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直流と交流②|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

直流と交流②

電源周波数は東日本で50Hz、
西日本で60Hzに分けられていることはご存知だと思います。
新潟・群馬・埼玉・山梨を境界とし、
静岡を分断する形で東日本と西日本で周波数が違います。

周波数の違いいは、交流電動機の回転速度にそのまま影響します。
住宅用の家電製品では、インバーター等によって入力周波数を変換し、
どの地域でも使用出来るようにしていることが多いのですが、

旧式の洗濯機では周波数切り替えスイッチを設置した地域に合わせる必要があります。
汎用ファンや変圧器の切り替えスイッチなど存在せず、
周波数の違う地域で電気機器を使用してはならない、といった制限が設けられています。

電動機やファンは、設置する地域の周波数に合わせた製品が作られています。
換気ファンやポンプなど単純な回転機器では、
現在でも50Hz用と60Hz用が別に製作されています。

変圧器も同様に、地域によって周波数を変えて設計されています。
電動機類は周波数によって回転速度が変わるため、
設置する地域を間違えると能力が10%~20%も変動してしまい、
所定の性能が発揮出来ません。

蛍光灯など、インバーターを内蔵している電気機器であれば、
電源のヘルツフリーやボルトフリーが一般化しており、新築物件での器具選定では、
どちらの周波数でも支障がありません。
インバーター装置を持たない古い蛍光灯は、設計周波数と違う電源を供給すると、
発熱や点灯不良の原因となります。器具の再利用や移設する場合、注意が必要です。

国内の周波数の違いの由来

東日本と西日本で50Hz・60Hzの違いがあるのは、
管轄する電力会社の発電装置がどの国から購入して運用したかによります。
東日本地区では、東京電燈(現在の東京電力)の前身会社が、
ドイツから50Hzの発電装置を購入して運用したため、
50Hzが周波数として定着しました。

西日本では、大阪電燈(現在の関西電力)がアメリカから
60Hzの発電装置を購入していたことが、60Hzの定着の由来となっています。
現在に至るも、電源周波数は統一されていません。

国内の電圧設定の由来

国内の周波数は東西で違いますが、電圧は100Vで統一されています。
諸外国は200Vの電源が普及している中で100Vに設定されたのは、
電圧が決定した1910年代、
民間に普及していた電気機器のほとんどが100Vの照明用電球であり、
電球に100V以上の電圧を印加すると寿命が著しく減少してしまうため、
100Vで統一したとされています。

東西の周波数と電圧

電気機器の周波数の違いと使用可否

50Hzと60Hzのどちらでも使用出来る
ヘルツフリーのインバーター式蛍光灯器具を除き、グロー式蛍光灯、ラビット式蛍光灯は、
それぞれ機器に定められた周波数の地域で使用しなければなりません。
設計周波数と違う電源を供給すると、機器の異常発熱による損傷につながります。

  • グロー式蛍光灯の周波数による違い

グロー式蛍光灯は、60Hz専用安定器を50Hz電源で使用した場合、
明るさは増加するもののランプ寿命が短くなり、安定器の異常過熱を引き起こします。

50Hz専用安定器を60Hz電源で使用した場合、
明るさが低下しランプ寿命が短くなります。
安定器の異常過熱は発生しませんが、始動不良となり点灯しない事があります。

どちらも正常な運用ではなく、故障の原因となるため避けなければなりません。

  • ラビット式蛍光灯の周波数による違い

ラビット式蛍光灯の専用安定器を50Hz電源で使用した場合、明るさが低下し、
ランプ寿命が短くなります。
50Hz専用安定器を60Hz電源で使用した場合、明るさは増加しますが、
ランプ寿命が短くなります。
安定器が異常過熱し入力電流も増加するため、発熱・発火の危険性が高くなります。

周波数の違いにより、蛍光灯安定器に過度の負担が発生し、
異常発熱や熱損事故の原因になります。
ランプ寿命が著しく変化し期待寿命を満足出来ません。
ラビット式蛍光灯とグロー式蛍光灯は、周波数によって全く逆の現象になりますが、
どちら場合も安定器を損傷する原因となるため、注意を要します。

  • HID照明の周波数による違い

60Hz用のHID安定器を50Hzで使用した場合、安定器の温度上昇につながり、
寿命が短くなります。

50Hz用のHID安定器を60Hzで使用した場合、
ランプの安定点灯までの時間が長く、ランプは暗くなり、寿命が短くなります。

どちらも寿命の低下を引き起こすので、適正な周波数での利用が原則です。

変圧器の周波数の違いによる使用可否

変圧器は、60Hz用変圧器と50Hz用変圧器を別に制作しており、
地域によって使い分けが必要です。
変圧器の特性上、東日本用の50Hz対応変圧器は60Hzの西日本で使用出来ますが、
60Hz用変圧器を50Hz地域で使う事は出来ません。

鉄心の磁束が周波数減少によって大きくなり、変圧器の断面積が不足するため、
励磁電流、励磁突流電流が増大します。
無負荷損失が大幅に増え、騒音や振動が非常に大きくなり危険です。

50Hz用の変圧器を60Hz地域で使用した場合、
励磁電流や無負荷損失が減少して効率が良くなりますが、
短絡インピーダンスの増加や、電圧変動率の増加という変化を起こします。
地域の特性に配慮し、設計された変圧器を使用することが原則です。

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