コラム(各種情報)
ラーメンの特許は
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植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 |
日本のラーメンは、麺の太さ、麺の加水量、スープのだしの取り方、調味料、トッピングの種類
等によって個性を持たせることができ、地域や店舗によってさまざまな進化を遂げております。日
本のラーメン業界の市場規模は、富士経済の予測で4385億円といわれており、日本経済を支える重
要な柱の一つとなっております。この一方で、ラーメンの特許の出願は、他の業界に比べて多い
ものとは言えない状況となっております。この要因として、小規模の業者が多い、レシピを秘密に
している等があります。しかしながら、レシピを秘密にしているからこそ、ラーメンの技術は、特
許要件の新規性、進歩性を満たすのが容易で、広い権利範囲の特許権を取得する可能性が高い
ともいえます。このような特許の例として、特許第7632834号の魚肉だし及びその調製方法、特許第7648371号のスープがあります。
特許第7632834号の請求項1には、魚肉からだしを調製する方法であって、(1)魚肉(加熱及び
乾燥処理された魚肉を除く)を酵素濃度1.0質量%以下の酵素水溶液で、10~50℃にて酵素
処理する工程、(2)前記工程(1)の酵素処理後の魚肉を加熱及び/又は乾燥処理する工程、及
び、(3)前記工程(2)の加熱及び/又は乾燥処理後の魚肉からだしを抽出する工程を含み、前
記工程(1)の酵素が、ペプチダーゼである方法が記載されております。
特許第7648371号の請求項1には、油脂とポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有するスープであって、100質量部の前記油脂に対して、0.05~0.24質量部のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有するスープが記載されております。
これらの特許は、ラーメン店の業績を決める重要な要素であるスープのだしの取り方に関わるも
のであり、有効な特許といえます。一般的に、食品の調理方法は先端技術でないので特許になりに
くいという先入観が存在しますが、上述の特許が示す通り、食品の調理方法も差別なく特許取得可
能です。
ラーメン業界では、人気店の味の真似をする店舗も多く、人気店のラーメンが早めにお客さんに
飽きられる状況が出てきております。このような状況を回避するために、ラーメンの調理に関する
技術の特許出願は非常に有効であるといえます。また特許出願は、ブランドイメージを高めること
が可能となり、従業員の士気を高めることも可能となります。
この機会に自慢のラーメンの特許出願に挑戦してみてはいかがではしょうか。
以上