コラム(各種情報)

第38回 ビジネスモデル特許2 いきなりステーキ

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

ビジネスモデル特許2 いきなりステーキ

植村のコラム38

前回は、ビジネスモデル特許について記載させていただきました。
今回は、その続きです。

いきなりステーキはなぜこの特許をうまく活用できたのか、
そこからどのような教訓を得ればいいのかをお話させていただきます。

(1)特許は登録された時が最も怖いのか?

特許は、

 ① その特許の内容を文章にしたものを特許庁に出願して、
 ② その内容が特許庁の公報という形で公開され、
 ③ その後登録になる

という経緯をたどります。

① の出願から、② の公開がされるまでは、1年半かかります。
つまりその間は、どのようなものが出願されているのかわからないということになります。

また、② の公開があったものの登録にならないものも多くあります。

特許出願から公開まで1年半ほど

そのため、特許が出願されているだけでは脅威ではないというのが一般的な考えです。
つまり、特許は登録されたものだけが怖いというのが一般的な考えになります。

しかし、それには前提があります。
登録されたものが広く、回避不能であるほど広い権利であるという場合です。

そうでなければ、その部分だけを少しでも避ければ、あとはやりたい放題ということです。

しかも、
権利になった後は、その権利範囲を動かすことは許されていません。

ちょっとだけでも、よけられてしまえば、どうにもできなくなってしまうのです。

私が名付けた地雷移動攻撃というものも、ご参照ください。
さらに、この地雷移動攻撃をより強力にするため、
地雷無限増殖攻撃警告書もどき攻撃もあります。

 

(2)本当に怖い特許とは?(出願後公開まで、最強状態)

分かりやすい例を言うと、
地雷はとても怖いですが、その位置がわかっていたらどうでしょうか?
その隣に立っても大丈夫ですよね。

つまり、地雷が怖いのは、その位置がわからない時だけと言えます。

この状態を特許に当てはめると、
①の出願しただけという状況は、
どのような内容が特許として出願されているのか競合他社にはわからないのです。

これは、まさに地雷が埋まっているところが分からない状態なわけです。
例えば、特許出願中とだけ何らかの形で宣伝しておけば、
競合他社は、どのようにすればその地雷を回避できるのかわからないため
なかなか進出しづらいという状況なのです。

大きな会社で大資本を投入する会社であればあるほど、
万が一特許侵害になってしまったら大変なことになってしまうといえます。

正直、この状態では、どのような優秀な弁理士であっても、
「全くわかりません」としか言えないと思います。

 

(3)公開されれば怖くなくなるのか?(登録よりも怖い状態)

次に、② の公開があれば安心かというと、
実は、③ の登録になるまでは、その特許権とする範囲は変えることができます。

つまり、地雷の位置を動かすことができるのです。
この状態においては、
例えば、競合が所定の商売方法を取っていたら
その位置に、地雷(特許)を動かすことが可能です。
言い換えると、相手の足元(足の下)に地雷を動かすことが可能なのです。

特に、先ほどの地雷移動攻撃を参照下さい。

つまり、立っているところに、後から地雷を滑り込ませるイメージです。
もちろん、きれいに足元に動かせるか否かは、
その出願の内容や、特許庁審査官が認めるかなどの問題もありますが、
ともかくその可能性はあるという状態です。

そのため、② の状態も競合他社にとっては安全とは言えない状態です。

その後、③ の登録になってしまうとそういうことができなくなってしまうので、
実は、一番弱い状態になります。

(4)弱くなる登録されるまでに何をしなければならないのか?

③ の登録される、又は、特許登録できないというのが確定するのは、
① の出願から平均で4年から引き延ばせば7年以上の期間があります。

その間に特許出願中として広報し、競合他社を牽制し、
その間にその業態は自社のものと消費者等に認知されるようにすればいいのです。

そうすれば、たとえ特許が狭いものであろうと、
さらに言うと、特許が登録にならなくても、商売的には勝ちです。

特許で負けても、商売的に勝てればいいのです。

このような戦略を取って、

ステーキ肉を、
お客様がグラム数を言う⇒その場で切って⇒焼いて⇒提供する
という業態は、
いきなりステーキのもの!

と、お客様に認識させることに成功したのが、いきなりステーキなのです。

いきなりステーキ特許の解説のページはこのページです。

これが、中小企業であっても、特許を出すべきと私が言う本質的な理由なのです。

特許、商標、等の知財が企業間戦争の道具
ということの一例を記載させていただきました。

さて、次回は、ちょっと、時期が外れてしまいましたが、
最近話題の著作権法の改正について、お話させていただく予定です。

なお、実用新案での、権利の活用については、このページをご参照ください。

 

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以上

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