差止(特許権・商標権・意匠権等)が特許権の本質です
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
差止(特許権・商標権・意匠権等)が特許権の本質です
1 差止の内容
差止とは、侵害者の製品について、
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- 製造の停止
- 販売の停止
- 販売した物の回収
- 使用停止
- 販売した物の使用停止
- 製造装置の破棄
等を求めることができる権利です。
ここで、特に重要なことは相手方のメーカーのみならず、
小売り・卸(おろし)・購入者(消費者)
いずれにも、上記権利を行使できてしまうことなのです。
ただ、小売り・卸・購入者(消費者)に警告書などを出して、
結果、権利侵害ではないということになると、営業妨害等になってしまう、
こともあり得るため、よほど自信がないと正直できないです。
2 権利行使の本体
ほとんどの方は、権利行使というと、お金の話を想像するかもしれません。
もちろん、そちらも可能なのですが、
上記のように、相手の実施や購入者等の使用をやめさせるということは、
とても強い権利です。
実は、知財(特許・意匠・商標)等において、
差止こそ本体で本質なのです。
3 ダメな例
30年ぐらい前になりますが、
日本の半導体は、世界で圧倒的な力を持っておりました。
その時、ある企業などは、特許料収入(ライセンス収入、実施料収入)で
年間100億円もらっている等と、
もてはやされておりました。
その時の知財部長などは、過去はじめて取締役になったなど、
とてももてはやされておりました。
一見すると、会社に純粋な収入として入ってくる知財収入はとても魅力的です。
利益として純粋に積みあがるからです。
しかし、本当に長い目で見てその方針は正しかったのでしょうか?
私にはとてもそうは思えません。
実施料を取るということは、その相手に市場にいさせてあげるということです。
市場で物を売れるということは、販売ネットワーク、人脈を作るチャンスを与えるということです。
不良品や、品質不足などのトライ&エラーのチャンスを与え、より良い製品を作るチャンスを与えるということです。
さらに、研究開発などして特許を取るインセンティブを与えるということです。
実施料も、相手の利益も考慮して、利益や研究開発費を全部吐き出させるよりもたくさん取ることはできないでしょうから、
相手に儲けるチャンスをあたえるということです。
その結果、相手は大きく育ち、かえって、自身は市場を失うということになってしまったのではないでしょうか。
つまり、実施料を取るというのは、次善の策であり、基本は、この差止によって、
相手を市場から排除し、独占する!
ことによって、高い値段で消費者に買ってもらうということこそが、
特許の真の目的なのです。
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