優先権と優先権が過ぎた後の対応(国内優先権、パリ優先権、PCT)
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
優先権と優先権が過ぎた後の対応(国内優先権、パリ優先権、PCT)
ー出願時には特に、「ダイレクトPCT」部分を検討ください。ー
優先権とは?(=英語でpriority)
優先権とは、先の出願(「優先権の基となる出願」とも言います。)から1年以内に、
新たな出願(「優先権を主張した出願」)をした場合、
その新たな出願の中での先の出願で記載されていた発明については、
「先の出願日に出願していた」という取り扱いを受けることができることを言います。
まあ、用途としては
① 先の出願時には出願を急いでいたので、不十分な部分があり、
その部分も包括的に出願するというのが、一番メジャーな使い方な気がします。
(このような用途に使われる場合として用意されているのが、
国内優先権といわれる制度です。)
それに対して、外国関係の場合、このような用途だけでなく、
それ以上に、重要かつ根源的な用途は
② 第1国において出願ずみの発明(申請)を、他の国にも入れることに使います。
優先期間
しつこいようですが、優先期間は1年間です。
そのため、この一年の間に、出願したい各国に出願する必要があります。
特殊な場合を除き、現地の言語に翻訳して出願する必要があります。
期間は1年間ありますが、実質は10カ月ぐらいで、その国に出すことを
決定いただく必要があります。
ですから時間的猶予は、実は、10カ月ぐらいしかないのです。
優先権の効果
優先権が有効な場合、特許の成立を決定づける、
新規性、進歩性の判断基準が、先の出願日までさかのぼることができます。
そのため、先の出願の後に、公開(売ってしまう、メディアに出す、発明を説明する)
などがあっても、その点は大丈夫です。
ただ、当然ですが、先の出願の前に、その発明が誰か(自分を含む)によって、
公開等されていると特許になりません。
新規性喪失の例外という別の手続きが必要です。
先の出願(日本)→ 公開(販売)→ 優先権を主張して出願(アメリカ)
となってもオッケーです。
優先権とPCT
日本の出願から1年以内に、
この日本の出願を使って優先権を主張してPCT出願することも可能です。
そうすれば、前述してきた優先権の効果によって、
日本の出願日に、全世界へ仮出願(PCT)したのと同じ効果が得られます。
ただ、このようなことをする場合は、
当初、たいして売れないと思って、とか、
お金が無かった、などの事情で、
外国を全く考えていなかった時に使用されるのです。
もし、最初から外国も視野に入れてということであれば、
優先権など利用せずに、最初から、PCT出願すべきです。
その方が、日本出願で費用をかけないで済むため、
合理的だと思います。
このような、日本に出願しないで直接PCT出願することを
ダイレクトPCTと植村は名前を付けています。
ダイレクトPCT
PCTとするメリットは
PCT出願(国際特許申請)をするか否か:費用と判断基準に記載しております。
PCT(特許協力条約)の流れ(フロー)はこちらに記載しております。
費用的には、当然、日本出願後にPCTを出願するよりも、
ダイレクトPCTの方が安いです。
30カ月考えられる
先ほど記載しましたが、
10カ月で海外出願するか否か決定するのって、
かなり難しくないですか?
もし、10カ月ほどでそんなことができるなら、
日本出願の時に、できたのではないでしょうか?
というわけで、日本出願→PCT出願というのは、実はあまり現実的ではないのです。
そのため、もし国外を考えられるのであれば、
ダイレクトPCTをしたほうがいいと弊所では判断しております。
そして、ダイレクトPCTをした場合には
(日本→ダイレクトPCTの場合でも同じですが)
30カ月(2年半)の間、
外国に出すのか否か検討することができます。
それでも十分ではないですが、10月よりもかなり多いのではないでしょうか。
優先期間を経過したらもうだめなのか?
たまに、というか結構多いのですが、
優先期間の1年を経過して、先の特許の内容にプラスして出したい!
というご要望をいただくことがあります。
優先期間は経過してしまっており、後から取り戻すことはできません。
しかし、あきらめることは無いです。
確かに、優先権は使用できませんが、先の出願は、まだ公開されていないはずです。
もし、先の出願が公開されてしまうと、その先の出願に書かれていたこと
及び、そこから進歩性が無い部分まで全て登録できなくなってしまいます。
しかし、まだ公開されていないのであれば、この心配はありません。
そのため、先の出願が公開される、先の出願の出願日から1年6月以内に、
新しい出願ができれば、確かに優先権は使えませんが、
まだまだ、登録できる可能性があるのです。
よって、まだあきらめる時ではないのです。
関連ページ
©弁理士 植村総合事務所 所長弁理士 元審査官 植村貴昭