遊技機のパテントプール団体
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
遊技機のパテントプール団体
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1,遊技機のパテントプール団体の設立
(1)昭和34年設立、平成11年解散 (株)日本遊技機特許運営連盟(パチンコ、以下日特連と略す)
(2)平成5年10月設立 日本電動式遊技機特許株式会社(パチスロ、以下日電特許と略す)
(3)平成20年3月3日設立 一般社団法人日本遊技機特許協会(パチンコ、以下日本遊技機特許協会と略す)
(4)平成25年2月26日設立 日本パチスロ特許株式会社(パチスロ、以下PS特許と略す)
現存する遊技機のパテントプール団体としては、パチスロの日電特許が最古参であり、新興のPS特許については、日電特許に対抗する形で設立されております。
2,パテントプール団体の参加企業・組織
(1)日特連
解散しましたが、以前は殆どのパチンコメーカーが参加していました。
(2)日電特許
(参加企業):アイジーティージャパン株式会社、株式会社アクロス、株式会社アムテックス、株式会社EXCITE、株式会社エレコ、株式会社エンターライズ、株式会社オーイズミ、株式会社オーゼキ、岡崎産業株式会社、株式会社オッケー.、株式会社オリンピア、カルミナ株式会社、株式会社北電子、京楽産業.株式会社、株式会社銀座、株式会社クロスアルファ、KPE株式会社、株式会社コナミアミューズメント、サミー株式会社、株式会社サボハニ、株式会社サンスリー、株式会社サンセイアールアンドディ、株式会社三洋物産、株式会社JFJ、株式会社ジェイピーエス、株式会社スパイキー、セブンリーグ株式会社、株式会社ソフィア、株式会社大一商会、株式会社大都技研、株式会社タイヨー、タイヨーエレック株式会社、株式会社高尾、DAXEL株式会社、株式会社竹屋、株式会社ディ・ライト、株式会社七匠、株式会社ニューギン、ネット株式会社、株式会社パイオニア、ハイライツ・エンタテインメント株式会社、株式会社パオン・ディーピー、株式会社バルテック、藤興株式会社、株式会社藤商事、株式会社平和、ベルコ株式会社、株式会社ボーダー、株式会社ミズホ、株式会社メーシー、株式会社ヤーマ、山佐株式会社、山佐ネクスト株式会社、株式会社ユニバーサルエンターテインメント、株式会社ユニバーサルブロス、株式会社ロデオ
(3)日本遊技機特許協会
(正会員):株式会社アムテックス、株式会社A-gon、株式会社エース電研、株式会社EXCITE、株式会社オッケー.、京楽産業.株式会社、株式会社銀座、株式会社コナミアミューズメント、サミー株式会社、株式会社SANKYO、株式会社サンスリー、株式会社サンセイアールアンドディ、株式会社三洋物産、株式会社JFJ、株式会社ジェイビー、株式会社ソフィア、株式会社大一商会、株式会社大都技研、タイヨーエレック株式会社、株式会社大和製作所、株式会社高尾、株式会社竹屋、株式会社ディ・ライト、豊丸産業株式会社、株式会社七匠、株式会社ニューギン、株式会社ビスティ、株式会社藤商事、株式会社平和、ベルコ株式会社、マルホン工業株式会社、株式会社ミズホ、株式会社メーシー
(準会員):株式会社ユニバーサルエンターテインメント
(特別会員):公益財団法人日工組社会安全研究財団
(4)PS特許
(発起人):株式会社SANKYO、株式会社ユニバーサルエンターテインメント、株式会社大一商会、株式会社三洋物産、株式会社ソフィア、株式会社藤商事、株式会社ニューギン、京楽産業.株式会社
(会員):全ての会員については非公表
3,パテントプール団体の詳細
(1)日特連
パチンコの特許を扱っていました。複数のパチンコメーカーにより昭和34年設立、平成9年に公正取引委員会から、メーカー間の競争を制限し、新規参入を妨害しているなどの理由により排除勧告(パチンコ機製造特許プール事件、公取委 平成9年8月6日審決)を受け、平成11年解散しました。
(2)日電特許
現在、パチスロの特許を扱っています。日電特許には、株式会社SANKYO(以下SANKYOと略す)及びその系列会社(株式会社ビスティ)を除くパチスロメーカーの殆どが参加しています。
過去に、特許を利用するために日電特許に参加したい企業は、まず日電協(日本電動式遊技機工業協同組合、パチスロメーカーで構成する組合)に加盟しないといけないというルールがありました。
しかしながら、平成9年のパチンコ機製造特許プール事件により、組合会員でなくとも、特許の許諾をするようになりました。但し、非組合会員が特許の許諾には、手続き、金額などで困難が多くなっています。
その後、アルゼ(現、株式会社ユニバーサルエンターテインメント)は、日電特許を脱退し、サミー社製パチスロ機「ホクトノケン」が特許第3708056号を侵害しているとして、サミー株式会社(以下サミーと略す)に対し平成17年12月に損害賠償請求を提起する(後に特許第3708056号の無効が確定)。
このような訴訟により、パチスロ業界では、日電特許に特許を提供する以外の目的として、日電特許に加盟しない団体、個人からの訴訟の防衛を目的として出願を行うようになりました。
株式会社ユニバーサルエンターテインメント(以下ユニバーサルと略す)は、サミーとの訴訟後、日電特許に復帰することになりますが、平成27年3月末に再度脱退することになりました。この後、平成27年12月9日、日電特許とユニバーサルエンターテインメント、メーシーとの訴訟が和解することになりました。 これにより、平成28年4月1日から、ユニバーサルエンターテインメントとグループ会社の計6社が日電特許のパテントプールに参加することとになりました。
以後、日電特許については、安定した運営が行われているものと考えられます。
(3)日本遊技機特許協会
現在、パチンコの特許を扱っています。平成11年の日特連の解散以降、パチンコ機の製造にあたって必要な特許の使用が各社ごとの個別交渉で行われ、開発の自由度が失われていました。
また、前述の平成17年12月のアルゼの訴訟により、パチンコ業界においてもパテントトラブル防止の機運が高まります。そして平成20年3月3日、日本遊技機特許協会が設立されることになりました。
日本遊技機特許協会の会員は、協会で定める利用料を支払い、協会に集積された全特許権等が利用可能になります。協会は、会員が有するパチンコ遊技機に関する特許権等の集積し、パチンコ遊技機に関する特許権等の評価請求を行います。そして協会は、会員に対して、評価結果及び利用度に基づいた対価、及び集積された権利に対する対価を払います。
この場合の評価としては、会員Aの特許が会員A以外の大手メーカーの代表機種(海物語シリーズ、エヴァシリーズ、北斗の拳シリーズ、ルパンシリーズ等)にどの程度特許が使用されているかを基準とします。この評価の合計が高い会員ほど高い対価が支払われることになります(シェアシステム)。
このようなシェアシステムのため、評価の高い特許は、高い価値を持ち、大手メーカーからは、多数の特許が出願されることになります。
パチンコ業界は、特許のトラブルが少ないのにもかかわらず、パチスロに比べて多数の特許が出願するのは、このようなシステムが大きな理由と考えられます。
(4)PS特許
現在、パチスロの特許を扱っています。PS特許は、日電特許に比べて20年遅れて設立されております。
注目点として、ユニバーサルと共にPS特許を立ち上げたSANKYOが日電特許に参加しておりません。これに対し、ユニバーサルは、平成28年4月1日から、日電特許に復帰しております。
従いまして、日電特許のみに加盟しているメーカーは、SANKYO及びその系列会社を除く殆どのメーカーの特許を普通に使用できます。
日電特許とPS特許の両方に加盟しているメーカー(ユニバーサル、大一商会、株式会社三洋物産等)は、SANKYO及びその系列会社を含む殆どのメーカーの特許を普通に使用できます。
PS特許のみに加盟しているSANKYO及びその系列会社は、PS特許に加盟しているメーカーの特許を普通に使用できますが、日電特許のみに加盟しているメーカーの使用は困難であります。
このような状況を考えると、パチスロ特許において、SANKYOが不利な状況であるように見えます。しかしながら、SANKYOのパチスロ出願は、近年、大きく増加しております。また、SANKYOは、パチンこの特許シェアのトップであります。従いまして、パチスロ特許については、近い将来、大きな変動があるかもしれません。
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