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『下町ロケット』会社支配 大塚家具
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 |
『下町ロケット』会社支配 大塚家具
0 始めに
『下町ロケット』(小学館)という小説を知っていますか?
池井戸潤氏著、第145回直木三十五賞受賞作品で、
ドラマ化されて話題になりましたから、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
主人公が家業の町工場を継ぎ、国産宇宙ロケット等の開発に奮闘するという内容です。
その中にも出てきましたが、
特許等の知的財産権というのは、本来とても役に立つはずのものです。
逆に、ライバルに特許を上手く利用されてしまうと、大変苦しくなるものでもあります。
そうした話は、お話の中だけではなく、
実際、上手く使えば、中小企業・ベンチャー企業にとって、
有効に利用できるのです。
そんなお話をさせていただければと思います。
1.有効活用方法<商標編1(会社支配編)>
昨年、「大塚家具」で親子による会社支配権の奪い合い
(株主からの委任の奪い合い)がありましたよね。
あれを見て、私は、
「あのお父さんが商標を持っていたら勝負は、勝負の結論も違ったかもしれない」
と思っていました。
つまり、あのケースの場合、
お父さん個人が「大塚家具」で商標を取っていたら、
株主(特に機関投資家)へ、
「もし、私が、株主総会で負けたら、
これまで無料で使用させてきた「大塚家具」という商標を一切使用させません」
と言えたのです。
そう言われたら、「大塚家具」というブランドを重視する株主は、
お父さんに投票するしかなかったかもしれません。
このように、商標権というのは、実は会社支配のための道具になるのです。
会社支配のためならば、
株式や代表取締役として支配すれば良いのではないかと思う方もいるかもしれません。
会社法的には、100点満点ですが、
はたして大株主と代表取締役という地位は、それほど絶対でしょうか?
確かに、会社が本当に小さいうちは、「社長=会社」です。
しかし、会社が大きくなってきたらどうでしょうか?
株式は、いろんな人に譲渡したり、新株を発行してしまうこともあり得ます。
さらに、上場したら50%どころか、30%も持っていない状態になることもあります。
場合によっては、
取締役会が勝手に新株を発行して、持ち株比率を大幅に下げてしまうかもしれません。
さらに、銀行に担保(譲渡担保)として取られてしまう、
信頼していた専務・常務等が、ある日突然裏切って、
社長が解任されてしまうということも想定されます。
以上のように、株式による支配も、取締役による支配も絶対ではないのです。
それに対して、商標権の場合はどうでしょうか。
社長個人で会社名または主力商品名(主力サービス名)を所有していた場合には、
その所有権の力は絶大です。
あなたが、他人に譲渡しないかぎり、あなたのものです。
会社支配の最後の隠し玉として、商標を取っておいて損はないのです。
そして、それは会社の従業員のためにもなるのです。