特許請求の範囲の重要性2(複数のポイント)|特許要件
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
特許請求の範囲の重要性(複数のポイント)|特許要件
特許請求の範囲の重要性は、
前のこのページ特許請求の範囲の重要性1でご理解いただいたと思います。
発明は1つではない!(上位概念化)
皆さん、発明は1つだと思っていると思いますが、
発明は1つではありません。
まず、同じ発明でも、上位概念から下位概念まであります。
分かりやすく言うと、
リアカーまだない時代に、リヤカーを発明したとします。
発明者様は、2つタイヤを付けて手で引っ張るものというかもしれません。
しかし、手で引っ張るといいましたが、
これって、押して使うこともできるのです。
そうすると、特許請求の範囲に「引っ張る」と書いてしまうと、押す方式のものは、
権利範囲外になってしまいます。
上位概念化して、人力によって移動させるもの等の表現(上位概念)の方がいいということになります。
また、この例では、タイヤは2つですが、1つとか、3つ、4つそれ以上でも、
少し使いづらいでしょうが、全く使えないわけではないのです。
そうなると、この部分も、2つとの限定をかけずに、単なる車輪(上位概念)とした方がよさそうです。
どの程度上位概念で書くのかにより、発明はいろいろな表現が可能になるのです。
そういった意味で、発明は一つではないのです。
なお、何でもかんでも無限に、上位概念化すればいいというわけにも参りません。
例えば、下記のような土木作業の手押し一輪車が過去にあれば、それと同一(新規性なし)と
されてしまうからです。
従いまして、どのぐらいの文献がありそうかなぁということを考えながら、
この特許請求の範囲を作成していくことになります。
発明は1つではない!(ポイントを変える)
前述のリヤカーの場合、他にも注目すべきポイントは
① この木の部分を囲む部分は、スカスカな柵であること
② タイヤにゴムがついて衝撃を緩和していること
③ タイヤの外側にタイヤを守るように柵があること
④ 手で引っ張ることが容易なように、U字型に手で引っ張る分ができていること
⑤ タイヤは2つで左右の安定性を図りつつ、前後には揺動できること
⑥ 荷台部分の下が木でできていること、
ぐらいは、ざっくり見ても発明が存在しているのです。
現実に作ったものであれば、さらに細かい工夫がそこかしこにあると思います。
それを全て最初のから特許請求の範囲として記載することは難しいです。
というわけで、発明は1つではないのです。
発明の重要部分はどこなのか
ここまで読んでいただければ、発明は1つではなく、
それを全部、特許請求の範囲に書くことは難しそうだと、思っていただけると思います。
上位概念化も、どこまで上位概念化したら、新規性を持つのかという部分は、
過去のほかの発明との関係で決まるので、出願段階では分からないと言えます。
また、複数あるポイントのうちどれが、同じく過去のほかの発明と異なるかも、
出願段階では分からないのです。
となると、実は、この段階では分からないのです。
ここで、特許は前もって調査すれば、分かるのではないですかという方がいます。
理想的にはそうです。
しかし、違うということは、このページで説明しております。
また、確かに調査すればある程度の先行技術文献を得ることはできます。
(精度は、最も簡易な調査の場合70%程度だと思います。)
しかし、実は、それには意味が無いのです。
そのことは、次のページで説明します。
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