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蓄電池|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

蓄電池

2019年、ノーベル化学賞の栄誉に輝いた旭化成名誉フェローの吉野彰(よしのあきら)氏。ご存知の通り、リチウムイオン電池“開発の父”と呼ばれる人です。

日々の移動手段として欠かせない電車。
首都圏を走る電車の床下には、リチウムイオン電池が搭載されて事をご存知でしょうか。
リチウムイオン電池は、大規模停電が発生した際、
車両を最寄り駅まで走行させることを目的に搭載されています。

今やリチウムイオン電池は我々の生活において、切っても切り離せない存在となっています。
例えば、スマートフォン。
長時間時間使用するモバイル機器にはリチウムイオン電池が、
使われているといっても過言ではありません。

そして蓄電池設備のおいてもリチウムイオン電池が欠かせない存在になっています。

そこで今回は家庭用蓄電池についてご紹介させていただきます。

家庭用蓄電池とは?

二次電池や充電式電池とも呼ばれる、
電気を蓄えて繰り返し使える化学電池の全てを蓄電池と呼びます。

元来、電気は発電するよりも蓄えることが難しいとされており、もちろんそれは、
太陽光発電の電気においても同様でした。

しかし東日本大震災を契機に、
災害時の停電や電力不足時の非常用電源として電気を蓄えることの出来る
「蓄電池」に注目が集まる事となりました。

他方では、ゼロエネルギー住宅の一つとして住宅業界では
「スマートハウス」の導入が叫ばれるようになり、
ここでも電気の自給自足を効率化出来る大容量の蓄電池システムに関心が高まっています。

家庭用蓄電池は災害時のバックアップ電源にとどまらず、
今や住まいのゼロエネルギー化を推し進めるための
重要な電源装置としても認知が進んできています。

実際、世界的な蓄電池の市場は2025年に2、407億円規模になるとの見方もあり、
市場規模は2015年対比で5倍にまでに膨らむとの予測もあります。

特に日本ではFIT制度の買取期間が2019年11月に終了しました。
これを「2019年問題」「卒FIT」と呼んでいますが、
そうした方の多くが蓄電池の導入で「電力の自給自足=自家消費」へ
シフトすることが見込まれています。

こうしたことから日本においても家庭用蓄電池の需要は増加の一途をたどっています。

では、なぜわざわざ家庭用と付いているのでしょう?

蓄電池はその容量によってどれくらいの電気を蓄えることが出来るのかが異なってきます。
また、容量が大きくなるにつれ本体も大きく、価格も高額になります。

多くのメーカーから蓄電池が販売されていますが、
ほとんどのものが15KWh以下の物と考えて差し支えないでしょう。

これより大型の物は設置スペース・金額からも家庭に導入するのは現実的ではないため、
15KWhより大型の物は産業用、それ以下を家庭用として考えてもらえば良いかと思います。

家庭用蓄電池の種類

家庭用蓄電池として使われている蓄電池には、
大きく分けると定置式蓄電池と移動式蓄電池に分かれます。

定置式蓄電池

定置式蓄電池とは据え置き型の蓄電池のことで、
移動式蓄電池とは違って所定のスペースを確保した上で蓄電池を設置します。

また定置式蓄電池は災害時の非常時にもバックアップ電源としても勿論使えますが、
本来の目的は電気料金を削減し、また生活で使用する電力を
極力創エネで賄えることを前提にした“創エネ機器”としての役割を持たせています。
そのため“スマートハウス”に無くてはならない“創エネ機器”が定置式蓄電池と言えます。

“創エネ機器”としての役割がある定置式蓄電池は、当然ながら容量に余裕があるものが多く、
家庭用蓄電池でも6.6KWhや7.8KWh(またはそれ以上)といった
大容量のものが多くなります。

また電池の種類には色々ありますが、主に使われているのが
急速充電出来るリチウムイオン電池です。

現在流通している定置式蓄電池は、ほとんどの機種でリチウムイオン電池が採用されています。
一般的に定置式蓄電池が高価なのは容量もありますが、
リチウムイオン電池が採用されているからだともいえます。

移動式蓄電池

移動式蓄電池とは、読んで字のごとく“ポータブル式”蓄電池ともいわれており、
用途としては「非常用」あるいは「緊急時の一時利用」として使われています。
東日本大震災時にいち早くテレビ等で取り上げられたのも、
大型のスーツケースのような移動式蓄電池だったことを覚えている方も多いことでしょう。

ただ、移動式蓄電池は災害時の非常用途としては適していますが、
日常的に使う蓄電池としては容量の不足感は否めません。
ハウスメーカーが推し進めているスマートハウスには、
移動式蓄電池ではなく定置式蓄電池を揃える必要があるでしょう。

移動式蓄電池は災害時の非常時に使う前提で製造されていますから、
何より低価格であることが求められます(といっても数十万円はします!)。
ただ最近ではより軽量な移動式蓄電池や、
複数台接続することで容量の拡大が出来る物も登場しており、
移動式蓄電池のバリエーションも確実に広がっています。

 

家庭用蓄電池を設置するメリット・デメリット

家庭用蓄電池5つのメリット

  • 災害時に電気が使える

大規模な地震などの災害時、広域にわたって停電が発生した場合でも、
家庭用蓄電池があれば緊急時には充電しておいた電力を十分に活用出来ます。
このことは、やはり一番のメリットではないでしょうか。

  • ピークカットによる基本電気料金削減

家庭用蓄電池の導入により、ほとんどの家庭では電力契約に実量制を選ぶことになるでしょう。そうなると、蓄電池を用いて負荷電力を平準化する(ピークカットする)ことで、
電気料金を削減できるでしょう。

  • 料金の安い深夜電力を充電、昼間に利用(放電)することで電気料金削減

また時間帯別の電力契約を選ぶことで、家庭用蓄電池は料金の安い深夜電力で充電し、
日中に放電出来るので、電気料金を確実に抑えられます。

  • 太陽光発電との併用でエコロジカル

以上のことは家庭用蓄電池単体でも可能ですが、
太陽光発電を連携することで更に電気料金を削減出来ます。
(ただしイニシャルコストについて、元が取れるということではありません)

  • FITが終了した家庭で、蓄電池の導入はよりエコロジカルな選択になり得る

FITが終了し売電が出来なくなり、家庭用蓄電池などの「創エネ機器」は
エコロジカルな選択になり得る可能性を、今後十分秘めています。

2019年11月に、余剰太陽光発電の買取制度が終了になりました。
これを世間では「2019年問題」や「卒FIT」と呼んでいますが、
卒FIT後も蓄電池を併用した自家消費でも大きく電気料金の削減を見込めるでしょう。

蓄電器のメリット

家庭用蓄電池のデメリットと注意点

①コスト負担

一定以上の容量を求めた場合、定置式蓄電池を選択することになりますが、
そうなると家庭用蓄電池の導入には
少なくとも160万円くらいのコストを覚悟しなければならず、
現状ではとても元を取れるものではありません。経済性とエコロジーは常に矛盾します。
蓄電池に限ったことではありませんが、このことは理解しておく必要があるでしょう。

②家庭用蓄電池単体での補助金制度は将来的に縮小?

2018年度は蓄電池単体の補助金は予算化されず、
ZEH(ゼッチ:ネットゼロエネルギーハウス)関連の補助事業として
家庭用蓄電池も補助対象となっていました。

2019年度は国からの補助金として「SH/環境共創イニシアチブ」から
「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業化補助金」として
38.5億円が予算化され、導入件数15000件程度に交付されると見込まれています。

③寿命があるため永遠には使えない

家庭用蓄電池には寿命があり、およそ10年(4000サイクル)で
蓄えることの出来る電気が元の容量の7割から9割程度まで減少すると言われています。

④設置スペースを事前に考慮しなければならない

定置式蓄電池を選ぶと、それなりのスペースが必要となります。
特に敷地に余裕のない都市部では、設置スペースを事前に考慮しておくほうが無難です。

また、蓄電池は容量によって重量も増加するため、
屋外設置では基礎工事が必要になることもあり、工事費用が高くなることもあります。

ダブル発電になると売電単価下がる

注意点と言った方が良いかもしれません。

家庭用蓄電池はいわゆる“ダブル発電”になると通常より売電単価が下がります。
ダブル発電とは簡単に言うと、家庭用蓄電池などの創エネ機器を導入することで
太陽光発電の売電量が“押し上げられる”ことを言います。

つまり純粋な太陽光発電のみで作られた電気ではなく、創エネ機器
(蓄電池の他にもエネフォームやエコウィルなどを含む)で作られた電気も売電するため、
電力会社からすれば“電気ロンダリング”に当たると解釈出来ます。

現在では太陽光発電と連携した家庭用蓄電池は、
電気ロンダリングが出来ないようになっているか、
余剰電力分を売電し始めると蓄電池からの放電はストップし、
蓄電池の電力は売電に回らないように作動するものもあります
(押し上げ効果なし、“シングル発電”とも言う)

いずれにしても、ダブル発電を「選択する・しない」はユーザーの任意です。
ただし、ダブル発電を選択すると、
通常よりも売電単価が下がることだけは押さえておく必要があります。

この3年間、日本各地を様々な災害が襲いました。
その中でも豪雨や台風・地震による大規模停電は皆さんの記憶に新しいものではないかと思います。
こうした災害時の非常用電源として活用できるのは非常に大きなメリットであると言えます。

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