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帝国データバンクPart2 第4回 契約書ーどうやって判断するの? 有利不利

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

帝国データバンクPart2

第4回 契約書ーどうやって判断するの? 有利不利

前回は、契約書の甲乙の表記って不要ではというお話をさせていただきました。

今回は、簡単にその契約書の内容が有利か不利かを判断する方法を記載します。
契約書の細かいところまで読み込みたくない経営者・担当者のための内容になります。

もちろんですが、契約書の有利不利は、1つの条項だけでも致命的な条文があれば、
他の条項について全部こちらが有利であってもそれだけで、極めて不利な契約になります。

そのため、本当は全部を見ないと判断できないのですが、
契約書を提示してきた相手の契約書について、
簡単に相手がどこまで自分に有利に書いてきているのか判断できる条項があります。

言い換えるなら、相手がこちらのことも配慮して、
できるだけ公平な契約を結ぼうとしているのか
「誠意」が簡単にチェックできる条項があります。

 

その中で一番簡単な条項は、
通常は契約書の最後又は最後の1つ手前に書いてある裁判管轄の条項です。

この条項の管轄裁判所を見てほしいのです。

その裁判管轄が、被告の住所地ではなく、相手の住所地の裁判所が書いてあるような場合は、
契約書全体について、相手は自分に一方的に有利な契約を結ぼうとしていると、
実は判断していいです。

(なお、専門的には、わざわざ条項に管轄裁判所を記載しておいて、
専属裁判所としない場合はほぼないので、
ここでは、専属裁判所の規定があるとの前提で記載します。)

互いに公平にと思っている相手であれば、
普通は被告の住所地や互いの住所の中央付近の住所の裁判所を指定するはずなのです。

管轄裁判所の所在地と公平

どうして、そうなるのかを説明します。

この管轄の条項は、ざっくり言うと、
この契約に基づいて揉めた時にどこの裁判所で裁判するかを決めた規定なのです。

そのため、ここで決めた以外の裁判所での裁判はできなくなります。
一見すると、どこの裁判所で裁判しても大して変わらないじゃないかと思われると思います。

しかし、裁判所が遠いとその遠い裁判所の近くの弁護士を頼むことになります。
自分でやるにしても交通費がかかります。
たいていはその遠い住所の弁護士など知らないので、新しく頼むことになります。

また、自分の住所地に知っている弁護士がいてお願いする場合であっても、
交通費や日当が余分にかかります。
また、遠い弁護士さんだとどうしても打ち合わせが疎かになりやすいです。

そういった意味で、裁判所が遠いというのはとても大きなデメリットなのです。
(コロナの影響もあり、最近は遠隔でも裁判ができるようになってきましたが、
それでも不利は不利です。)

そのため、この部分を一方的に有利に書いてくるような相手との契約は、
「誠意」がないとして、契約を再検討してもいいと思います。

 

なお、その他にも有利不利が出やすいところとしては、支払いの条項です。
支払いが遅い相手との契約は、再検討してもいいと思います。

さらに、各種条項の後半の方には、この裁判管轄条項以外にも定型の条文が並びます。
(守秘義務、解約、契約期間、解除、債権債務の譲渡、損害賠償、反社会勢力の排除)
ので「甲及び乙」ではなく、
どちらか一方しか書いていない場合などは、全体的に不利な契約である可能性が高いです。
(なお、「甲」「乙」を使わないほうがいいということは、前回書きました。)

なお、こういった契約書についての多くの記事を書いておりますので、
「契約書 ポラリス」で検索してみてください。
「サルでも分かる契約」で弊所ページが出てきます。
是非、参考にしてより良い契約をしてください。

さてさて、今回はこのぐらいにさせていただき、
次回以降も、もうしばらく契約書について記事にしていきたいと思っております。

以上

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