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インバータ|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

インバータ

電子制御により電圧や電流、周波数などをコントロールする装置です。インバータは工業用として極めて幅広く普及しており、空調機の制御、蛍光灯の点灯などで使用されています。

従来の蛍光灯は50Hz~60Hzで点灯する機構の為、高速で移動する物体や飛翔物の見え方にちらつきを生じますが、インバータによって周波数を数万Hzに高めれば肉眼で検出出来なくなり、結果的にちらつきを改善出来ます。

空調機や給水ポンプの分野では、電源周波数と電圧をインバータで変化させ、電動機の回転数を制御して能力調整する「インバーター制御」を組み込み、空調機や給水ポンプの能力の調整を行っています。

誘導電動機は「極数」と「周波数」で回転速度が決定し、50Hz~60Hzの周波数電源においては、極数は2,4,6・・・という偶数単位での速度調整が最小値となります。

段階的にしか速度制御出来ない電動機に対して、電動機制御にインバーターを採用することで、周波数を細かに設定可能となり、回転速度の調整やトルクの無段階調整が出来ます。直接的に全電圧を印加するような単純運転と比べ、運転効率を大きく改善し、かつ省エネルギーを図られます。

インバーターで運転効率UP

インバータで周波数を変えて運転する場合、電圧を維持したまま周波数のみを低下させると、励磁電流が著しく増大し、始動電流が大きくなり発熱も高くなる為、故障の原因となります。周波数を下げて運転する場合、電圧も同様に低下させる必要がある為、注意を要します。

最も効率良く電動機を制御出来る電圧と周波数の特性は「VF特性」と呼ばれ、一般的な制御はVF特性に合わせて一定となるように制御されますが、低周波地域では発生トルクを調整するために、若干電圧を高める微調整が行われています。

インバータによる制御を行うと、電源系統に「高調波」と呼ばれる電流のひずみを発生させます。高調波は通信機器に異常ノイズを発生させたり、コンデンサに異常振動やうなりを発生させる為危険です。パッシブフィルタやアクティブフィルタといった、高調波を打ち消す機構の検討が必要です。

高調波とは

 高調波とは「ひずみ波交流の中に含まれている、基本波の整数倍の周波数を持つ正弦波」と定義されている電流のひずみで、電路や接続機器に悪影響を及ぼす性質があります。基本波の3倍の周波数を第3高調波、5倍の周波数を第5調波と言い、この二つを重点的に確認し、抑制することが高調波対策として有効です。

基本波とは、東日本では50Hz、西日本では60Hzで供給されている電源周波数のことで、これよりも高い周波数を持つ電流は、電動機が異常回転や振動を起こすなど、電気機器に悪影響を及ぼします。

電力会社が維持管理している電力系統では、高圧系統5%、特別高圧系統3%という電圧歪み率を維持しており、需要家が設置する電気機器で電圧が歪まないよう、高調波流出電流が小さくなるよう対策を求められます。

自家用電気工作物を設置し、電力会社より電力供給を受ける際、設置する構内電気設備に高調波が発生する恐れが無いか、計算書の提示を求められます。設計段階では電気機器類のメーカーなどが決定していない為、施工が進み、メーカーが決定した時点で提出するのが基本となります。受電前に提出を行い、電力会社内部での検証を求めると良いでしょう。

高調波の発生原因

高調波の発生原因としては、下記があります。

  • 無停電電源装置(UPS)のサイリスタ整流器やPWMコンバータ
  • エレベーターやエスカレーターのブリッジ回路
  • 電動機や蛍光灯安定器に搭載されているインバータ
  • 変圧器の鉄心から発生する磁気飽和現象によるひずみ波電流
  • アーク炉のアーク電流

単純な電熱負荷や電動機負荷から高調波が発生することはありません。高調波は、整流回路を持つインバータや、サイリスタなどを利用した制御を行う電子機器、電源の交直変換を行うなどした場合に発生します。

蛍光灯の安定器なども高調波が発生する代表的な電気機器ですが、高調波発生機器については「EN規格の高調波電流規制」に高調波発生限界が定められています。

EN規格の高調波電流規制

 高調波電流規制とは、電子機器が発生させる高調波電流を規制する為、クラスA~クラスDに電気機器を分類し、それぞれの高調波発生限界を定めたものです。

クラスAは、平衡三相機器及び他のクラスに属さない全ての機器が対象です。クラスBは手持形電動工具、クラスCは照明器具、クラスDは、特殊電流波形を持つ600W以下の電気機器が該当します。
高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制ガイドラインでは、高圧・特別高圧受電を行う需要家が行うべき高調波対策についてのガイドラインが明記されていますが、適用範囲の中に「日本工業規格JIS C61000-3-2の適用対象となる機器以外の機器」とあります。

電力会社から電力供給を受ける場合の高調波計算書提出においては、EN規格の高調波電流規制に準拠した電気機器を採用している場合、有効に高調波を抑制出来ていることになり、個別に計算する必要がありません。数千台の蛍光灯器具を設置するような大規模商業ビルなどであっても、クラスCに準拠していれば高調波に対しては問題ありません。

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