新規事項の追加とは、「最初に添付した明細書等の範囲」外の補正

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

新規事項の追加とは、「最初に添付した明細書等の範囲」外の補正

1 定義

面白くないですが、まずは、条文上の定義から

第十七条

手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。
ただし、次条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書・・(中略)・・について補正をすることができない。

 

第十七条の二

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。
ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。

このように、特許法第17条及び特許法17条の2第1項で、補正ができることが定義されています。

しかしながら、この条文の肝は、補正ができるものの各種の制限があることです。

① 内容の制限

② 補正の時期による制限

③ ②の補正の時期により、①の補正できる制限があります。

内容的な制限

補正可能な内容は原則的に、出願時の明細書、特許性請求の範囲、図面以外に対しては可能ということです

第十七条の二

3 第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、
・・(中略)・・願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面・・(中略)・・
に記載した事項の範囲内においてしなければならない。

出願時の明細書、特許性請求の範囲、図面以外の書面は書誌的な事項であり、
発明の内容にかかわらず、
基本的に無制限の補正を認めても、先願主義に反しないからです。

逆に言うと、
出願時の明細書、特許性請求の範囲、図面については、
上記のような、「最初に添付した明細書等の範囲」との制限が課せられています。

新規事項の追加=「最初に添付した明細書等の範囲」外の補正を言います。

明細書と範囲の関係

どこまでが、新規事項の追加といえるのかは、
正直、微妙な場合があります。

以下、もう少し説明します。

内容的な制限

例えばですが、特許請求の範囲の文言(構成要件)を削除するような場合は、
現実に文言自体は増えていないわけです。

しかし、実質的に権利範囲の拡大=拡大した部分については
新規事項と判断される余地もあるわけです。

その判断は、いろいろな場合があり得、何とも言えませんが、
一般的には、明細書全体から見て、権利範囲を拡大させるような記載(その拡大させる部分について変化させた実施例が複数ある)とかの場合は、
当初からその拡大部分まで意識していたといえると思います。

また、発明の重要部分(要部)は、拡大を認めることは困難な場合もあると思われます。

ただ、要部であれば拡大を許さないというのも、
特許法で保護されるのは具体的な実施例ではなく、
概念たる発明であることから難しいといえると思います。

制限に反した場合の効果

新規事項の追加をした場合は、拒絶理由、無効理由になります。

関連ページ

特許庁の新規事項の追加に関するページ

第9回 明細書(発明の詳細な説明)の作成方法。発明を実施するための形態の記載の概要

弁理士 植村総合事務所 所長弁理士 元審査官 植村貴昭

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