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第34回 特許の活用 中小企業が大企業に勝つには
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 |
特許の活用 中小企業が大企業に勝つには
植村のコラム34
前回は、貿易戦争について書かせていただきました。
今回は、相対的知財力と私が呼んでいるものについて記載させていただきます。
大きい企業が知財の世界では有利なわけではない!
さて、ある特定の製品について
100億円の売り上げを上げている大企業と、
1億円の中小企業が存在していると仮定しましょう。
おそらく、大企業は、多角化しているので、
その分野以外にも売り上げがあり、例えば
全体で1000億円の売り上げがあるとしましょう。
その状態での、力の差は、その製品単独で見て1対100で、
企業全体では1対1000ということになると思います。
正直、圧倒的です。勝負になりません。
相対的知財力
しかし、これが知財の分野になると、
この力の関係を維持するためには、
大企業はその分野で100倍もの出願がなければ匹敵しないという考え方が、
相対的知財力と私が呼ぶものです。
つまり、1億円しか売り上げがない企業の1つの特許は、
その分野の100億円の企業における100件に匹敵するという考え方です。
どんな特許が必要なのか
もちろん、ごみのような役に立たない特許(ゴミ特許)ではだめです。
誰でもやりたいと思うような、特許である必要があります。
場合によっては、相手がまさにやっている
特許を後から取るという方法も検討しなければなりません。
(このような方法を 地雷移動攻撃 となずけています。)
この考え方がどういうものなのか説明いたします。
特許は、たった1個の特許であっても相手がその技術を利用しているのであれば、
その生産の差止、販売後の製品の回収などを命じることができる権利です。
(差止(特許権・商標権・意匠権等)が特許権の本質です)
ねじに特許があれば、
それをたった一個でも使った製品(例えば車、客船)を差止できということになっております。
( 日本製鉄株式会社がトヨタ自動車を特許権侵害で提訴した事件についての解説 )
そのため、大企業が売上100億円もあるということは、
それだけ人質が取られているのと同じ状況なのです。
つまり、万一、1億円の企業の特許によって差し止められたら、
100億円の被害が生じえるとうことなのです。
一方、1億円しか売り上げがないということは、
最大の被害額であってもその1億円分しか被害が生じないということでもあるのです。
売り上げが高いのは不利な要因である
知財(特許)においては、
売り上げが高いということは有利なことではないということなのです。
オーナー企業(中小企業)が大企業よりも強い点
そのため、強力な特許を取れば、たとえ1億円しか売り上げがないとしても、
その何十倍、何百倍、何千倍もの企業とも、
自社がつぶれても構わない、
刺し違えてやると覚悟を決めれば戦うことができるのです。
たいていは、1億円の企業はオーナ企業です。
そのためこのような覚悟も可能かと思います。
他方、全体規模1000億円もの企業は大抵雇われ社長です。
このような覚悟を持ったオーナ社長と本当に戦うことができるでしょうか。
難しいと思います。
最悪、中小企業であればつぶして新しい会社作ればいいのです!
中小企業の場合、もし、裁判やって負けて、損害賠償を求められても、
最悪、つぶして新しく会社を作ればいいのです。
下町ロケット
下町ロケット等のことを思い出していただければと思います。
私は、何もこのような争いをしてくださいと言っているわけではありません。
このような覚悟もあるんだぞ、特許もあるんだぞ、
ということで、
大企業などからの不当な値下げ要求への対応の際や、
ライバル企業と天秤にかけられたときの対応の際などに、
これを思い出していただければと思って記載させていただいております。
ただ、そのためには、有効でかつ強力な特許が必要です。
弁理士も重要
ぜひ、良い弁理士さんをお探し下さり、
そのような権利を本気で、弱気にならずにとってくれる方をお探しください。
下町ロケットでは、全く出てきませんが、
実は、そのような特許をこっそりと取得していた弁理士の、
能力と胆力(←特に、胆力)
について、実は、驚愕して読んでいるのです。
次回の予告
さて、次は、ホールディングスについてです。
皆さん、大きな企業がホールディングス化してかっこいいと思いませんか。
私は思います。
しかし、ホールディングスは大企業だけのものではありません。
中小企業でのホールディングス的なことが魅力的だということをお話しさせてください。
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