フィリピン人を雇用する際の注意点:MWO(旧POLO)等の制度説明:前提知識

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

フィリピン人を雇用する際の注意点:MWO(旧POLO)等の制度説明:前提知識

技術・人文知識・国際業務

下記の手続きは、技術・人文知識・国際業務の在留資格であっても必要です。

フィリピン雇用はやめた方がいい

正直言うと、フィリピン人を雇用するのは、よほどの事情がない限り、
止めた方がいいです。

下記のような、余分な・不要な手続きが必要です。

    1. 余計な費用が掛かります。30~50万円ぐらい
    2. 期間が余計にかかります。2~3月ぐらい
    3. 雇えない可能性が最後まで残ります。

1及び2については、下記の手続きが余分に必要になるからです。

3については、下記の手続きを経ても必ずしも、許可になるとは限らないからです。
最終的に不許可になって、1の費用と、2の時間をむだにしただけということも往々にしてあります。

もちろん、この手続き以外に入管への手続きも並行して進めているため、
これもおじゃん(費用は通常はすでにかかっているはずです。)ですし、
新たにほかの人材を採用する手間もコストもかかります。

フィリピン人の雇用の流れ

会社は、DMW(フィリピン移民労働者省 旧 POEA  )認定現地エージェントと雇用契約を締結する
 ⇩
エージェントに就労申請人が海外での就労のために登録する  
 ⇩
就労のための書類がフィリピンのエージェンシーから会社に届く
(MWO(旧POLO)のホームページからもダウンロードできます)
 ⇩
書類を作成し、MWO(移住労働者事務所)へ提出⇒審査⇒承認
    ⇩
MWOの承認が下りたら、
  ①MWO承認認定が交付される
  入管から②在留資格認定証明書が交付される
  会社は①と②をエージェントに郵送
 ⇩
エージェントは
  ・日本領事館へ行き査証の交付を受ける
  ・MWO認定書持ってDMW(旧 POEA  )へ行き海外労働許可証の交付を受ける
 ⇩
その間に、就労者はメディカルチェックを受ける(この費用は就労者負担です)
     ※フィリピンの場合は、結核スクリーニングが義務付けられています。
     詳細は厚生労働省のホームページを参照してください。
 ⇩
就労者が来日し、空港で在留カードの交付を受ける

※詳細は、下記見出し「フィリピン人を雇用するための手続きの流れは?」を参照

 

前提知識:フィリピンの人材に関する各機関について

MWO(旧POLO)?DMW(旧 POEA  )?なんじゃそれ?と、前提知識のなかった私は思いましたので、実際の手続きのご紹介に移る前に、フィリピン人材雇用に関係している行政機関についてご紹介します。

フィリピン移民労働者省(DMW(旧 POEA  ):DMW(Department of Migration Workers / 移民労働者省)

海外で働くフィリピン人の権利を守る目的で活動している送り出し政策の中心機関です。フィリピン現地にあり、人材を送り出す前に就職先の審査を行っています。

日本企業が、フィリピン現地から人材を直接雇用する場合には、必ずこのDMW(旧 POEA  )の審査を受ける必要があります。

駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所
 MWO(旧POLO):Migrant Workers Office 

DMW(旧 POEA  )の出先機関に当たるのが、MWO(旧POLO)です。
MWO(旧POLO)は、海外各国に拠点があり、日本ではフィリピン大使館と大阪に拠点を持っています。

住所:東京都港区六本木5−15−5
電話番号:03-6441-0428

所在地 :大阪府中央区淡路町4-3-5アーバンセンター御堂筋7階
電話番号:06-6575-7593
※ちなみに大阪の方がスムーズに進みます。

フィリピン人を雇用するための手続きの流れは

ここからはフィリピン人を雇用するための手続きの流れについて説明します。

準備として、フィリピン人を雇用したい経営者がDMW(旧 POEA  )認定の現地エージェンシー(送り出し機関)契約を結びます。基本的な流れは、『エージェンシーとフィリピン人を雇用したい企業が協力してMWO(旧POLO)、DMW(旧 POEA  )から採用許可を受け、そこから採用活動を開始する』です。

MWO、DMWの許可を得る前に、人材に内定を出したとしても、会社としてフィリピンの諸機関から採用許可を得られなければ、内定取り消しになってしまいますので、注意が必要です。

①書類準備・提出

必要書類を契約を結んだ現地機関と準備します。

下記のような書類を提出します。
目的はフィリピン人材を適切に受け入れられる企業なのか確認するためです。

1. MWO(旧POLO) Application Form
  ポロ申請書

2. Manpower Request
  マンパワーリクエスト

3. Salary Scheme
  給与体系

4.List of Duties & Responsibilities of the worker AND List of Criteria/
  Qualifications Required for the position
  労働者の義務と責任のリストおよび職務に必要な基準/資格のリスト
  担当業務について詳細を記載します。(MWO東京のみ、日本語能力N2が求められます)

5. Master Employment Contract .
  マスター雇用契約

6. Recruitment Agreement
  協定書 (現地エージェントの採用契約書)

7.Passport COPY of the Employer (colored)
  雇用主のパスポートの写し(カラー)

8.Passport COPY  of the Official Representative of the PRA (colored)
  現地エージェント社長のパスポートの写し(カラー)

9. COPY of the valid POEA license of the PRA (colored)
  現地エージェントのライセンスの写し(カラー)

10.Company Profile
  会社概要

11.Company Registration
  履歴全部事項証明書

12.Company Brochure
  会社パンフレット

№6の協定書には公証人役場での認証が求められています。
公証人役場ではフィリピン労働局へ提出すると伝え
アポスティーユは必要ありません。
翻訳文には翻訳者の住所・氏名、サインと捺印が必須です。

詳細はMWO Tokyo をご覧ください

②日本のMWOからインタビューの通知が届き、当日英語で面接を受ける。

フィリピン人材を採用したい企業の社長か、厳しいようであれば副社長等次席の方が英語で雇用の目的、事業内容等について面接を受けます。※MWOは六本木のフィリピン大使館内にある
英語力に自信がない場合には、通訳者が必要ですが、その場合、MWOフォーマットの委任状、通訳者の名刺が求められます。

  ※最初の1名を雇用するときは、社長の面接が必要
  (弊所の場合、通訳者を同伴させますし、提出書類も弊所にて作成いたします。)
  
  その後、現地エージェンシー担当者、代表取締役、日本企業の代表者との三者面談をwebで行い、写真を撮影し、MWOへ送る

③MWO(旧POLO)から許可書類を受け取り、現地エージェンシーに送付

インタビューに合格すると、フィリピン政府が許可、捺印した資料(Original POLO-Verified Document)を受け取れます。

④現地エージェンシーがDMWに書類を提出し、DMWからの認可を受ける。

このPOEAへの書類提出は原則、フィリピン政府指定のエージェンシーしかできません。

⑤DMWから認可を受け、人材の募集開始・面接・内定

DMWからの認可を得ることで、ようやくフィリピン人材を問題なく採用できるようになります。

人材の募集については現地エージェンシーや弊社などにお任せください。

⑥日本国内での在留資格申請

採用する人材が決まったら、在留資格認定証明書交付申請を行います。

※こちらの手続きは地方出入国在留管理局にて行います。

⑦必要書類をエージェンシーに送付

在留資格認定証明書(COE=Certificate of Eligibility)が取得できたら、捺印資料(Original POLO-Verified Document)と一緒に採用するエージェンシーに郵送します。

⑧フィリピン国内の日本大使館に書類を提出

エージェンシーがフィリピン国内の日本大使館へ行きCOEとパスポートを提出・捺印を受けます。

⑨DMWに書類提出後、Overseas Employment Certificate(OEC)を本人へ発給し、日本へ入国可能に。

エージェントがDMWに出向き「捺印した資料(Original POLO-Verified Document)」と「パスポートの捺印部分のコピー」を提出。

就労者本人はOECを空港で提示することで出国、日本へ入国、空港で在留カードの交付を受ける。

※出国前に渡航前セミナー・健康診断・結核スクリーニング検査が義務になるケースもあります。

フィリピン人の雇用

フィリピン在住のフィリピン人(たとえ、それが高度人材、技術・人文知識・国際業務等のエンジニアなどでも)
を日本の企業が雇用・採用する際には通常よりも高額な特別な費用が掛かるのです。

通常、海外から外国人エンジニアを採用する際、日本国内のビザ取得手続きだけで問題ありません。

しかし、フィリピンの場合、企業が現地から直接フィリピン人高度人材を採用するには、
日本国内の手続きに加えて、フィリピンの政府機関DMW(旧 POEA  )での手続きが別途必要となります。

2017年8月から、この現地DMW(旧 POEA  )での手続きをフィリピン現地の*認定エージェンシー(送り出し機関)を介して行わなければならないことになりました。

この認定エージェンシーに委託する書類作成、取次費用として思わぬ費用が発生します。

 

フィリピンのエージェンシー(送り出し機関)へ支払う費用は?

フィリピン在住の高度フィリピン人材(エンジニアなど)を採用する場合の手続きと、実際に我々がお仕事を依頼したエージェンシーの取次費用をご紹介します。

では、ほとんどの場合で利用が義務付けられているるフィリピンの認定エージェンシーへ支払う費用はいくらになるのでしょうか?

私たちが利用しているエージェンシーは、書類作成とDMWへ提出取次のみで、給料の1ヶ月分の請求となっています。
その他飛行機代+コロナ検査代も必要です。
日本の在留資格申請の取次サービスの相場が15万〜20万であることを考えると高めの値段設定に思えます。

さらに、かつて相見積もりをとった認定エージェンシーの中には、人材紹介会社から1ヶ月分、企業から1ヶ月分を請求してきた先もありました。

人材の海外派遣はフィリピンのGNPの約30%を担うといわれています。人材の送り出し事業は国の根幹を担う事業であるため、いたしかたないかと思います。

他国では、人材の送り出しに際し、人材側からも費用を徴収できますが、フィリピンについてはそれが禁じられてしまっているため、企業側の負担がやや高額になってしまうのです。

  また、雇用契約はミニマム1年なので、毎年更新する必要があります。

  その場合、生命保険料等の更新も含まれるので、
  更新日の2か月前から現地エージェンシーと準備を始める必要があります。

  料金は、1回目よりかなり安くなります。

直接雇用(エージェンシーを介さない形での雇用)が可能なケースは?

認定エージェンシーの活用は『義務』と先述しましたが、例外として専門技術者・熟練労働者であると、個別にMWOが認めた場合はエージェンシーを介さない形での雇用が可能です。その条件は個別具体的に判断されるとされていますが、一般的には下記の条件は最低条件とされています。

・雇用基準に関する覚書(雇用契約書)があること。

→雇用者氏名、会社氏名、住所、海外フィリピン人労働者の地位と職場、給付金および手当および支払方法を含む基本月額給与の記載、契約の開始日と期間等、その他様々な所定の条件、給与は受入国規定の最賃、あるいは、フィリピン首都圏の最賃を下回ってはならないことになっている。

・可能な限り良い契約条件を確保すること。

・生命保険および保険の保障を行うこと。

・渡航費用および航空運賃およびそのほかの付随費用等を賄うこと

しかし、この例外を通すのは、基本的に難しいとされているため、適切な現地エージェントとおつきあいすることが大切になります。弊社からもご案内可能ですので気軽にお問い合わせください。

日本での転職のケース

技術・人文知識・国際業務などの在留資格で来日し、日本で転職した場合

MWO(旧POLO)に新しい就労先の雇用契約書を提出します。
フィリピンに一時帰国の際にBalik-Manggagawa Online Processing System(WEB)
(バリクマングガワオンラインシステム)でOEC免除申請を行えば大丈夫です

この場合、再度フィリピンのエージェント契約、所属機関のDMW(旧 POEA  )認定は免除されるとのことです。

しかし、退職してフィリピンに帰国した場合は、
通常通りMWO申請を行い、DMWの認定を受ける必要があります

まとめ

今回は、フィリピン人材(エンジニアなどの高度人材)を採用するためのMWO、DMWへの手続きについて解説いたしました。

DMW認定のエージェンシーへの費用は多くの場合、思わぬ費用になるかと思います。適切なエージェンシーを探すようにしましょう。

本記事が、少しでもお役に立ちましたら幸いです。

https://global-hr.lift-group.co.jp/156

追記:
転職したいフィリピン人がエージェンシーに未登録、
MWO(旧POLO)/DMW(旧 POEA  )の認定を受けていない場合があると思います。
その場合も、やはり、新たにエージェンシーに登録し、
MWO(旧POLO)/DMW(旧 POEA  )の認定を受ける必要があります。
また、フィリピン人が一時帰国した際に、出国許可の取得がでないそうです

フィリピン人雇用についての関連ページ(MWO(旧POLO)等)

フィリピン人を特定技能1号で呼び寄せの費用について

フィリピン人を特定技能ビザで雇用する料金表

フィリピン人を雇用するまでのフローとタイムスケジュール

関連ページ

技術・人文知識・国際業務 ビザとは