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フロンガス|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

フロンガス

注射をする時、アルコール綿で腕を拭くと“ヒヤッ”としますが
あれはアルコールが蒸発する時に体の熱を奪っているからです。

液体が気体になる時には、周囲から熱を奪い、
反対に、気体が液体になる時には、周囲に熱を放出します。

冷媒として使われている“フロンガス”は常温では気体ですが、
圧力をかけると液体になり、圧力を下げるとまた気体に戻ります。

エアコンの室内機と室外機をつなぐパイプの中を回っている冷媒は、
暖房時には「液体→気体」となり、外の空気の熱をもらいます。

熱をもらった冷媒は室内機に移動し「気体→液体」となり、熱を部屋の中に送ります。
冷房時には、その逆の働きをしています。
室外機から熱い空気が出ていますが、それは元々部屋にあった熱なのです。

そこで今回は“フロンガス”の説明をしましょう。

フロンガスの歴史と使われなくなった理由

フロンガスと聞いて思い浮かぶのは、「オゾン層の破壊」ではないでしょうか?
ひと昔前までは電化製品で重要な役割を果たしたガスでした。

現在は使われなくなっています。
フロンガスが使われなくなった理由や特性、何に使われてきたのかを見てみましょう。

フロンガスは「フロン」とも呼ばれ、1928年に作られた化学物質です。
燃えにくい分解しにくい人に無害であるなど、優れた性質を持っているガスです。

身近な電化製品に使われた歴史があり、スプレー缶や冷蔵庫、エアコンに使われてきました。
さらにはICチップなどの精密部品を洗浄するなど幅広く使われてきたのです。

しかしながら、フロンガスは地球のオゾン層を壊していることが分かりました。
オゾン層は地上から15~35kmあたりにある数ミリの薄い層で、
太陽が放つ紫外線を遮る役割を果たしています。

人が使っているフロンガスは、分解しにくいという特徴があるので、
空気中に漂い10年以上かけて上昇し、オゾン層を構成している成層圏まで登ると、
太陽の紫外線を受けて分解し塩素を発生させます。

この塩素が触媒となり、オゾン層を破壊するのです。
すでに南極上空のオゾン層は無くなっており、オゾンホールと呼ばれています。

フロンガスのデメリットは環境破壊に繋がる

デメリット1:フロンガスによるオゾン層の破壊

 オゾン層が破壊されると、大量の紫外線が地上に降り注がれ、直接浴びることになります。
 皮膚ガンや白内障などになる危険性が高くなり健康に悪影響を与えます。
 さらに、人間以外の生き物にも影響を与えます。
 植物の正常な成長を阻害し、小魚やプランクトンなどの水中生物にも悪影響を及ぼします。

デメリット2:フロンガスは地球温暖化を促進する

 フロンガスは「温室効果ガス」の1つです。
 温室効果ガスとは、地球上に溜まり赤外線の一部を吸収することによって
 気温を高くするガスの総称です。
 地球温暖化によって海水の膨張、海面上昇、生態系への影響などが起こります。

冷蔵庫、エアコンなどに使用されているフロンガスは、
そのまま産業廃棄物として処理すると空気中に放出されていきます。

工場などで、フロンガスを使用した製品を外に持ち出せない場合のために、
「フロンガス分解装置」というものがあります。
フロンガス分解装置は、熱反応や化学反応によってフロンガスを無害な物質へ変えてくれます。
フロンガスの分解装置の需要は年々増えており、
昔製造されたフロンを使った製品の処理に使われることが多くなっています。

フロンガスのメリットデメリット

環境への影響を減らした「代替フロン」は有効?

そこで、環境に大変な悪影響を及ぼす従来のフロンガスに替わり
環境に悪影響を及ぼしにくい「代替フロン」というガスが開発されました。
代替フロンには「代替フロンHCFC」と「新代替フロンHFC」の2種類があります。
ちなみに従来のフロンガスは「特定フロン」と呼ばれています。

●代替フロンHCFC

 「代替フロンHCFC」は特定フロンに比べてオゾン層を破壊しにくい反面、
  温室効果は高く、二酸化炭素の10000倍の温室効果があります。
  使用している製品にはオゾン保護のラベルが貼られているため、
  温暖化への影響が分かりにくくなっています。

●新代替フロンHFC

  さらに改良されて、オゾン層を破壊しにくく、温室効果も低くなったガスです。
  しかし、開発当初の見通しよりもかなり温室効果が高くなってしまい、
  期待していたような効果は得られていません。

  比較的地球環境に優しい代替フロンは、特定フロンの代わりに
  日本でも冷蔵庫やエアコン、発泡剤などに使われてきました。
  しかし、代替フロンも環境に配慮されて開発されたガスとは言え、
  特定フロンと同じく二酸化炭素に比べて地球温暖化効果が
  かなり高い「温室効果ガス」です。

どちらのフロンにしても、温暖化効果は高いので、
代替フロンについても製造、使用ともに中止すべきだ、という声が出てきています。

フロンガスを使わないで製品の製造は可能か?

代表的な使い方は「冷媒」です。
冷媒とは、エアコンや冷蔵庫の温室調節に欠かせないガスのことです。
その他スプレー用のガスにも使用されています。

大変便利で多くの家電製品に使われていますが、
フロンガスを使用せずに製品を製造することは出来るのでしょうか?

●フロンガスを使用していない「ノンフロン冷蔵庫」

 名前のとおりフロンガスを使用していない冷蔵庫で、ノンフロンマークを表示しています。
 冷媒としては、イソブタンやシクロペンタンなどを使用しています。
 現在販売されている冷蔵庫のほとんどがノンフロン冷蔵庫であり、
 フロンガスが使われているのは、昔に作られた古いタイプの冷蔵庫だけです。

●エアコンには代替フロンが使われている

 エアコンには冷媒として代替フロンが使われています。
 エアコン製造各社は、オゾン層に影響を与えず、
 かつ冷媒として機能を損なわない物質として代替フロンが最適と考えています。

ちなみにオゾン層や温暖化に影響を与えない冷媒として、

 ①二酸化炭素やプロパンなどの自然冷媒
 ②冷媒になる物質を新たに開発すること

が考えられています。
温暖化にも影響を与えない冷媒の研究は行われていますが、
エアコンへの使用までは至っていません。

また自然冷媒は、エアコンに使う要件を満たしていません。
アンモニアは毒性があり、プロパンには燃焼性があるので
二酸化炭素は冷媒としての効率が悪いのです。

ただしアンモニアは安全管理ができる大型空調機に、
二酸化炭素は給湯器の冷媒として使われています。

このような理由から、今のところ代替フロン以外の冷媒を
一般的なエアコンに使用することはありません。

フロンガスを安全に処理する方法

フロンガスが使われている製品を処理する時は、安全かつ適切に処理するため環境省が定めた

 ●「フロン回収・破壊法」
 ●「家電・自動車リサイクル法」

によって、フロンガスを無駄に放出しないよう処理することが決められています。

専門の業者に回収を依頼するか、
リサイクル法で定められた方法で引き取ってもらう必要があります。

専門業者は、フロンを取り出し圧縮してボンベに回収する方法、
プラズマ分解などによってフロンを分解し、無害な物質に変える方法で処理します。

断熱材などにもフロンは使われていますので、これも回収し適切に処理されます。

業者の中には、必要以上に高額な料金を請求する者や、
回収したものをそのまま不法投棄するような悪徳業者もいます。
正しく処理してくれる業者に回収を依頼しましょう。

フロンガスは、エアコン使用が欠かせない現代において大変便利な存在です。
しかし、環境に及ぼす影響は気になるところですね。
フロンガスに代わる新しい冷媒ガスの開発が期待されます。

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