コラム(各種情報)
玩具業界の知財戦略
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植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 |
皆様、ベイブレードという玩具をご存じでしょうか。ベイブレードは、タカラトミー(旧タカラ
)が発売している現代版のベーゴマ(玩具)であります。1999年に最初のシリーズである「爆転
シュート ベイブレード」が発売され、2001年にアニメ放送が開始されると爆発的に人気とな
りました。2023年からは、第4世代となる『BEYBLADE X』(ベイブレード エックス)が発売されて
います。ジャストミートの世代でなくても、名前は聞いたことがあるものと思われます。
ベイブレードは、一つのパーツだけからなるベーゴマとは違い、複数のパーツで構成され、各パ
ーツの組み換えによって自分だけのコマをカスタマイズできるのが特徴であります。
ベイブレードは、タカラトミーの屋台骨を支える大黒柱といえます。このようなヒット商品であ
るにもかかわらず、日本国内の他社から類似商品は発売されておりません。過去にルービックキュ
ーブがブームを起こしたときには、多数の類似商品が発売されました。この違いはなんでしょうか。この違いは、旧株式会社タカラより続く知財戦略にあります。
知財戦略の結果として、古くは、1999年8月24日出願の実用新案登録第3066857号、1999年の9月9日出願の実用新案登録第3067318号、新しくは、2022年10月6日出願の特許第7487894号が有ります。特に実用新案登録第3067318号のコマ玩具は、重要な権利として他社の類似商品攻勢成の防波堤となってきました。
実用新案登録第3067318号公報の請求項1には、(イ)複数の部材を層状に取り付けて成
ること、(ロ)各層においてそれぞれ組替え可能な複数の部材が設けられていること、(ハ)各層
の部材はそれぞれ他の層の部材に対して共通の取付手段によって着脱可能に形成されていること、(ニ)最下部には回転軸が設けられていること、の要件を備えたことを特徴とするコマ玩具が記載されておのます。
この構成は、商品としてのベイブレードの基本となっており、非常に権利範囲が広く、これだけ
でも、他社は類似商品を販売することをためらうでしょう。また、実用新案登録第3067318
号公報の【考案の実施の形態】には、発売するベイブレードの構成を文書と図面で十分記載してお
り、他社の周辺特許、周辺実用新案の取得を阻害しております。さらに、タカラトミー(旧タカラ
)は、周辺技術、関連技術の出願を続けており、他社に爪居る隙を与えておりません。このように、実用新案、特許の出願は、企業防衛の要といえます。
以上