特許の共有(特許を受ける権利の共有)とは?(出願時に2人以上(複数人)での出願、又は、その後の譲渡により発生)・メリット・デメリット
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
特許の共有(特許を受ける権利の共有)とは?(出願時に2人以上(複数人)での出願、又は、その後の譲渡により発生)・メリット・デメリット
共有状態が発生する場合とは
共有状態が発生するには、大きく分けて2つの場合があり得ます。
① 出願時に2人以上(複数人)が出願人となって出願した場合
② 出願中又は特許成立後に、特許権の全部ではなく一部を譲渡した場合
です。
その他にもあり得ますが、例外的な事例なので、省略します。
(個人の出願人で複数の臓側人がいる場合など)
この共有となった場合にどうなるのかを、以下説明します。
なお、弁理士試験向けにはこの共有という部分大変細かく、出るところなのですが、
それ向けには書いていません。
あくまで、一般的な個人・中小企業様向けに書いております。
そのため、わかりやすくするために省略等をしております。
共有状態は止めた方がいい
共有状態となった場合にどのようなデメリットがあるのか(メリットがあるのか)は、
後段で説明いたしますが、結論として
できるだけ共有状態としない方がいい
というのが結論です。
メリット
以下、まずはメリット等について記載します。
メリット1(費用面)
メリットとして思いつくのは、出願費用とその後の手続き費用を折半等できるということです。
確かに、特許出願とその後の手続き費用は高額です。
(出願から登録まで、80万程度は普通にかかります。)
ただ、この費用が出せないというだけで、特許出願を複数人でするのは、問題であると思います。
もし、その費用が出せないという場合は、正直、その発明がお金になるかわからない可能性が高い場合ですので、
出願自体をよく考えた方がいい場合も多いです。
メリット2(協力体制)
共有としたい相手と協力体制となる場合には良いかもしれません。
相手が、その製品を売ってくれるとかの場合です。
若しくは、アライアンスの強化(共同体制の強化)になり場合はよいと思います。
メリット3?仕方なし
メリットではないですが、開発時からいろいろ協力してもらっているなどして、
今更、こちら単独で出すとは言えない場合や、
相手も発明者でこちらで単独で出すことを承諾してもらえない場合、
等の時には、共有しないとならないかもしれません。
デメリット
デメリット1(相手に無許可で100%実施される)
デメリットで最大のものは、共有者は他の共有の同意を得ずに、100%実施できるということです。
例えばですが、こちらは99%の持ち分、で相手は、1%しか持ち分が無くても、
相手は、好き勝手にその発明を実施できるのです。
(譲渡の際に1%だけを譲渡するとすることも、契約書などで書けば簡単に可能です。)
そして、相手は製造能力が無くても、例えば、製造委託を他の会社にして全量を納品させる等すれば、
工場などが無くても、いくらでも生産能力を拡大できます。
その結果、相手の方が販売能力が高ければ、1%しかもっていない相手が、
売上と利益の99%を上げるということも可能です。
(なお、契約で、上記の事態とならないように縛ることは可能です。)
デメリット2(審判請求等の際に相手の同意がいる)
特許の取得の際に多くの場合(95%)、拒絶理由通知が来ます。
その拒絶理由通知への対応は、共有者がいても単独で法律的には好き勝手対応できます。
つまり協力を得られなくても権利化することが出来ることになります。
しかし、担当弁理士としては、他の共有者の同意なく一定の対応をすることについては、
できるだけやりたがりません。
もちろん、多くの場合には、協力が得られるから問題がないと思いますが、
例えば、それまでに関係が悪化しており、何らかのダメージを与えてやろうとまで思った場合には、
対応が難しくなります。
拒絶理由通知の段階では、最悪、無視して対応してしまえばいいのですが、
例えば、拒絶査定不服審判、異議申立への対応、無効審判への対応の時には、
共有者全員の同意が必要です。
そのような際には、ダメージを与えようとまでの意思はなくても、協力がなくては、
何もできなくなってしまうのです。
デメリット3(実施権設定、質権設定、譲渡ができない。)
特許権が共有されている場合、前述のように自分自身が実施する場合には何ら制限がありません。
しかし、自身だけでは十分な製造販売が出来ない場合には、実施権の設定をしたい場合があり得ます。
そのようなことは、相手の同意がないとできなくなってしまいます。
また、相手の同意がないと質権の設定もできません。
さらに、相手の同意がないと譲渡もできなくなってしまいます。
相手が、たとえ1%しか持っておらず、こちらが99%であってもです。
かなり、財産的な観点から見ると、1%でも持っている共有者がいると、財産的な価値は大変に減少することになります。
デメリット4(改良発明)
特許の出願は多くの場合、1件だけ出願すれば終わりではありません。
多くの場合、特許は改良発明が次々出てくることが多いです。
改良発明は、より確実に発明を守るためには必須の行為でもあります。
そのような、改良発明は多くの場合、共有者のどちらか一方だけから出ることが多いです。
そのような時に、あなた側が発明したのに、次の発明も
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