コラム(各種情報)

第44回(ホモデウス)

植村のコラム44

 今回は、特許とはまずは趣をかえて、「ホモ・デウス」という本の紹介をさせていただきたいです。

 正直、知財がメインのこの連載において、本の紹介というのはどうかと思いますが、長いことそれなりに本を読んできた中で、この本は読んでよかったという本は今まで皆無に等しかったです。その中で、初めて、この本は読んでよかったと思ったということが一つです。

 さらに、この内容は皆が知るべきだと思ったので、書かせていただきました。

 この本の内容は、最初に、人類はホモ・サピエンスからホモ・デウスになるという内容がかかれています。

 このホモ・デウスというのの「デウス」というのは、ギリシャ神話の最高神ゼウスのことです。

 つまり、人類は神になるということが書かれています。

 ここで、ちょっとだけおさらいなのですが、ゼウスという神は、力(能力)はとても強い(高い)ですが全知全能ではない存在です。つまり、キリスト教のような唯一絶対神ではない存在です。

 このため、人類がなる(=ホモ・デウス)も、何でも可能な神ではなく、一定の制限があるものの、今の人類から見ると神としか思えない能力を持っている存在ということになります。

 具体的には、老化しません、病気で死ぬこともなく、現存するどんな人よりも賢い頭を持っています、また、オリンピック選手なみの肉体を持っている存在です。

 これらは、遺伝子工学によって、数百年のうちに誕生させてしまうと、この本では予言されています。私も、生まれる前に遺伝子を操作すれば十分に可能だと思います。

 この内容自体は、SF、アニメーション等では全く新しくないです。よくあることで新規性はないです。しかし、これを書いたのが、小説家、アニメ監督ではなく、歴史学者というところがこの本のすごいところです。今後、何らかの未来予想においては、この本が引用されることはしばしばみられることになろうかと思います。

 さて、ここまで読んだとき私は、なんて人間の未来は輝かしいんだろうか胸が躍りました。

 しかし、この本はそれでは終わらないのです。

 この本の後半は、人間はだれしも平等で、人間というだけで価値があるという現在われわれが普通に受け入れている価値観は、このまま手をこまねいていると、確実に破壊されてしまうということが書かれています。

 この奴隷などがいなくて、人は全て平等という価値観は、実は、戦争する上と、経済を発展させるために必要だったので、それが採用されただけだと、この作者は判断しているのです。

 つまり、2つの国が戦争した場合に、1つは全員が市民でその国の存続についてメリットを有している国の市民が兵士になっている国と、もう一つは奴隷制で負けても他の国のどれになるだけの奴隷が兵士になっている国では、戦いの勝敗は明らかで、そういう国が戦争に勝つうえで有利だったに過ぎないと歴史学者は言っているのです。

 さらに、経済的にも、工場で大量生産する上では、いやいや働かされている奴隷よりも、働いて稼いだ金で家族を養うと思っている労働者の方が、生産性が高いと、その歴史学者は言っているのです。

 これって、正直、人間は生まれながらに平等という意見よりも、説得力がありませんか?

 私はあると思ってしまいました。

 しかし、現在、戦争は人間が銃を持つ時代からロボット等が戦う時代になってきました、労働もAIやロボットの進化によって、上記、戦争上と経済上の平等の必要性が下がってきています。今後加速することが予測されます。

 そして、そうであれば、いま私たちが思っているみんな平等がそのまま、続かないとこの歴史学者は考えるのです。私も、十分に合理的な判断だと考えます。

 そうすると、果たして、このホモ・デウスには、人類全員がなれるのだろうか、ということになってくるのです。

 なれずに、一部の超エリートで、無限の寿命を持ち、経験を無限に積み、若いままの体と脳と気力を持ち、病気にもならず、極めて高いIQを持ち、肉体的にも完璧というホモ・デウスと、今の私たちの様に、様々な欠点を有しているホモ・サピエンスがうまれるのではないかという本なのです。

 とても怖い未来を予想した本なのです。しかも、合理的に考えるとそうなる可能性が高いと私も判断しているのです。

 ですから、私は、この本を紹介したかったのです。

 ただ、個人的には、この本には書かれていませんが、エリート、金持ち、権力者などが、高い倫理観を持ち、自分たちだけがよくなるのではなく、人類全体がよくなるようにという志があれば、このくらい未来を回避できるのではないかと思っております。

 さて、ちょっとだけ自分の本業にここで引き戻すと、このようなホモ・デウスを誕生させる科学的な力を推し進める原動力は特許等の知財です。

 このような未来を、暗示する知財の事件を次はご紹介したいです。

以上