損害賠償(特許権・商標権・意匠権等)

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有
               

損害賠償(特許権・商標権・意匠権等)

損害賠償とは

知的財産において、もっとも重要な請求は、差止請求です。

そして、次が損害賠償請求です。

こちらは、損害額を請求するというものです。
ただ、アメリカの3倍賠償と異なり、
損害額しかもらえません。

つまり、損した分を取り戻させてくれるにとどまるということです。
その結果、訴訟の費用などの費用は戻ってこないため、
実は、日本の場合は、訴訟をしたら損といわれるゆえんです。

ただ、立法論としては現在でも、3倍賠償については、
常に議論になっております。

損害賠償の範囲

損害賠償が認められる範囲

損害賠償が認められる範囲は、前述のように、
原則的には、原告に合った被害の額になります。

そのため、弁護士費用・弁理士費用などは含まれないことになります。
訴訟に要した弁護士費用・弁理士費用も請求できないことが原則になります。

また、3倍賠償も認められません。

損害賠償の根拠

特許法・意匠法・実用新案法・商標法には、
損害賠償の根拠規定は存在しません。

原則規定に該当する民法にまで根拠を求めることになります。

民法709条には、

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う

と規定されています。この規定によって、特許法等は損害賠償を請求することができます。

損害賠償の算定

上述のように、損害賠償の額の原則は、
損害の額です。

この額を具体的に原告は主張し、立証する必要があります。

しかし、知的財産への侵害は損害の額を立証することは大変困難です。

そこで、特許法等は一定の救済規定を設けています。
それが、後述する102条の各規定です。

(損害の額の推定等)

第百二条 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。

一 特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額に、自己の特許権又は専用実施権を侵害した者が譲渡した物の数量(次号において「譲渡数量」という。)のうち当該特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた数量(同号において「実施相応数量」という。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)を乗じて得た額
二 譲渡数量のうち実施相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(特許権者又は専用実施権者が、当該特許権者の特許権についての専用実施権の設定若しくは通常実施権の許諾又は当該専用実施権者の専用実施権についての通常実施権の許諾をし得たと認められない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額
2 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
3 特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
4 裁判所は、第一項第二号及び前項に規定する特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、特許権者又は専用実施権者が、自己の特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権又は専用実施権の侵害があつたことを前提として当該特許権又は専用実施権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該特許権者又は専用実施権者が得ることとなるその対価を考慮することができる。
5 第三項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

との規定になります。
基本的には、いずれも、立証責任を軽減するためにの規定になっております。

過失の推定

さらに、特許法等では、原告の立証責任を軽減するために、
過失の推定規定を設けております。

(過失の推定)
第百三条 他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。

この規定は、あくまで、過失の推定ですので、
この推定を覆すような、事実を主張して立証すれば、損害賠償を被告はしなくてもいいです。
しかしながら、原告は、電話も、インターネットも、郵便も、何もかも届かない島などにいて、本土に来たくても来ることもできなかった、
というような極めて特殊な状況しか、この推定は覆らないといわれています。

知財の損害賠償訴訟における主張立証(要件事実)

知財における損害賠償訴訟における主張立証の内容(要件事実)は以下の内容になります。

(1)知的財産権の存在及び原告が権利者であること

通常は、特許等の登録番号と
その登録原簿を示せば足ります。

(2)相手が権利範囲に属する商品等を販売していること

これが一番大変ですが、

相手が、一定の商品(イ号商品)を販売等していること
そのイ号商品が権利範囲に含まれること

(3)それによって損害が発生していること

正直、これは、主張すれば足ります。
(1)と(2)を満たしていれば、損害が発生していることは当たり前だからです。
なお、過失の推定規定がありますので、過失についても、一言過失により損害が生じていると
主張すれば足ります。

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©弁理士 植村総合事務所 所長 弁理士 植村貴昭

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