<> コラム
味の素商法
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 |
「味の素」という単語を知っていますよね
うま味調味料のうち、味の素株式会社が出している商品の商品名です。
しかし、ほとんどの人は、
「味の素」は「味の素」だとおもっていませんか。
何言っているか分からない!?ですよね(笑)
実は、私が言いたいことは、
「味の素」は一企業の一商品の名前に過ぎないにもかかわらず、
その製品の一般名称として使われていませんかということです。
つまり、最初に世に出した時に、
爆発的にヒットさせ、消費者が、その製品=その名前だと認識させてしまったことです。
この、味の素株式会社の商標戦略は、意図してやったかは分かりませんが、
結果的には非常に巧みでした。しかも、それが今まで続いています。
では、どのような経緯を、辿ったのでしょうか。以下説明します。
① 新製品発売する。
その際に、識別力があるかないか微妙な名前をつける。
「味の素」です。
とても、分かってます。
(↑商標の基本と、私の言う味の素商法をよくわかっているという意味です。)
これが、「大人の味付け!」などなら、
おそらく一般名称として普及しなかったと思います。
この辺りから推測すると、味の素社は分かっててやったんだと、私は思っています。
② 新製品なので、消費者が全て「味の素」で使用する。
メディアも、さも一般名称のように使用して放送する。
この当時の、料理番組や料理本は、
「味の素」と、もろに言ってしまっていたと記憶しています。
③ 一般大衆が、「味の素」はグルタミン酸製品の一般名称が「味の素」だと認識する。
メディアも同様だったのだと思います。
④ 実は、このままほっておくと、一般名称になってしまったとして登録不可能になります。
独占できなくなってしまいます。
そのように、本来は一企業の一商品の名前に過ぎなかったのに、
普及しすぎて一般名称になってしまったものに。
・「エスカレータ」
・「キャタピラー」
などがあります。(次回は、この辺りをお話ししたいです)。
⑤ 味の素社は、「味の素」は商品名だから、使わないようにという風に、
テレビ、雑誌などに、通知を猛然とおこないました。
⑥ その努力が認めらえて、一般名称化をまのがれる。
しかし、消費者の多くが一般名称的に使っている。
⑦ その結果、味の素社は、商標によって、
グルタミン酸の商品の一種の独占状態を作り出している。
という経緯なのです。
非常にうまく対応したということです。
ここまでのことは、なかなかできないかと思いますが、
商標を本当にうまくやれば、一種の独占が可能であるということの、お手本のようです。
私も、いつかこのような仕事がしたいです(笑)
で、お金持ちになりたいです。(笑)
―― 読者の皆さんへ知財の専門家としてアドバイス ――
商標は本来市場の独占を許す規定(法律)ではないです。
しかし、商標を使って実質的に独占してしまった例は
「味の素」のようにあります。
普通の商品では難しいですが、新種の商品・サービスでは可能性があります。
というわけで、新種の商品・サービスを始めるときには、
商標による独占ができないか検討してみてください。
―― その他 ――
では、次回をお楽しみにしてください。
次回は、キャタピラー等が一般名称となったらどうなるかについて、
記載したいと思います。
また、今回も最後までお読み下さり、本当に有難うございます。
月2回程度の配信を予定しており、
購読いただく方に過度のご負担をかけないようにする予定です。
あとあと、過去のこの私の投稿を見たい方は、弊所のHPに来ていただければ、読めます。
「ポラリスIP」で検索すればあります。
―― 編集後記 ――
「暑さに弱いです]
植村です。
植村は暑さに弱いです。
北海道出身だからです。
30年近く東京にいても慣れません。
というわけで、夏場、だらしない格好していてもお許しください。
なお、寒さにも弱いです。
東京に30年近くいるからです。