インターネットにおける商標権侵害:ドメイン、広告のターゲット広告のキーワード、メタタグ等

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

インターネットにおける商標:ドメイン、広告のターゲット広告のキーワード、メタタグ等

広告が紙、テレビから、インターネット等に移行したことから、
このインターネットにおける商標権侵害とはどのようなことをいうのか問題になっております。

キーワードへの設定は商標侵害になるのか?

先日もあるお客様から相談を受けました。

このことについて記載したいと思います。

ターゲット広告におけるキーワード

現在のところ、ターゲット広告において、キーワード使うことについて商標権侵害との明確な判断は出ておりません。
商標権侵害ではないとの認識が支配的です。

ただ、一定の商標の知名度に乗っかる行為でとの評価は可能であると思います。

自分のブランド名で検索したユーザにターゲットを設定して、
自社よりも上位(たとえそれが広告欄であっても)に表示されるという行為、

そして、その結果、その顧客がそっちに流れる、若しくは、流れるかもしれない、
ということを許せない、と考える経営者は多いと思います。

その為、今後、裁判になる可能性は十分にある(というか、私はなると確信しています)と思います。

その時に、このようなターゲット広告において、競合他社・業界上位の会社の商標をキーワードへの設定という行為が、
果たして、商標法(不正競争防止法)における商標の利用に該当するか否か争われると思います。

今のところ、前述のように、法律の文言から考えると、商標権侵害に問えないとの解釈が支配的ですが、
裁判所が無理やりな解釈をする可能性はありますし、
相手が、訴えてきた場合はもちろん応訴する必要があり、コストがかかることになります。

つまり、訴えられるリスクは存在するということになります。

勝つ負けるにかかわらず、訴えるのは、可能かつ自由だからです。

訴訟における論点等

(1)論点1(使用行為に該当するか?)

ただ、訴訟になった場合に訴える側としては、商標法上の利用にあたると主張することは、
かなり難しいのも事実です。

まず、このような、キーワードに設定しているだけでは、
その商標法の仕様にあげられている各行為(一番近いものでも「展示」です。)からかなり遠いからです。
展示という文言の行為とキーワード設定という行為ととはかなり遠いように思います。

(2)論点2(証明できるか?)

次に、もし、使用に該当るとなっても、キーワード設定しているということの証拠がえられるかというと、
かなり難しいのではないかと思います。

キーワード設定は、広告の結果でしかわからず、キーワード設定しているから表示されているのか、
それとも他の要因で表示されているか分からないからです。

また、キーワード設定自体は、完全に、設定者の内部だけでなされており、
第三者が知ることはほとんど不可能だからです。

また、キーワードは数秒ですぐに変更できてしまいます。

裁判所が証拠保全によって、広告主への会社に入って証拠を保全する証拠保全という手段も可能だとおもいますが、
広告主はその際に協力する義務はなく、広告主のコンピュータを操作して必要な情報を抽出することは、
かなり難しいと思われます。

さらに、紙ではないため、複製(保全)などをどうするのかの問題にもなります。

もっというと、広告主のサーバなどが国内にない場合には、
どうしようもないということもあります。

(3)論点3:広告媒体(google,Yahoo,bing,楽天等)の立場

広告媒体としては、Googleが一番の最大手だと思いますが、
これらの会社としては、顧客の秘密情報を開示することになります。

さらに、これらの行為で儲けているのもこの広告主であります。
つまり、広告媒体としては、あなたの会社のブランド名で検索している人に対しても、費用をかけて広告を出して、
他のキーワードを設定してる人よりも上位に表示しないと客が取られますよ、
ということで儲けているという部分もあると思います。

それよりも何よりも、このような仕組みを作っているのは、広告媒体なのです。
広告媒体がわるいということで、広告媒体が被告として訴えらえる可能性も決して低くないのです。

そのため、広告媒体は積極的にこの問題に関わりあいたくない思いるはずです。

事実、この問題に対しては、広告媒体であるGoogleなどは、本人同士で解決してくださいとのスタンスです。

(4)論点4:キーワードはそもそも商標権者のものか1

例えば、「〇ニー」と検索した場合に、
ソニーの製品を購入したいとの、需要者の意図と断定できるのでしょうか。

もちろん、そのようなことも多くあると思います。

ただ逆に、〇ニー製品の代替製品をさがしている可能性もあります。

そこまでいかなくても、ソ〇ーに関する新聞記事や、醜聞などを調べているかもしれません。

そのキーワードだからと言って、その商標の商品・役務を消費したいとしているとは言えないのです。

もちろん、ソニーの製品と誤って買わせるような手法を取っている場合はすでに、
商標法の範囲内として、商標法の侵害にすでに該当しております。

その範囲を超えて、そのキーワードで調べた消費者への広告を出すことを商標の使用としていいのか大変疑義が残ります。

例えば、
「〇ニー 高すぎる」
「ソ〇ー すぐ壊れる」
「ソニー 代替製品」
で検索している、需要者に対して、広告することは許されないのでしょうか。

許されるなら、キーワードそのものではなく、組み合わせなどによって、侵害・非侵害が変わるのでしょうか。

(5)論点5:キーワードはそもそも商標権者のものか2

商標の場合、その言葉について権利が及ぶものではないのです。

商標取得の際には、指定商品・指定役務というものを指定しております。
つまり、その指定商品・指定役務と関係ない範囲は権利範囲内ではないのです。

他方、キーワードで引っ掛かるのは、すべての商品・役務について引っ掛かってきます。

権利範囲外でのキーワードの使用も十分にあり得るのです。
そのような範囲まで権利侵害といえるのか、大変に疑問です。

固定ページ名、ページのタイトル(title)

固定ページ名に、他人の商標を入れるのは、商標侵害となる可能性が高いです。

ただ、一定の会社の商品について論述するなどの場合、代替商品の場合それを表示するのは、
品質などの普通の表記といえ、その範囲であれば、商標権侵害とならない可能性が十分にあります。

例えば、「AB社 型番T-111 の代替商品」との表記を普通にする分には、
やり方にもよりますが、一般に、商標権侵害にならないと思われます。

その記載がの仕方が、自然か、特定の商品名との誤認を目指していないかなどが判断基準になると思います。

ディスクリプション(Discription)

固定ページ名、ページのタイトルとほとんど同じです。

ただ、ディスクリプションは、より長く記載できますので、
長く記載できるのに、特定の商標が連呼されるとか、不自然に記載されているなどの場合には、
商標権侵害となる可能性が高いです。

メタタグ(meta-tag)

メタタグについては、従来は、Webページの内容を記載することになっておりました。

その為、このメタタグに、混同をおこしたい内容を大量に入れるということが、
きわめて多く行われていました。

ある意味、上記のキーワードに設定する場合と似た機能を持っておりました。

そのため、いつくかの判例で、メタタグについても商標権の使用と認めるとの裁判例があります。

ただ、メタタグは本来、Webページを普通にブラウザ等で開いた場合には表示されないため、
本当に使用にあたるか微妙です。

もっとも、一応、ブラウザ等で特段の方法を取ると、メタタグも表示されますので、
これをもって、展示とする余地はありました。

他方、キーワードに設定するのは、まったく、表示されるWebページ上に何も残らないため、
この論理を持っても、かなり厳しいです。

リンク(Link)

正しい商標権者へリンクを張る行為は、通常であれば、商標権侵害とならない場合がほとんどだと思われます。

ただ、リンクの張り方が意図的で、実は自社の商品等を買わせるために自身のページに誘導することが目的であると、
認定できるほどであるとか。

ただのリンクの為の表示なのに、以上に巨大(色を変えている)とかで、
リンク先の商品と同じ商品を売っていると思わせるなら、商標権侵害になると思われます。

ドメイン(domain)

ドメインについては、商標権侵害になるとの裁判例が多いです。
もっとも、どこまでをもって類似するかは微妙です。

一応、ブラウザにおいて、ドメインが表記されているため、妥当だと思います。

商標の使用・条文解釈

以上は、結論だけを書きましたが、もう少し、条文から紐解いていこうと思います。
商標法での商標の使用似ついては、以下のように列記されています。

(商品に関する規定)
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

(役務に関する規定)
三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号及び第二十六条第三項第三号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為

 
(役務に関する規定)
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
(省略)

以上からすると、基本的に、需要者(消費者、取引者)にその商標を見せることが前提になっています。
そうすると、見ないないものについては、基本的に商標の使用に該当しないことが普通の考えになると思います。

法律の文言は基本的にその文言にそって解釈するべきであり、それを離れることは、
相手の予測可能性を大きく下げ、法的安定性を下げ、社会不安の原因になります。

そのため、文言から逸脱することは基本的に許されないのです。

その為、見えないようなものについて、権利内とすることは、心情的には別として基本的に許されないのです。

商標としての使用とは

また、商標がどっかに記載されているから(=上記の号に該当するから)と言って商標権侵害に該当するのかというと、
実はそうではないのです。

商標には、商標的使用である必要があります。

つまり、物などを売るためや、客を集めるための使用でなければ、
それは、商標的な使用とは言えないのです。

つまり、私が説明のために「ソニー」などを使っても、
それは商標的な使用ではないのです。

その為、どっかに他人の商標が記載されている=商標権侵害 ではないということなのです。

立法的解決

以上より、キーワードとすることを商標権侵害とすることは、
かなり難しいことはお分かりいただけたと思います。

そうすると、プロバイダ責任法
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
のような立法による解決はあり得ます。

つまり、広告媒体(google等)に情報の提供や、対応を求めることによる解決です。

ただ、これは、個人の名誉棄損・脅迫・業務妨害などの権利侵害にさらされた個人などを守ることを目的としたものです。

果たして、このような立法をしなければ、不公平といえるほどの内容なのでしょうか。

また、google等のサーバーが外国に置かれた場合に、効果があるのでしょうか?

大変に疑問が残ります。

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特許庁の識別力に関する記述

 

©弁理士 植村総合事務所 所長 植村貴昭

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