6-4 補正と新規事項の追加

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

6-4 補正と新規事項の追加

補正の概要の説明
補正の根拠については十分に記載するべき
     

前述したように審査官は、新規事項の追加については注意を払っており、その確認を必ず行う。
その際に、根拠の記載が十分でないと、心証を害する。

また、出願人側でも新規事項の追加となっていないかの検討を十分に行う機会を得ることができる点からも記載するメリットはある。

新規事項の追加について
新規事項の追加については、細心の注意をはらうべきである。

最近は緩和(ソルダレジスト判決)されたとはいえ、新規事項の追加については審査官が細心の注意をはらうため。

最初の拒絶理由通知 → 新規事項の追加 → 最後の拒絶理由通知 → 新規事項の削除 → 限定的減縮ではない為却下 → 拒絶査定

万一、登録査定となっても、無効理由となりこれを削除することは極めて困難。(訂正の理由とならない。)

具体的反論
引用文献1との相違点に認定間違い

引用文献1と異なる点を相違点として認定されているが、正しいか検討する

① 単に同じ名称で引用文献1に記載されているだけで、
目的、構成、効果が異ならないか検討。

② 複数の部材で1つの構成として作成されている(一体不可分)にも関わらず、その一部だけを抜き出していないか検討。

③ 引用文献1の適切性の検討

①(目的、構造、効果が異なる)の具体例

出願している発明

電池と、

LEDライトと、

赤外線を出射可能な赤外線出射回路と

対象物によって反射される前記赤外線出射回路から出射された赤外線を検出し、赤外線を検出した場合に信号出力する赤外線検出回路と、

前記赤外線検出回路からの出力に応じて前記電池からの電力を前記LEDライトに提供するスイッチと、

を有する照明装置。

審査官は、赤外線を出射する回路については周知技術と認定した場合を想定

③ 引用文献1の適切性の検討

引用文献1が単に記載されているだけで、実際には実施できないなどの事情が無いか?

特に化学の場合発明の詳細な説明で、こうしても良いというだけでは不十分
捏造ではないか?

具体的反論
引用文献2以降に相違点が記載されているか

引用文献2以降に相違点が記載されていると認定しているが、正しいか検討する。

① 単に同じ名称で引用文献2以降に記載されているだけで、目的、構成、効果が異ならないか検討。

② 複数の部材で1つの構成として作成されているにも関わらず、その一部だけを抜き出していないか(一体不可分)検討。

    ( ↑ 実はこのような例が特に多い機械などの構造ものでは、1つの部品が複数の機能を有している)

③ 引用文献2以下の適切性を検討

具体的反論
周知慣用技術なのか

相違点が本当に周知慣用技術と言えるのかを確認する。

① 周知技術は3つの文献を上げる必要がある(特許庁運用)が、記載されているか?

② 慣用技術は、周知技術である上に、慣用されている必要があるが、本当か?

③ 本当に周知技術・慣用技術なのか?

周知慣用の事項(事実)と、周知慣用技術とは異なる。

(拒絶理由通知をよく読むと、技術と書いていない場合が多い。)

③の具体例

出願している発明

照射された電磁波から電力を発生する電力発生機と

LEDライトと、

赤外線を出射可能な赤外線出射回路と、

対象物によって反射される前記赤外線出射回路から出射された赤外線を検出し、赤外線を検出した場合に信号出力する赤外線検出回路と、

前記赤外線検出回路からの出力に応じて前記電力発生機からの電力を前記LEDライトに提供するスイッチと、

を有する照明装置。

具体的反論
設計的事項といえるか

設計的事項を多用してくる審査官がいるが、果たして妥当か?

① 引用文献がない(もしくは、探すのが面倒)場合に、多用する場合が多い
(対策:請求項の数を少なく)

② 最も対応が困難な拒絶理由

③ 設計できない積極的な理由を記載する。

具体的例:一定の目的、指標がなければそのような構成にしない、選択肢が多すぎ、
そのうちの一つを選ぶのは当業者といえども困難、等

④ 特段の効果が認められれば設計的事項ではなくなるとされている
(どの程度の効果があれば特段と言えるは不明)

具体的反論
設計的事項の反論の方法

① 設計できない積極的な理由を記載する。
通常の技術者であればそのようにしない等

② 発明の本質的部分を設計的事項とすることは妥当ではないとの反論

③ 一定の目的、指標があって設計しないとそのようにならない軽量化、
高速化、単純化、高機能化等 たばこのフィルタの例

④ その構成となるには、多くの選択肢があり、
その一つ一つについて決定しなければならず、そのうち一つを選ぶのは当業者といえども困難

⑤ その構成となるための工程を分解してそれを示す

⑥ 特段の効果が認められれば設計的事項ではなくなる

とされている(どの程度の効果で特段と言えるかは不明)

⑦ 引用文献1にそのように設計する発想自体がなく、そっちの方向には行けない

具体的反論
阻害要因

引用文献1に相違点部分(引用文献2、周知・慣用技術、設計的事項)を付加(置換)等することに阻害要因ないか

① 技術分野の非同一性

② 動機づけ無し(知財高裁平成21年2月17日判決)

③ 糊付け部分無し

④ 相違点部分を適用した場合に本発明と異なる構成(効果)となってしまう場合。

⑤ 当業者であればそのようにしない積極的な理由はないか。

③(糊り付け部分無し)の具体例-1

出願している発明

電池と、

LEDライトと、

赤外線を出射可能な赤外線出射回路と、

対象物によって反射される前記赤外線出射回路から出射された赤外線を検出し、赤外線を検出した場合に信号出力する赤外線検出回路と、

前記赤外線検出回路からの出力に応じて前記電池からの電力を前記LEDライトに提供するスイッチと、

を有する照明装置

具体的反論
相違点相互の関係性(ここまでは個々の相違点のみ検討)

相違点相互の密接な関係がある場合に、
それぞれを適用するという全体的に見て容易の容易にできないか検討する。

⇒ 相乗効果への記載も可能となる

効果の記載

① 相乗効果
② 予期しない効果

効果の記載はあまり考慮されない。
構成に違いがあれば当然に効果に差があるからである。
   
効果の記載は、相違点の違いについて記載できない場合や、
十分に相違点を記載してダメ押し的に記載するべきである。

補正の考え方-1

① 補正は、以上検討してきたがやはり説得力ある反論が思いつかない場合に、
引用文献1以降のすべてに記載のない構成を加える。
そして、その構成で、再度、上記の反論を検討する。

② 反論は可能であるが、少し、弱い場合には、
反論をより根拠付ける(説得力を増すための)構成を加える。

③ クレームが広すぎて引用文献と同一になる場合には、異なる点を明確化する構成を加える。

(④ 審査官の顔を立てるために、どうでもよい構成を加える)

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