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忘れられない日|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

忘れられない日

2012年12月2日 山梨県 中央自動車道 笹子トンネル内上り線
天井板が138メートルにわたって突然崩れ落ちました。

走行していた3台の車が、天井板の下敷きになり9人が死亡。
老朽化する構造物の維持管理に警鐘を鳴らしました。

事故後6年あまりがたった先月
事故現場のパーキングエリアでサクラを植樹する遺族の姿がありました。

遺族の松本邦夫さんは「娘たちの命をつなぐ意味でも有意義な植樹であったと思います。」
松本さんの娘さん(当時28歳)は東京のシェアハウスの友人と一緒に
ワゴン車に乗っていて事故に巻き込まれました。

炎に焼かれ黒く変色した腕時計(が強烈な印象でした!)
娘さんの遺品です。

「非日常の時間の中に放り込まれてしまった始まりの日」
時計を見ながら話します。

天井板は設置されて35年も経つ古いものでした。
国の事故調査委員会は、
原因は天井板を吊り下げていたボルトが抜け落ちたことと結論づけ、
トンネルを管理する中日本高速道路の
点検や維持管理体制が不十分だったと厳しく指摘しました。

不十分な点検は事故の発生につながる

事故の3ヶ月前に行われた点検

ボルトをハンマーで叩く“打音点検”をしていなかった。

天井板の上からトンネル天頂部までの距離(高さ)は
短いところで約2,4m、長いところで5,4mもあった。

そのため、点検のたびにいちいち足場を組む必要があった。

点検作業が面倒だった証拠に、“打音検査”は2000年を最後に
事故発生までの12年間実施されていなかった。

そんな当たり前のことさえ満足に出来ていなかった。
事故を防ぐチャンスが何度もあったのに、その都度先送りにしてきたのです。

裁判所は適切な点検をする義務を怠ったとして、会社側の過失責任を認め
4億4、000万円を遺族に支払うよう命じました。

しかし役員個人を訴えた裁判では過失責任は認められませんでした。
では“手抜き点検”は誰の指示で行われたのか?
刑事事件として当時の社長らの不起訴処分に、
遺族らは処分は不当として、検察審査会に審査を申し立てています。

「事故の責任を明らかにしないと、また同じような事故が起こってしまう。
事故の再発を防ぐために必要な方法として我々がとれるのは、
 “組織罰”を実現することではないか。」
と松本さんは言っています。

企業などが関わった重大な事故で過失があった人がいた場合
その組織にも多額の罰金を科し、事故の抑止を目指さねばなりません。

松本さんは乗客107人が亡くなったJR福知山線の脱線事故の遺族らとともに
組織罰の実現を求め、去年10月には1万人の署名と請願書を法務大臣に提出しました。

「娘が、このくらいの歳だったらこんなことしてたかもしれないな!
 というイメージを膨らませることで、やり続けられるのではないかと思います。」
「私の中でやっぱり生きてるってことですよ。」
と結んでいます。

 

誰も事故の責任を問われことなく、事故(事件)は終結してしまうのか。

遺族らの“やるせなさ”はどうすれば癒されるのか?
お金か?
責任者への罰か?

遺族らの無念を晴らすには、どうすればいいのかを考えさせる日にしたいと思います。

遺族にしか分からない、忘れられない日。
私たちはいつしかネットでしか思い出せなくなってしまいました。

東日本大震災(3・11)も記憶の彼方に消えてゆくのかな・・・

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