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ショート!②|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

ショート!②

高圧回路の短絡保護

電流が流れている電線の内、
2本線が接触することを二相短絡、3本線が短絡することを三相短絡と呼びます。

三相短絡が最も過酷な短絡事故であり、極めて大きな電流が流れ、
直ぐに遮断しなければ大事故につながります。

短絡の原因は多々あり、
鳥獣の侵入による電線同士の接触、端子締付けが緩むことによる電線外れ、
人的ミスによるものなど多岐に渡っています。
鳥獣の侵入を防止するために、キュービクルの密閉性を高めたり、
ケーブル導入口をパテなどで塞ぐといった措置を講ずることは重要な事故防止対策です。

 

人為的ミスでは、断路器での負荷電流開放や、定格遮断電流以上の負荷遮断など、
アークを発生させ三相短絡事故を引き起こす事故や、
電気機器への直撃雷によって機器が焼損し、機器内部で電線が短絡することも考えられます。

短絡電流の大きさは、変圧器から近いほど、電線が太いほど大きくなります。
変圧器に近く電線が太いと、電路のインピーダンスが低くなるため、
短絡電流が増大するのが理由です。
変圧器直近で短絡した場合、短絡電流は変圧器のインピーダンスに大部分が影響し、
20,000Aもの大電流が発生します。

 

高圧受電設備の受電点短絡電流

高圧受電設備の受電点における短絡電流は、
電力会社の配電線の長さに左右されるため、需要家では計算出来ません。

よって電力会社に対し、配電線のインピーダンスを確認してもらい、
三相短絡容量と三相短絡電流を受領して遮断器を選定します。
電力会社に問い合わせを行うことで、配電線の設備容量を計算し、
遮断器の推奨遮断電流が提示されます。

電力会社の変電所が近くない限り、真空遮断器の定格遮断容量は、12.5㎄を選定します。
稀に、20㎄の遮断器選定を推奨されます。

 

限流ヒューズによる個別保護

受電点に設置する真空遮断器は、いくつかの変圧器のバンクを一括して保護しており、
受電点遮断器が動作すると、構内が全停電となります。

高圧電路の事故であっても、出来る限り停電範囲を狭く抑えるため、
変圧器やコンデンサーごとに限流ヒューズを設け、
高圧電路での保護協調を考慮しつつ電路の設計を行います。

限流ヒューズは、電路に短絡事故が発生した場合、
短絡電流が最大値になる前に溶断しアークを消すことで、
電路を安全に遮断出来る優れた特性があります。

この特性により、短絡電流による大きな衝撃や発熱を未然に食い止め、
ケーブルや遮断器への負担を減らすことが可能です。限流ヒューズの種類には、

・T(変圧器用)

・M(電動機用)

・G(一般用)

・C(コンデンサー用)

以上の4種類が有り、それぞれ特性が違います。

Tのヒューズは変圧器用で、励磁突入電流では容易に溶断しないようになっています。

Mのヒューズは電動機の始動電流で切れないように、

Cのヒューズはコンデンサーの突入電流で切れないような特性で作られており、
保護する対象によって使い分ける事で、信頼性を高めています。

Gのヒューズを変圧器・コンデンサーの区別無く使用することも出来るので、
設計時に確認すると良いと思います。ヒューズの種類

短絡電流の計算

 

高圧受変電設備以降の構内配電系統について、短絡電流の計算事例を解説します。

6.6㎸受電設備、3Φ3W6、600V/210Vの変圧器二次側直近の
短絡電流を算出します。
基準容量は10MVA(10,000KVA)受電点%合成インピーダンスは
j10%と仮定します。

受電点の%インピーダンスは、電力会社の送電線や配電線の長さによって算出されるため、
電力会社に問い合わせれば、受電点の数値を受領出来ます。
変電所に近ければ高めの数字、遠ければ低めの数値になります。

推奨される遮断器の定格遮断電流についても、電力会社の設備状況から計算値が受領出来るので、指定数値以上の遮断器を選定するのが原則です。

 

引込ケーブルの%インピーダンス算出計算

引込ケーブルは、ケーブルサイズによって%インピーダンスが変動し、
太いケーブルほど大きな短絡電流が流れます。

受電点に設置したPASやUGSから、
キュービクルまでの間のケーブルサイズのインピーダンスを確認します。

ケーブルのインピーダンスは、採用する電線メーカーによって数値が違うため、
代表メーカーを選定して電路のインピーダンスを確認します。

6.6kvCVT100Sqの特性は下記の通りです。

・%ZR=0.239[Ω/km]

・%ZX=0.0883[Ω/km]

・%Z=0.2548[Ω/km]

電線メーカーの資料では、インピーダンスはが「Ω」で表現されているため、
%インピーダンスに変換して算出を行います。
6.6kvCVT100Sqを100m布設した場合を計算します。

%インピーダンスの変換計算は下記の通りです。

・%Z=Zc×Pa/(Va^2×10)×1/布設数

対象単位を合わせなければ計算出来ないため、
0.2548[Ω/km]をメートル単位にするため、
100m×1/1000=0.1[km]とします。

・Zc=100m×0.2548[Ω/km]/1000=0.2548[Ω]

Paは基準容量です。
10[MVA]ですが、計算上はKVAとしなければならないため、
1000倍してKVAに換算します。

・Pa=10×1000=10000KVA

Vaは基準電圧です。変圧器一次側の計算をしており、6.6kvで計算します。
Va=6.6[kv]とします。以上の数値を、

%Z=Zc×Pa/(Va^2×10)×1/布設数の式に当てはめて計算を行います。

・%Z=0.2548×10000/(6.6^2×10)×1=0.5849%

受電点インピーダンスを電力会社から数値を貰っていれば、
0.5849%と合算して、変圧器一次側のインピーダンスとします。
電力会社から提示された受電点インピーダンスが10%であれば、

10+0.5849=10.5849%とします。
これで、遮断器二次側のインピーダンスを求めます。

ちょっと難しかったですね!次回も又、ちょっと難しい計算式です!

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