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クーリングタワー|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

クーリングタワー

冷却塔(クーリングタワー)は冷凍機には欠かせないパートナーです。
そして、大型の商業施設になると、それなりに大きな冷却塔になります。
ですから清掃もそれなりに大変になります。

今回は冷却塔(クーリングタワー)の仕組みと、その清掃方法をご紹介しましょう。

冷却塔は冷凍機に欠かせないパートナー

自然界の滝のミストシャワーには周囲の温度を下げる効果があります。

冷却塔(クーリングタワー)が冷却する仕組みは、
外気の通風と水の蒸発による放熱を利用するものなので、
自然界の滝の冷却効果と似たようなものです。

圧縮式や吸収式の冷凍機で熱交換されて熱を帯びた冷却水を
その都度捨ててしまうのは不経済です。
再び冷やしてあげれば冷却水として再利用することが出来ます。

冷却塔の役割は、熱を帯びた冷却水を再び冷やし、
冷凍機で必要とされる一定温度の冷却水を維持することなので、
冷却塔は冷凍機には欠かせない良きパートナーと言えます。

冷却塔の種類

冷却塔の形としては丸型(小型の商業施設に多い)や
角型(大型の商業施設は、ほとんどそう)などがありますが、
冷却方法の違いから冷却塔を分類すると、
「開放式冷却塔」と「密閉式冷却塔」に分けられます。

開放式冷却塔とは

外気と冷却水を直接触れさせることで冷却効果を得るタイプで
「向流型」と「直交流型」が2種類あります。

向流型はカウンターフロー方式ともいわれ、
上から落ちる冷却水に対して下から外気を当てるタイプの冷却塔です。
直交流型はクロスフロー方式ともいわれ、
上から落ちる冷却水に対して直角方向から外気を当てるタイプの冷却塔です。

開放式冷却塔(向流型)
冷却水と外気が直接触れる構造になっているのが特徴です。
構造上、いくつか注意すべき点もあります。

大気中の浮遊物や有害物質を冷却水に入り込みやすい構造とも言えます。

浮遊物や有害物質を取り込んで冷却水が濃縮すると、冷却水の水質が悪化して
管を腐食させる、詰まらせるなどの原因にもなるので、
定期的に給水して冷却水を綺麗に保つようにしなければなりません。

また、蒸発や送風によって冷却水が失われることをキャリーオーバーと言いますが、
だいたい全体の水量の1~2%程度は、キャリーオーバーで失われます。

ですからキャリーオーバーや水質の悪化を見込んで冷却水の補給が必要です。
設置位置は、風通しの良い屋上などが適していますが、
ファンや散水音といった、騒音や強風で周囲に冷却水が飛散することも考えられるので、
風向きには注意が必要ですし、近隣との間に十分な離隔距離を確保することも肝心です。

離隔を確保出来ない場合は、防音や飛散防止の壁が必要になるケースもあります。

密閉式冷却塔
密閉された管の中に冷却水を通して、冷却用の散布水と管内の冷却水を
熱交換させて冷却水を冷やすタイプの冷却塔です。

冷却水が直接外気に触れない構造上、
開放式に比べると冷却水については衛生的と言えます。

冷却塔は衛生管理を怠ると危険

開放式、密閉式に限らず、冷却塔は法的(建築物衛生法)にも
定期的に清掃するなどの衛生管理が義務付けられています。

その理由の一つとして、レジオネラ菌の問題があるからです。

レジオネラ菌は、自然界の土壌や沼などに生息する菌ですが、
土埃などを介して冷却塔内部に入り込むおそれがあります。

菌の増殖に最適な水温は37~41℃程度とされていますが、
特に夏は冷却塔内部がレジオネラ菌の増殖しやすい温度域になるので、
衛生管理を怠ると、冷却塔が菌の温床になる危険性もあります。

冷却塔内で増殖した菌が、水しぶきとなって
周りにばら撒かれるようなことがあっては大問題です。
人がレジオネラ菌を吸い込むなどで感染すると、
レジオネラ肺炎やポンティアック熱などを発症して死亡するケースもあります。

以上のような理由から、
冷却塔は定期清掃や殺菌の為の薬剤投与などの適切な衛生管理が義務付けられています。

また、万が一に備えて近隣住居の窓や空調の外気取入口などとは
冷却塔は10m以上離すなどのルールもあります。

冷却塔・冷却水の水管の清掃と管理

一般的に普及している開放式冷却塔は、
熱源機器の冷却水を直接外気にさらすことにより放熱する役割を担っています。

冷却塔や冷却水の水管内のヌメリ状のバイオフィルム(生物膜)が発生しやすい箇所があり、
レジオネラ属菌の好適な繫殖場所となってしまいます。
レジオネラ症防止のためには、冷却塔や冷却水の水管の適切な清掃と維持管理が必要です。

冷却塔と水管の清掃方法

建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則では
「冷却塔、冷却水の水管(中略)の清掃を、それぞれ一年以内ごとに一回、定期的に行うこと。」
と定められています。

冷却塔の清掃

〇冷却塔の清掃:付着したスケールや生物膜を除去し洗い流します。
 一般的な方法は以下の通りです。

  • 冷却水の循環を停止した後、冷却塔下部水槽の水を排出する。
  • 冷却塔内部の汚れはデッキブラシ等を用いて洗い流す。
  • 充填材(冷却板)の汚れは、高圧ジェット洗浄で落とす。
  • 洗浄により下部水槽に溜まった汚れは、冷却塔の排水口から排出し、
    冷却水系に混入しないようにする。
  • 冷却塔内部をよくすすいだ後、清水を張り運転を再開する。
    清掃に際しては、作業員の安全確保のため、
    保護マスク、保護メガネ、ゴム手袋等を着用させる。

※注意
 充填材は破損しやすいため、劣化進行し高圧ジェット洗浄が不可能な場合には
 取り換えの検討が必要です。

〇冷却水の水管の清掃:化学的洗浄方法を用います。

冷却水系を化学的に殺菌洗浄するには、冷却塔ファン及びブローを停止した後、
過酸化水素、塩素剤、又は有機系殺菌剤などの薬剤を循環させます。
用いる薬剤により以降の工程は異なりますが、最終的に洗浄水を全ブローして清水を張ります。

循環させた冷却水の汚れが激しい場合には循環を繰り返します。
なお、腐食性の強い薬剤を使用する場合は、
系内の金属素材の腐食防止に十分配慮する必要があります。

※注意
 冷却水の水管は高圧洗浄のような物理的洗浄を実施できる構造にはなっていません。
 物理的洗浄を行うには分解する必要が生じます。

レジオネラ属菌に対する薬剤は目的に応じて様々な種類がありますが、
洗浄効果が確認されている薬剤を使用してください。

冷却塔と水管の管理

冷却塔清掃後には次に挙げる措置についても実施してください。

〇冷却水が井水や雨水等の場合は、年に1回の水質検査を行ってください。

〇冷却塔の運転中は、洗浄殺菌効果を維持するために
 殺菌剤や水処理剤(スケール防止剤、スライム防止剤等)を継続的に使用してください。

〇冷却塔水のレジオネラ属菌検査を年に1回実施し、
 100CFU/100ml以上検出されないことを確認してください。
 検出された場合は清掃・消毒等の対策を講じ、
 再度検査をして検出限界以下(100CFU/100ml未満)
 となることを確認してください。

冷却塔の仕組みと、その清掃方法でした。

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