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スピーカーの配置計画|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

スピーカーの配置計画

非常放送設備として放送設備を設置する場合、
非常用スピーカーが地区音響装置となるため、
消防法に規定された間隔で配置計画を行わなければなりません。

消防法上、スピーカーは10mの範囲を警戒出来ると定められているため、
スピーカーを設置した部分から建築物の全ての場所に対し、
半径10mの円が包含するよう配置計画を行います。

半径10mと消防法によるスピーカー設置場所

BGMや館内放送を兼用する放送設備であれば、非常放送としての機能だけでなく、
日常的に流すBGMや案内放送の明瞭性を考慮して、
半径5mの円が包含するように配置すれば、より品質が向上します。

スピーカーの台数が多くなるほど、設置コストが増大し、アンプのサイズが大きくなります。
コストアップにつながらないように、合理的な計画が求められます。

反響を考慮したスピーカーの配置計画

天井が低い場所、ホールや体育館などの大空間では、
スピーカーからの音が反響し、聞き取りにくいという不具合につながりやすいものです。

大空間では、多数のスピーカーを配置するよりも、
大出力のラインスピーカーを少数配置した方が品質向上につながります。

大型スピーカーの設置が難しい場合、小型スピーカーを多数設置することになりますが、
音が複数に渡り遅れて聞こえると明瞭性を著しく低下させるので、
指向性のあるスピーカーを用いて、音の重なりを低減させるように計画します。

自走式立体駐車場など、天井が低く面積の広い空間にスピーカーを配置する場合、
スピーカーからの音が天井や床などに反射して、聞き取りにくいことがあるため、
注意を要します。

スピーカーの台数を減らし、1台ごとの出力を大きくする配置計画とすると、
場所によっては音の大小が大きくなり、品質低下につながります。
個々のスピーカーから発する音量を小さくし、設置台数を増やすといった工夫が必要でしょう。

集中方式

スピーカーを一方向に集中して向け、音源の方向性を得る配置方式です。
スピーカーからの距離や位置が変わると音質が悪化するため、
コンサート会場や劇場など、定位置で音を聞く環境に適しています。

分散方式

全体を均一な音圧レベルにする方式で、
どの場所にいても一定の音質を確保出来る配置方式です。
施設のBGM放送や一般業務放送に適しています。

集中分散方式

集中方式と分散方式を併用し、集中方式を基本にスピーカーを配置し、
音圧レベルの低い場所に分散方式のスピーカーを補助配置する方式です。
体育館やエントランスホールの放送に適しています。

スピーカーの構造の違いと種類

放送設備用スピーカーとして、コーン型・ホーン型・ワイドホーン型の3種類が代表的です。

コーン型スピーカー

コーン型スピーカーは、周波数特性が広く、
小出力から大出力まで幅広いラインナップのある、汎用性の高いスピーカーです。
原則として屋内使用とし、水気のある場所には不向きです。

ホーン型スピーカー

コーン型よりも指向性が高く、大出力を得られるスピーカーです。
防水・防湿性能があり、屋外で使用出来ます。
周波数特性が狭く、低音域から高音域を使用するようなBGM用途には不向きです。

ワイドホーン(ソフトホーン)型スピーカー

コーン型スピーカーをホーン形状のケーシングに収容しています。
ホーン型スピーカーよりも周波数特性が広く、
屋外でのBGM用や大空間放送用として使用します。

防水・防湿性能が高く、屋外で使用しても問題ありません。
製品の種類があまり多くないため、機器選定が制限される傾向にあります。
周波数特性は幅広い範囲で平坦であり、均一な音圧レベルを得ることが可能です。

スピーカーパネルの構造と仕様

スピーカー本体のパネル表面は、アルミパンチングまたはジャージネットが用いられています。ジャージネットは日常清掃が難しく、表面が黒くなりやすいため、
アルミパンチング製を選定するとメンテナンス性が向上します。

天井の色とスピーカーパネルの色を組み合わせたいという意匠的な要望があった場合、
工場にて指定色塗装を施した製品を設置します。
コストアップにつながるため、事前に意匠担当者や施主に対して確認すると良いでしょう。

特殊仕様のスピーカー

非常放送用のスピーカーは、
高温多湿の空間や、可燃性・爆発性ガスが充満する危険な場所であっても、
設置が義務付けられています。
設置場所に応じた防水性能や、防爆性能などを向上させた製品を選定し、
設置しなければなりません。

建物の屋外に放送を流す必要がある場合は、
防水防湿性能を高めたスピーカーを選定しなければ、漏電による故障の可能性があります。

ハイインピーダンスとローインピーダンスの違い

音声信号をスピーカーへ出力する方式として、
ハイインピーダンス方式とローインピーダンス方式があります。

建築設備用の非常放送や業務放送として用いられる「放送設備」のカテゴリーでは、
多数のスピーカーを接続し、
建物全体に配置出来る「ハイインピーダンス方式」が主流となっています。

ローインピーダンス方式は、イベントステージなど、
音質を重視する環境で用いられることが多く、
建築物の設計においては採用実績があまりありません。

ハイインピーダンス方式

ハイインピーダンス方式は、1台のアンプに対してスピーカーを
数十台から数百台接続出来る配線方式です。
アンプとスピーカーの距離が長い場合にも適しています。

アンプの出力電圧は、アンプ固有の定格出力値に関わらず
一定電圧〔Vrms〕となるように設計された方式で、
同じ電力を送出するのに必要な電流値を少なく設計出来、
多数のスピーカーが接続出来るという利点があります。

配線の延長によるロスが少ないため、
長距離配線が可能で、接続台数や結線方法の変更にも対応が容易です。

 

消防法に規定されている非常放送設備として運用する場合、
ハイインピーダンス方式が義務付けられています。
建築物の電気設備として運用する場合、
ハイインピーダンス方式による放送設備が設置されます。

ハイインピーダンス方式は多数のスピーカーを設置出来るという利点が活かされていますが、
トランスを経由して伝送する方式であるため、
再生帯域が狭く、音質が劣化し、高品質な音源ソースを流すような用途には適していません。

ハイインピーダンス対応のスピーカーをローインピーダンス端子に接続すると、
インピーダンス値が大きいため、
電流が流れずスピーカーから音が発生しません。
アンプの出力を大きくして無理に音を出そうとしても、
増幅によって音が歪むだけでスピーカーから音はほとんど出ず、放送として成立しません。

インピーダンス側が大きいため、ヒューズが溶断するような大電流が流れることはありません。

ローインピーダンス方式

ローインピーダンス方式は帯域が広く、高品質な再生に適した方式です。
1台のアンプにスピーカーを1台~2台、または4台程度まで接続出来ますが、
ハイインピーダンス方式と比べてインピーダンス値が著しく少ないため、
イベントステージなど限られた範囲内での計画に限って採用されます。

1台のスピーカーを接続する場合、
ローインピーダンス方式であれば極めて単純な配線計画で済みますが、
多数のスピーカーをローインピーダンス方式で接続する場合、
インピーダンスの整合が難しく、配線系統が複雑になります。

長距離の配線敷設は不可能で、長くても20m程度の延長が限界とされています。

 

狙った範囲だけをカバーする「ワンボックススピーカー」、
残響が長い空間においてボーカル音声を放送するのに適している「ラインアレイスピーカー」、近距離に広く放送するのに適している「公指向性スピーカー」など、
スピーカーに多くの種類があるため、用途に応じて選定し配置しなければなりません。

ローインピーダンス対応のスピーカーをハイインピーダンス端子に接続すると、
インピーダンス値が小さいため、大きな電流が流れるので極めて大きな出力が発生し、
スピーカーから爆発的な大音量が流れてしまいます。
スピーカーのコイルを焼損させたり、
アンプが過負荷となりヒューズ溶断など安全装置が働く恐れがあります。

ヒューズ溶断の不良原因で、
アンプの内部回路が大電流によって破壊されてしまい大変危険です。
十分な注意が必要です。

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