コラム(各種情報)

第19回 パチンコ・スロットルの知財 重要なのは技術の複雑性や先進性ではなく、売上が高いか否か?

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

パチンコ・スロットルの知財 
重要なのは技術の複雑性や先進性ではなく、売上が高いか否か?

植村のコラム19

前回は、「アメリカ知財」について記載させていただきました。
パチンコ・スロットルについての、他のページはこちらです。

今回は、パチンコ・スロットの知財です。

パチンコ・スロットは、特許の世界では「遊技機」と表現します。
読んで字がごとく、
テレビゲーム機等の、玩具に類する機械として扱われています。

このように、遊ぶための機械に過ぎないのだから、
たいして特許庁の知財は重要じゃないと思われるかもしれません。

しかしながら、特許等の知財が重要であるか否かは、
その技術の複雑性や、先進性にあるわけではないです。
(遊技機が複雑ではないとか、先進的ではないと言いたいわけではないです。)

知財が重要か否かは
基本的に、売上が高いか否かが重要なのです!

売上が高ければ、自社のシェアを少しでも高めるために、
出願から登録まで多額のコストのかかる特許などを取得しても
問題ないという判断になるからです。

また、この売上げの国内比率が高いと、知財が重要になります。
なぜなら、国内の限られたシェアを奪い合うために、
相手をたたけば自分の会社のシェアが伸びるからということもあり、
知財は格好の道具なのです。

知財の重要度と売り上げの関係

その他にも、国内マーケットでしのぎを削りあってきた会社同士は
どうしても過去の因縁を引きずってしまう
という事情も想像されてしまいます。

このような事情に、
まさに合致してしまうのが、パチンコ・スロット業界なのです。

そのため、過去、
パチンコ・スロット業界では特許をはじめとする熾烈な知財訴訟が頻発しました。
とても高額な訴訟で有名な事件などもありました。

 

訴訟の勝利者は?

ただ、批判を承知であえて書いてしまいますと、
このような高額訴訟の真の勝利者は、
当事者ではなく、その当事者の代理人をした弁護士と我々弁理士なのです。

勝った場合には、勝訴額の数パーセントを報酬でもらえますし、
負けても少なくとも労力分は確実にもらうことができるからです。

 

パテントプール

そのような業界も、さすがに無駄だと考えた方がいたのだと思います。

特許等についてパテントプールという制度を導入したのです。

これは、特許等の知財を利用した会社は、
利用した割合に応じてパテントプールにお金をだして、
利用させた会社は利用させた割合に応じて、お金をもらうという仕組みを作ったのです。

特許等を利用しているか否かは、
このパテントプール内の弁理士等が判断するという制度にしたのです。

 

でも、訴訟がなくなったことイコール争いがなくなったということではないです。

確かに、訴訟まで行って解決ということは少なくなってしまいましたが、
権利を取るという部分では、以前と同様に熾烈な争いが今も繰り広げられています。

良い権利が取れれば、
先ほどのパテントプールから訴訟をしなくてもお金が入ってくるからです。

むしろ、権利を取るという部分ではより競争的になっております。
なぜなら、費用も訴訟にかけていた多額の額を投入できることにより、
よりお金をかけて権利を取れるという状況になったからです。

 

さて、次回の予告をさせてください。次回は、
「あなたの昔書いたラブレターがネットに公表されてしまったらどうします!?」です。

以上

特許庁のHPはこちら