ロボット産業への問題提起
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
ロボット産業への問題提起
(1)予言
現在のように特殊な市場(=小さな市場)で勝負しているのでは、
もう少しロボット技術が発展し世界の中に普及しだした際に、
必ず日本のロボットは世界市場の中で完敗する。
あたかも現在のパソコン、携帯電話のように。
(2)理由
現在のように市場が狭い状況では大手企業、特に外国企業が参入してこない。
そのため、各企業が独自に開発することが許されている。
また、そのロボットの価値も、その機能の高度さ安定性の高さ等で判断されている。
しかしながら、必ずロボット産業はいつか一定の段階を超える。
その一定の段階とは、中間層が普通にロボットを購入してもよいと思える段階である。
そして、その段階を超えると何が起こるかというと、ロボットの性能ではなく、
ロボットでどのように生活が変わるかというような売り方になっていく。
あたかもアップルがその機能ではなく、アップルにするとどのように生活が変わるか、
どのような新たな価値が生まれるかという売り方をしたようにである。
このような分野において、日本企業の大企業は完敗した。
多くの会社が携帯電話から撤退したようにである。
このようなたくさんの利益を得ていた大企業さえも撤退せざるを得なければ
ならなかったのであるから、中小企業であればそのようになるのは確実である。
もちろん、その段階で市場の狭いニッチな市場にて勝負するのであれば、生き残れる。
しかし、その段階において、日本のロボットが良いものであるということは
世界的に全く認識されていないであろう。
そのようなことを避けるために、私は以下のことを提案する。
もちろん、現在は、各ロボットの高機能化が必要なことは正しい。
しかし、これから申し上げることの視点も将来的に必要であると認識してほしいのである。
(3)提案
1 技術以外の観点を維持
ロボット単体での高機能化・低コスト化・高安定化は必要である。
そのあたりは、この研究会に出ておられる企業の皆様は十分に長けておられる。
しかし、将来的には、その技術だけではなく、
そのロボットでどのような生活ができるのかというような売り方をしてほしいのである。
つまり、ロボットによって問題を解決する(マイナスをゼロにする)のではなく、
マイナスをプラスに変えるライフスタイルを提案してほしいのである。
あたかも、アップルがアイフォンを売った時に、孫との動画での会話が可能となる
という風な売り方をしたという事案を思い出してほしいのである。
このためには、技術(部品)は外から買ってきて、
それを利用する部分の開発に力を注いでほしいのである。
ただし、この方法では、おそらく世界で1社程度しかこの地位に就くことはできない。
各ロボット制作会社にとってあまり嬉しくないことではあると思われる。
しかしこのままでは、その1社さえも日本から出ず、
世界の他の国から生ずることが確実である。
それは、私の望むところではない。必ず、日本の中からその1社が出てほしいのである。
そのために、今から、この世界の1社に残ることを考えて経営をしてほしいのである。
2 規格化
ロボットが世界的に売れる時代が来た際には、
必ずその規格の奪い合いがアメリカ・ヨーロッパ・中国との間で生ずる。
その規格化に敗れた場合には、現在開発しているロボットは全て、規格外製品となる。
その際には、それまで得てきた日本のロボット会社による世界の市場は、
一気に他の国に奪われることになる。
それは、一定の水準までロボット市場が成長した際に必ず生ずるのである。
それを防ぐためにも、今から一定の規格を作り、
それをいち早く世界の標準規格化していく努力が必要である。
この部分は、一企業が可能な範囲ではない。
国が本気で今から取り組むべきことである。国又は県が積極的に関与すべきである。
なお、規格化によって、各ロボット制作会社はこだわって作る部分以外は、
規格化された製品を購入することによって安く、かつ早く、開発をすることが可能となる。
さらになお、規格化の対象はロボットという物理的なものならず、
電子的なソフト・プロトコル等が含まれる。
3 特許による囲い込み
2の規格化は、技術を世界に公表することになるので、難色を示すと思われる。
しかし、規格化の技術自体を特許で固めて、
その規格を使用する企業から実施料をとることは可能である。
これによる利益にも目を向けてほしい。
4 オープンクローズ戦略
3と関連するが、規格化によって世界に開放して、
お金だけ出せば全て自由に利用可能な部分(=規格化部分)と、
そうではない部分とを明確に分ける必要がある。
そうではない部分とは、技術の中核部分である。
この部分は、各ロボット制作会社がそのまま保持(=特許化)すればよい部分である。
このように、自由に利用できる部分(オープン部分)と、
絶対に誰にも利用させない部分(クローズ部分)を作ることによって、
後述することが可能となる。
オープン部分によって市場を活性化することができる。
他方、クローズ部分を独占することによって、市場を支配することが可能となるのである。
このような戦略をオープンクローズ戦略という。
マイクロソフト、インテルが行った戦略であり、これによって、世界を制覇した。
ロボットビジネスと特許についてはこちら
経済産業省HP ロボット政策の方向性はこちら
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/index.html