特許権をとったら自分だけが実施できるのか? 又は 他の方から特許権等の行使を受けないのか?:利用発明について

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

特許権をとったら自分だけが実施できるのか? 又は 他の方から特許権等の行使を受けないのか?:利用発明について

特許を出願される方からよく聞かれることとして、

① 特許を取れれば実施してだいじょうぶですか?
  (他の方の特許等に抵触しないということになりますか?)

② 特許をとれば自分だけが実施できるということでしょうか。

との質問を受けることがあります。
以下、回答させていただきます。

回答:①について(特許を取れれば実施して大丈夫でしょうか?)

実は、特許とは独占という言葉よりも、排他権であると理解してください。

排他とは自分がとったところは他人は使用できなくできる権利ということです。
それって独占と何が違うの?と思われた方、もっともです。

普通は他人を排除できるのだから、自分だけが使えると思うと思いますが、
そうではないのです。

他人を排除できるけど、自分も排除されるということがあり得るのです。
以下、そのことについて、記載します。

利用発明

まず、このことを理解するには、利用発明という概念を理解しなければなりません。

他人の権利の中に権利を作ることが出来るということなのです。

 第1段階

例えば、Aさんが新しい化学物質(α)を発見し特許権を取得したとします。
そのことにより、αを作ったりすることは、Aさん以外の人が出来なくなります。

この段階では、αはAさんは、排他出来るだけでなく「独占」できています。

 第2段階

では、Bさんがこの、αの効能としてガンに効くということを発見したとします。
αは単に新しい化学物質に過ぎず、その化学物質がガンに効くとは限らないわけですので、
(むしろ、ガンに効く新しい化学物質は1万中1件以下の確率だと思います。)
化学物質αの本当に有用な使用方法を見つけたということで、問題なく、Bさんも特許権を取得できます。
(このように、Aさんの発明を利用してBさんが新しい発明をすることを「利用発明」といいます。)

こうなってしまうと、すべて自由に実施できていたAであっても、
ガンに対して使用することだけはできなくなってしまいます。
もちろん、他の部分は依然として、自由に排他的かつ独占的に使用を続けることが出来ます。

他方、Bさんにしても、ガンにαを使用するには当然にAさんの特許部分を使うことになるので、
Bさんも、ガンにαを使用することはできません。
Bさんは、排他することしかできません。

 第3段階

なお、さらに、Bさんの範囲についてさらに利用発明が発生することも十分にあり得ます。
例えば、確かに、αはガンに効くが、特定のビタミンと一緒に使うとより効果があるとか、副作用が少ないなどが、
発見されるかもしれません。そのようなものも、Aさんの発明、Bさんの発明の両方を利用した発明となるのです。

 結論

以上のように、利用発明という関係が成立する以上、

特許を取った = 自分だけが実施できるというということになりません

また、他人の特許検討を侵害しないと断言することもできないのです。

もし心配なら

侵害調査という方法もあります。

特許の調査(特許検索)の種類(先行調査・無効調査・侵害調査)

ただ、これには40万円程度の費用が掛かりますし、その精度も100%ではありません。

一定程度の安全性

ただ、特許を出願して特許庁から拒絶理由通知が通知されます。
その際に通知される文献は、その分野の審査のプロである審査官が探してきた文献となります。

そのため、その文献について確認すれば、ある程度は先行する特許を推定することが出来ます。

関連するページ

広い権利をとれても安心しきってはいけません!穴をあけようと虎視眈々と狙っているかも!

のページとも大きく関係がありますので、
このページも参照ください。利用関係について理解できると思います。

回答:②について(特許をとれば自分だけが実施できるということでしょうか。)

これについては、取れた特許権の範囲については、排他権として、他人の実施は排除できます。
とはいえます。

前述のように利用発明ということがありえますので、実施が出来るとまで断言できません。

取れた特許権の範囲

前述の際に「とれた特許権の範囲」と記載させていただきました。

特許が取れるのは、その製品のすべてでではなく。

その中の一部の観点に過ぎないのです。
そのため、前述の①の回答については、その観点についてはという制限がついてしまうのです。

一つの製品について、発明の観点は大変、たくさんあります。

(携帯電話などにおいては、1つの製品について万単位の特許が関係しているといわれています。)

そのため、すべての観点について、特許が取れるということは100%ないため、
その製品について、特許を取れた観点については排他権がありますが、他の部分にはないです。

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特許申請知識編

©弁理士 植村総合事務所 所長弁理士 植村貴昭

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