法は契約自由が原則ですので、当事者が合意をしたのであれば、
契約の時点では発生していない債務不履行による損害でも契約書に記載することができることになります。
それを条文で示したのが421条1項になります。
そして3項で「違約金は賠償額の予定と推定する」とあるので、
商品の納品が1日でも遅れた場合には違約金として1億円を払うと条文に定めること自体は可能になります。
契約自由の原則の限界(公序良俗)
但し、違約金額が著しく高額で公序良俗に反するような場合には賠償額の予定が無効となる場合があります。
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
公序良俗違反の例
例えば、どのコンビニなどでも購入できる無地のTシャツを1枚1000円で購入する契約を結んだ場合に、納品期日を1日でも過ぎたら1億円払えというのは公序良俗に反すると判断され違約金の条項自体が無効となる可能性が高いといえます。
解説
そもそも、損害賠償請求とは実際に債務者が契約通りに履行しなかったときに、
債権者が遅れたことによる損害の発生とその額を立証しなければならないのが原則です。
これをあらかじめ契約締結時に合意しておけば立証自体が必要なくなるため、
債権者は契約書に記載の賠償額を立証せずに債務者に請求することができます。
もっとも、Tシャツ1枚購入する契約で1日でも納品が遅れたら1億円をもらえるのであれば
私としては市販のTシャツよりも1億円が欲しいのでどうにかして債務者が債務不履行になるように画策してしまいますが、
このような結論は本来の趣旨(納品期日までに合意した内容を履行すること)に反することになるため、
公序良俗に反すると判断されることになります。
損害額の予定は慎重に
なお、賠償額を予定した場合にはたとえ実際の金額が異なったことになったとしても
裁判所は賠償額の増減をすることができないので(公序良俗違反は別です)、
金額を定める場合には慎重に額を計算するべきです。
例えば1日10万円くらいでいいだろうと考えて契約書に記載したものの、実際に
は20万円の損害が発生した場合でも契約書には10万円とある以上それ以外は権利を放棄したものと判断されるからです。
労働契約の場合(労働基準法)
ちなみに従業員との労働契約で「途中でやめたら、違約金として100万円を払え」と賠償額の予定をすることは、
賠償予定の禁止(労働基準法16条)に反し無効となるのでご注意ください。
契約書関連ページ
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サルでもわかる契約!まとめ:契約書の教科書(契約書チェック・作成)
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