クーリングオフ 基礎知識編 6-1:悪徳商法対策

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

 特定商取引法(クーリングオフ)
クーリングオフができる6つの販売方法について

特定商取引法


おそらく、一番お世話になることが多い法律だと思います。
つまりもっとも頼りになる法律です。

この特定商取引法は、ここで上がっている7つの販売方法のうち6つ(通信販売以外)の場合、
クーリングオフできるという内容です。
これらの販売方法に共通するのは、
購入者の選択の自由を実質的に制限して契約に結び付ける可能性が高い販売方法というものです。

クーリングオフ以外にも、類型によって各種の細かい規定があります。
例えば、特定の書面の配布義務などです。
また、クリーリングオフに間に合わない場合など、
通信販売の場合でも、不実告知や故意の不告知の場合に取消できるなどの規定があります。

(1)訪問販売

事業者が消費者の自宅に訪問して、商品や権利の販売又は役務の提供を行う契約をする取引の事。
キャッチセールス、アポイントメントセールスを含みます。

まず、訪問販売ですが、これは、昔でいうところの押し売りです。
昔から問題になっていたものですから、一番に規定されています。
当然ですが、家の玄関とはいえ、入り込まれた状態で、はっきりとNOを言える日本人は少ないです。
まさに、「No」といえない国民性というやつですね。

この訪問販売という類型には、いわゆるキャッチセールスというものも含まれます。
例えば、道を歩いている人に声をかけて、
営業所(雑居ビルなど)に連れ込んで話を聞かせるという方法です。
最初の声掛けの方法として、アンケートに答えさせる等の方法もあります。

また、ノベリティグッズのようなものを配って、
それを受け取った人にしつこく声をかけるなどがあります。
最も多い販売手法が、絵画商法というものです。

昔、秋葉原でラッセンの絵を売っていた人たちに、
「無料でポストカードを配ってます」といわれ、受け取ったら連れ込まれそうになりました。
行かないといったら、ポストカードを返せといわれた経験があります(笑)
ラッセンの絵などは、実は、絵じゃありません。
オリジナルを印刷した単なるポスターです。
そんなものにほとんどの価値がないということは皆さんもわかると思います。
騙されないでくださいね。
1000円ぐらいのポスターなのですから。

キャッチセールスの他の類型として、デート商標があります。
道を歩いてい時などに、声をかけてスタートした場合は、キャッチセールス型です。
他方、電話(ネット)などで、呼び出した場合は後述する電話勧誘販売です。

道を歩いていて美人・美男子に声をかけられた場合は気を付けてくださいね。
販売ではないですが、宗教も同じようなことをしますので、
興味のない宗教の場合は気を付けてください。

対応策としては、知らない人には、扉を開けないこと、
道で声を掛けられても相手にしないことですね。
ティッシュぐらいなら貰ってもいいですが、
それ以外の場合は、貰わないようにすることです。

(2)通信販売

たとえば新聞や雑誌、テレビ、インターネット上のホームページ
(インターネット・オークションサイトを含む)などによる広告や、
ダイレクトメール、チラシ等を見た消費者が、
郵便や電話、ファクシミリ、インターネット等で購入の申込みを行う取引方法をいいます
(ただし、「電話勧誘販売」に該当する場合は別に規定されている除きます)。

通信販売の場合、特定商取引法の最大のうまみである、クーリングオフができません。
なぜなら、消費者はゆっくりと買うか否か検討できたはずだからです。
ここは、他の特定商取引方法とは異なる取り扱いになります。
ただ、不実告知(うそを言った)
又は、故意の不告知(いうべきことを言わなかった)の場合で、
その結果、誤認した場合には取り消すことができます。

他の特定商取引法でも可能です。
たいていは、面倒くさくないクーリングオフがあるので、あまり問題になりませんが、
クーリングオフの期間を経過した場合は重要です。
対応策としては、怪しいサイトで買わないこと、
高い買い物は信用できる人に相談してから買うことになります。

(3)電話勧誘販売

業者が電話で勧誘し、申込みを受ける取引のこと。
電話をいったん切った後、消費者が郵便や電話等によって申込みを行う場合にも該当します。
また、電話から始まる営業手法の場合に該当します。

よく電話で、サラリーマンに不動産を買ってオーナーになりませんか?
とかの勧誘があると思います。
他は、インターネットのプロバイダを変えませんかとか? 
化粧品、いかがでしょうか?
などでしょうか。

(4)連鎖販売取引

個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせる、
販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務の取引のこと。
一番悪質なものが、ねずみ講というやつですね。
この手のものはかなり多いです。
化粧品、健康食品、浄水器、各種のセミナーなどでもあります。

昔問題になったのは、アムウェイなどです。
ざっくり説明すると、一人の購入者が新たに購入者を作ると、
その新たな購入者が購入した代金の一部が、報酬として入る仕組みです。
営業報酬といってもいいです。

アムエイなどは、その販売となった購入者だけではなく、
その前の購入者、更に前の購入者にも報酬が入るという仕組みになっているようです。
そのため、最初のころの購入者は何の苦労もなく、多くの利益を得ることができます。
最も最初の購入者というのは言うまでもなく、その販売手法を発案した人ということになります。

ねずみ講の場合もほとんど一緒です。
宗教の勧誘なども、たくさんの新規信者を獲得するすれば
その組織内で優遇されるなどというところが、
この販売方法と類似するところがあり、新興宗教に多くあります。

また、華道・茶道などの門徒制度のあるところが似ています。
本来は、この講義では悪徳商法に対応するものなので、
宗教に対するものはその範囲外なのですが、悪徳宗教も実際に多数存在しています。
そして、悪徳宗教の場合、悪徳商法よりもたくさんの被害があるので
特別にここで言及したいと思っています。

悪徳宗教の場合、まず、大抵たくさんのお金を取られます。
最初は少額ですが、宗教内での自分の地位や居場所を確保するために、
多くのお金を使う(壺などを購入、寄付をする)をすると、地位が上がるようになっています。
そのため、どうしても多くのお金を使うというインセンティブが働いてしまいます。
悪徳宗教の場合、それだけではなく時間も使ってしまいます。

つまり、掃除や布教活動などに体を使うことによって、宗教内の地位を確保するということになり
お金の被害だけではなく、時間という貴重なものを提供させられてしまいます。
ここで、時間はお金よりも貴重なものであるということをご理解ください。
どんな人物でも時間はどうやっても取り戻せません。
お金は可能です。
というわけで、自分に与えられた時間を大切に使って下さい。

さて、悪徳宗教のお話に戻りますが、悪徳宗教の問題点は、お金・時間だけではなく、
人間関係も破壊してしまう可能性があります。
悪徳宗教の場合、組織拡大はとても大切です。
新たなカモを求めているからです。
会員には新入会員の獲得を強く求め、
大抵は、家族・親戚・友人・近所の人などに勧誘して回ることになります。
その悪徳宗教に入っていない人にしてみれば、その勧誘は、はっきり言って異様です。
結果、たくさんの人間関係を失うことになってしまいます。

時間はお金よりも貴重だともうしましたが、良き人間関係はある程度お金よりも貴重です。
そのような理由で、悪徳宗教はとても危険です。
あまり近寄らないようにした方が賢明かと思います。
それに入ってしまった人も、残念ながら救い出すことは困難です。
やれることは、自分と自分の大切な人を守るために、
近寄らないようにするぐらいしかありません。

私には、高校2年から30歳ぐらいまで続いた友人がいました。
その人は整体師をしていました。それなりに長い付き合いをしていました。
彼が困った際にお金を貸したり、トラブルになった際には訴訟の手伝いをしたこともありました。
その人から、漢方薬の同じような仕組みを勧誘されたことがあります。
ひと月1万円で漢方薬のパックを買いました。
正直気が進まなかったのですが、10年以上の付き合いだったので、
仕方なく定期購入したのです。
結局2カ月払って、解約を申し立てました。
そして、それから彼とは会っていません。
彼は、たった2万円で私との人間関係を失ったのです。
商品購入価格なので、たぶん彼の手元に入ったのは数千円だと思います。
正直、割に合ったのだろうかと思います。 

というわけで、この連鎖取引販売の形態は、被害者が加害者になってしまうということ、
お金だけではなく、時間を失いと人間関係を破壊してしまう可能性があるので、
最も危険な取引だと思います。
十分気を付けてください。
もう一度、強調しますが、被害者が加害者になるということで、本当に気を付けてください!!

(5)特定継続的役務提供

長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。
現在、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、
結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7つの役務が対象とされています。
皆さんの年齢ですと、語学学校が多いかもしれません。
女性ですと、エステなどが危険ですね。

昔問題となった事例でいうと、NOVAの事例がありますね。
たくさんの回数を最初に購入すると安くなるというパターンで、
最初に何十万も使わせるというものです。
かくゆう私も、80万円ほどNOVAに使ったことがあります。
まあ、300回ぐらい授業に出たので、元は取ったのかもしれませんが。
成果は、外国人に、英語の単語だけでも話せば伝わるとわかった点でしょうか。
英語を無理やりでも話すという癖をつけ、何度も外国に仕事で行く機会を持てたので、
まあ、無駄ではなかったとは思います。

(6)業務提供誘引販売取引

「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、
仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと。
これはかなり詐欺に近い形態ですね。
仕事を提供するから専門のパソコンを買ってください、テキストを買って勉強してください、
販売員として日当を払うのでその販売の際に着用する着物を買ってください、
特定のセミナーを受講してくださいなどです。
仕事をあっせんしてもらえれば、その何倍もすぐに稼げるというのが、常套句になります。

(7)訪問購入

事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引のこと。
押し売りとかなり近い形態です。
押し買いといわれてます。
価値のあるものだけを、安く買い取っていってしまうというパターンです。
「不用品ありませんか~」とトラックで回っている業者がいますが、かなり怪しいです。
不用品買わせていただきますとか、蔵の中をきれいにします。
なども危険性が高いです。

 ●不用品を買い取るというので訪問を承諾したが、貴金属だけを安値で買い取られた。
 ●母が訪問購入で着物の買い取りを契約したが、クーリング・オフをして取り戻したい。
 ●自宅にある貴金属を買い取りたいと電話での勧誘がしつこい。どうしたらいいか。

等の例があります。
しかも、一度家に入れてしまうため、押し売りに変化してしまうおそれもあります。
家に入れるというのは、かなり危険なことだと理解してください。

クーリングオフ!

以上の場合には、クーリングオフが可能です。
(ただし、通信販売はできない。)
詳細は、次の基礎知識編 6-2で説明します。


まとめ

ここまで申し上げてきたのは、古典的ですが、今でも横行しているため危険な取引です。
もちろん、日々新しい悪徳商法は生まれており、かつ、これらの法規制に該当しないように
法規制を逃れるようにしているという事情もあります。
ただ、古典的ということは、やはり王道なので、どれかの類型に類似している可能性が高いです。
そのため、これまでの類型を覚えていれば、かなりの確率でトラブルを避けることができます。

消費者庁の商取引法のページはこちら

 

©行政書士 植村総合事務所 所長行政書士 植村貴明

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