コラム(各種情報)

第10回 商標の本質とは? 徳川家家紋事件

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

第10回 商標の本質とは? 徳川家家紋事件

徳川家家紋事件 商標の本質から非常に難しい!? 

前回まで、下町ロケットの話をさせていただいておりました。
今回は、

徳川家の家紋事件

について、
少し解説をさせていただきたいと思っております。

そこで問題になっている商標、徳川家の家紋を検索してみたところ、
確かに商標権となっていました(商標登録第5810969号)。
本件は、出願段階で、刊行物提出などの権利化を妨げる試みがなされていましたが、
最終的には登録になったようです。

その登録に不服ということで、徳川ミュージアムという公益財団法人が、
異議申立をしているという経緯でした。

この財団法人は、徳川家の方が運営管理をされているようです。
そのため、勝手に家紋を使うなというのは、心情的にはよくわかります。

法的根拠

ただ、法的な裏付けというのは、かなり難しいです。
複数回の刊行物提出があったにもかかわらず、
登録になったというのはこういったことを裏付けています。

商標を前もって取っておくことで、他の人が取得することを防ぐことが可能

です。

誰が権利者なのか?

しかし、その最初に取った人に、はたしてその資格があるのだろうか
ということも問題になりえます。

例えば、家督相続という制度があり、
その家紋に対して1人の当主がいるのであれば、
その人に権利があるということになりそうです。

しかし、家制度はすでに廃止されており、
子供であれば平等に権利が認められています。
例えば、婚外子であっても、子供であることに何ら変わりがありません。

そういった時代に、

特定の個人だけが権利を持つということが許されるべきでしょうか

子孫全員が納得して、特定の人にその権利を譲渡する
という気まりを持てばいいのだとは思いますが、
徳川家は、江戸時代の前からも続いており、
だれが正式な継承者とも言えそうもないです。

分家であっても、他家に嫁入りした人の子孫にも権利がありそうです。
さらにいうと、徳川家康から検討すればいいのでしょうか。
それよりも前に枝分かれした子孫には権利が無いのでしょうか。
非常にめんどくさい話になりそうです。

そうであれば、早い者勝ちという、商標法本来の決着の仕方も致し方ないのかと思います。

商標権の根源

さらに、この問題は、実は商標というものの根本にも関係していきます。

どういうことかというと、
商標というのは、
本来、マークと商品、又は、マークとサービス
結びついたものを言います。

つまり、商品ともサービスとも結びつかない、ただのマークは商標とは言えないのです。

家紋と商標の違い

所定の家紋を使用する家の全員が所定の商品を生産しているとか、
所定のサービスを提供しているということであれば、
商標制度ともなじむのですが、
そうではない場合商標という制度には馴染みづらいといえます。

つまり、家が特定の商品やサービスと結びついていないと商標になじまないのです。
当然ですが、徳川家自体が何らかの商品を脈々と生産し続けているとか、
特定のサービスをし続けている状態ではないと、
商標権にはなじまないのです。

いうまでもないですが、徳川家の場合そんなことはなさそうです。
サービスということで、国の統治ということはあり得ますが、
残念ながら、特許庁で認められているサービス(役務)としては、
そんなものは無いです(笑)

そういったわけで、この徳川家紋問題は、家紋を商標で守ることの難しさが表れています。

逆に、利用したいという人にとっては、
たいていの場合商品を売りたいとか、
サービスを有名にしたいとかの気持ちがあるので、
商標を取ることは有効な方法だと思います。

この徳川家の家紋以外にも、複数の大名家などの家紋は、
商標が取られて利用されているということはあるようです。

次回は、この家紋と著作権の関係についてお話していきたいです。


第11回 徳川家家紋事件 著作権について
特許庁のHPはこちら

以上