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アッテネーター(放送設備)|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

アッテネーター(放送設備)

 

放送設備を構成する部材の一つで、スピーカーの音量を調整するために用いる減衰器です。
アンプから送られる音声信号を減衰方向に調節して音量を変える装置であり、
増幅はできません。

アッテネーター内部には可変抵抗が設けられており、
抵抗器の切り替えによって放送の信号レベルを減衰させて音量を調整出来ます。
数段階の音量調整が可能なため、
音量調節器やボリュームコントローラーとも呼ばれています。

アッテネーターとスピーカーを分離する方式と、
スピーカーに内臓または併設する方法があります。

音量調整を行う必要がある会議室や事務室では、
アッテネーターをスピーカー本体から分離させ、
壁付けにすることが計画上望ましく思われます。

 

放送設備が2線式で構築されている施設であれば、配線系統ではHOTにNを接続し、
COM線にRとSPを接続すれば音量調節が出来ます。

業務放送が非常放送を兼ねている施設用の放送設備では、
非常放送が鳴動した際には、
アッテネーターによって音量をゼロまたは減衰状態に設定していたとしても、
非常放送を最大音量で鳴動させなければならないため
「緊急線となるR線が1本追加」された3線式の配線構築が必要です。

テレビ設備において、ブースターへの入力レベルが高すぎる場合、
入力出来る適正レベルにまで信号を減衰させるための装置もアッテネーターと呼ばれます。

建物で用いられる放送設備

建物における放送設備は、
会議室等で使用する拡声設備、イベント会場やホールで使用する音響設備、
館内放送設備、非常放送設備の用途に分けられます。

電気設備設計者が計画・検討する放送設備は、
館内放送として使用する「業務放送設備」または「非常放送設備」がほとんどであり、
ステージやホールといった専門の音響設備については、
音響専門の設計者や専門業者に委託したり、共同設計を行うのが一般的です。

放送設備について

建築設備用としての放送設備は、
壁掛けの一体型のものや、自立ラックに収納するものなど、
いくつかのラインナップがあります。
近年ではデジタルアンプが普及し始めており、
従来のアナログアンプと比べて、非常にコンパクトな寸法となっています。

デジタルアンプは消防用として使用出来ない時期もありましたが、
現在では消防認定の取得が完了しており、
非常放送用のアンプとして採用出来るようになりました。

自立ラックを採用したシステムであれば、
ラックにアンプやBGM装置、有線チューナーやプログラムタイマーなど、
多数の機器を一括収納出来ます。
ラック自体はコストアップになりますが、省スペース化・多機能化を図れるため、
大規模建築物では放送関連機器の自立ラック収容が基本になります。

PAシステムとの違い

PAシステムは、
パブリックアドレス(Public Address)の略称であり、
マイクとスピーカーを別々の空間に置き、
公衆に対して広く音声や音響を届けることが主目的となります。

対して、マイクとスピーカーを同じ空間に設置する
会議システムのような使用方法は、
SR(Sound Reinforcement)と呼ばれます。

PAシステムは、小さなイベント会場で使用するような可搬の小型システムから、
大規模施設から街区をカバーするような大規模システムまで広く使われています。

マイクと音響ソースのミキシング、アンプによる出力調整、
スピーカー回線選択、個々のスピーカーの音量調整など、
高度な制御による信頼性の高さが要求されます。

会議用やイベント音響用など、高音質の放送システムを構築する場合、
ローインピーダンスのシステムを選定します。
ローインピーダンスのシステムとした場合、
配線が太くなり、スピーカーも高価で、多数のスピーカーを接続出来ないのが特徴です。

ハイインピーダンス仕様の放送設備

館内放送や非常放送など、低位または中位の放送品質を保ちつつ、
多数のスピーカーを設置していく放送システムを構築しなければならない用途では、
ハイインピーダンスのシステムを採用するのが合理的です。

ハイインピーダンスの放送システムを採用すれば、
1.2mm程度の細い電線に、スピーカーを何十台も並列に接続出来るため、
建築物の天井スピーカーなど多数のスピーカーを設ける用途に適しています。

ハイインピーダンスのシステムは、高い品質が求められる用途に適しておらず、
高品質な音を出すことが出来ません。
イベントステージなど高品質な音響が求められる場合、
ローインピーダンスのシステムを構築するのが良いでしょう。

放送設備の回路構成

放送設備を計画する場合、アンプの元分けや、回線分けを十分に検討しなければなりません。

事務所を例とすると、執務スペースを個別回線とし、
廊下、トイレと放送回路を分離することで、BGMを流すエリアと、
非常時に・緊急時にのみ案内放送を流すエリアを区分するのが基本です。

廊下やトイレが共有スペースの場合、来客者のためにBGMを流すことが考えられ、
執務スペースは無音状態とするのが一般的です。
放送区域を同一にするのは望ましくありません。

商業施設においては
バックヤード、客用通路、店舗内を同一の放送系統にするのは避けましょう。
バックヤードは従業員だけが必要とする案内放送を流すエリアであり、
客用通路は案内放送やBGMなどを流すのが基本であり、
放送の目的や用途が全く違います。

放送エリア分けは、放送を行う対象や用途を十分理解し、適切な回線分けが求められます。

 

業務放送設備の説明でした。
次回は非常放送設備についてご紹介します。

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