中小企業が知るべき知財戦略講座

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

知って得する知的財産の利用方法
~税金、企業支配、ライバル対策等~

1 下町ロケット

下町ロケットという本を知っていますか。

たいていの方は知っていますよね。
去年、ドラマ化されて話題になりましたから。
あのお話でも出てきましたが、特許というのはとても役に立つはずのものです。
逆に、ライバルに特許を上手く利用されてしまうと、大変苦しくなるものです。

ああいったものは、お話の世界だけのものだとお考えの方もおられると思います。

しかし、上手く使えば、中小企業・ベンチャー企業にとって、有効に利用できるのです。
そんな話をさせていただければと思います。

中小企業・ベンチャー企業の経営者でなくても、
それに対して経営指南をされる方にとっても役に立つお話にしようと思っています。

 

2.有効活用方法

これから、知的財産を上手く使用した事例の説明をしていきます。

商標の利用方法

(1)商標編

① 会社支配編

商標を取得する際に会社名義で取得していませんか?
オーナー企業の場合、完全に間違いです。
その理由を説明させていただきます。

去年、「大塚家具」の親子による会社支配権の奪い合い
(株主からの委任の奪い合い)がありましたよね。
あれを見て、私は
「あのお父さんもったいないなぁ~ 商標持っていたら勝負は、一発で決まったのに」
と思っていました。

つまり、お父さん個人が「大塚家具」って商標とっていたら、株主(特に機関投資家)へ、
次のように言えばよかったのになあと思いました。

「もし、私が株主総会で負けたら、これまで無料で大塚家具に使用させてきた
「大塚家具」という商標を一切使用させません。そして、私は新しい会社を作って、
「大塚家具」という商標をつけた店舗を、今の大塚家具の横にオープンします。」

そう言われたら、株主(機関投資家)はどうするでしょうか。

「娘さんのプランのほうが会社は伸びるかもしれないけど、
お父さんにこれをやられたら、どんなプランであっても
うまくいく可能性は、めちゃめちゃ低くなる。」

と考えるはずです。

その結果、嫌々でもお父さんに投票するしか無くなるのです。
つまり、商標権というのは、実は会社支配のための道具になるのです。

ここで、会社支配のためならば株式や代表取締役として支配すれば良いのではないか
と思うと思います。
会社法的には、100点満点です。
弁護士さんも、税理士さんも、司法書士さんも、コンサルタントさんも、
銀行さんもそう言うと思います。

しかし、私はそうでしょうか?

と問いかけます。

つまり、大株主という地位と代表取締役という地位はそれぞれ絶対でしょうか?
確かに、会社が本当に小さいうちは、社長がほぼ100%の株式を持っているでしょう。
他の取締役も、社長に歯向かうような人はいないでしょう。

しかし、これから会社が大きくなってきたらどうでしょう。
株式は、いろんな人に譲渡したり、新株を発行したりしてしまうのではないでしょうか。

さらに、上場したらどうでしょう。
50%どころか、30%も持っていない状態になるのではないでしょうか。

場合によっては、取締役会が勝手に新株を発行して、
持ち株比率を大幅に下げてしまうかもしれません。
さらに、銀行に担保(譲渡担保)として取られてしまうかもしれません。

また、取締役という地位も安泰ではないです。
具体的には、信頼していた専務・常務等が、ある日突然裏切って動議を出してきて、
社長を解任されてしまうかもしれません。

大塚家具のように、身内かもしれません(怖いですね・・)。
以上のように、株式による支配も、取締役による支配も絶対ではないのです。

それに対して、商標権の場合はどうでしょうか。
社長個人で会社名又は主力商品名(主力サービス名)を所有していた場合には、
所有権は絶対です。
あなたが、他人に譲渡しないかぎり、絶対にあなたのものです。

もちろん、銀行に知られたら、担保に取られてしまうことはあるかもしれませんが、
商標にこれほど大きな力があるということは、
ラッキーな事に、銀行にはまだほとんど知られていません。
(このコラム、銀行の人は読んでいないことを祈ります。)
会社支配の最後の隠し玉として、商標を取っておいて損は無いのです。

そして、個人で商標を持っているということは、従業員をも守ることにもなるのです。
次にそのことを書きたいと思います。

② 再出発編

あまり考えたくないことかと思いますが、
現在は順調に行っている会社であっても、
いつか上手く行かなくなってしまうこともありえます。

また、いろいろな事情で、一度会社をたたんでしまいたくなる場合も有り得ます。
債務超過に陥ってしまった場合などです。

そういった場合に、会社で商標を取得していた場合は、どうなると思いますでしょうか?

もちろん、商標は会社の財産なので、会社への債権者のものとなってしまいます。
その際に、再起を期して、新しい会社で再出発を行いたくはありませんか?
しかし、商標は債権者のものとなっていますので、もはや、同じ名前では商売ができません。
せっかく、勝ち取ってきた信用も、その名前とともに、他の方に移っていってしまうのです。

それに対して、商標をご自身で取得していた場合は、どうでしょうか。

会社が潰れてしまった場合であっても、そのままご自身の権利のままです。
会社とご自身は別人格なのですから。
そうであれば、そのままの名前を使って商売を続けることができます。

特に、その商品が一般消費者向けのものである場合は特に有効であると思います。
そうして、同じ名前で商売を続けることができるのですから、
従業員もそのまま雇用し続けることができる可能性があるのです。

ここで、一部の経営者様は以下のようにお考えになられるかもしれません。
「個人で商標を取得するっていうのは、
何か会社の財産を私物化しているような気がして、気が引ける。」

または、

「従業員に知られてしまうと、社長は会社を私物化していると思われる。」

という感じのことです。
しかし、上で書いたように、経営者個人で商標を取得することは、
むしろ会社のため従業員のためになるのです。

最後に、

「経営者は、個人保証しているから、個人で持っていてもあまり意味がない」

とおっしゃるかもしれません。

確かにそこは問題です。
しかし、そのような場合は、経営者ご自身で取得している必要はないのです。
例えば、奥様、お子様に取得させていればよいのです。
奥様、お子様とは、経営者とは完全に別人格です。
経営者様がもし破産しても、何ら影響ありません。
そういう方法があるのです。

ちょっとだけ、心配なのは、上述した会社支配という点で、
奥様と離婚した時、お子様と意見が対立して仲違いしてしまった時です。
こういう場合は、家庭サービスも仕事の一環だと思って、
良い関係を維持することも頑張っていただければ・・と思います。

商標を取って家庭円満! いい事です!!

次は、うーんと、商標による財産形成のお話をしたいと思います。

③ 財産形成編

このコラムを読んでおられる方は、
「うちの会社は年商も低いし、価値が無いから、商標など取る必要ない」
と思っておられるかもしれません。

しかし、もともと、商標と言うのは、実はそれ自体は価値がありません。
そのマークを見て、お客様がその特定の会社の商品を選択するから価値が有るのです。
つまり、お客様の信頼が商標の価値なのです。

高級ブランドはもちろんですが、激安ブランド(「吉野家」等)も同じく価値が有るのです。
このぐらいの値段でこのぐらいの価値のあるものが提供されるのだと、
お客様が期待してその商品やサービスを購入するのであれば、全て価値が有るのです。

ということは、現在すごく価値があると思う商標(ブランド)も、
最初は、無価値であったということなのです。
それが、長く使われることによって、膨大な価値を持つに至ったということなのです。

そういう点で、まだまだ、会社の年商が低く商標の価値が無い間に
経営者ご自身のものとしておくべきなのです。

逆に、ある程度会社が大きくなった後に、経営者ご自身が商標を取得した場合には、
ある意味、会社の財産を奪ったという評価を受ける可能性があるのです。
ですから、まだまだ価値が低いうちに取得しておいて欲しいのです。

また、経営者様は会社が大きくなれば、当然、株式の値上がり、
取締役報酬の増額という点で、利益を得ることになると思います。

皆さん、お金って好きですよね。
私も大好きです(笑)。
そういった方にとって、商標を経営者様ご自身が取得していれば、
これらの報酬とは別に、商標権の値上がりというオプションもついてきます。

特に、本当に会社が大きくなると、株式よりも、実は一番価値があるのは商標なのです。
ルイ・ヴィトンとかって、ほとんどの価値は商標にあると思いますよね。

以上のような早めの商標取得で、しっかりこっそりと財産形成も可能なのです。

次は、商標を使って会社承継をするということを書きたいと思います。

④ 会社承継編

会社が大きくなり、財産も十分に形成した経営者様であれば、
次に考えることって何でしょうか?
上手く、お子様・お孫さんにその会社を承継することですよね。
そのためにも、商標は力になることができます。

以上の①~③では、基本的に、経営者ご自身での商標の取得をお勧めしてきました。
この会社承継編では、商標を取得していただくのは、
この先会社を承継させたい後継者様となります。

①の会社支配編で書かせていただいたように、会社の商標を持っているということは、
会社の支配権の1/3を有しているということなのです。

既に、会社に取締役等で参加されている承継者はもちろん商標権者になることができます。
しかし、商標の旨味は、まだまだ小さい承継者(例えば、0歳から)に有効です。
又は、現在公務員をやっている承継者様、他の会社に修行に出ている承継者様に特に有効です。

商標は単なる権利で、特許庁に10年おきに維持年金を支払う以外の義務が一切伴わないので、
どなたでも取得することが可能です。
ぶっちゃけ、0歳の乳幼児であっても可能ということなのです。

お子様・お孫様といった後継者様のために、
今のうちから商標を取得しておくというのはいかがでしょうか。
きっと、
「お父さん! お爺ちゃん! ありがとう!」
ってことになると思います。

ただし、ここでも、その後継者様と不仲になってしまうというリスクは担ってしまいます。

やっぱり、家庭サービスも仕事の一環だと思って、良い関係を維持することも
頑張っていただければ・・という結論になってしまいます。

以上、今回の私のコラムのまとめは、実は「商標を取って、家庭円満」でした!!

 

以上

 

商号と商標の違いはこちら

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