出願人、発明者、共同出願について

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

出願人、発明者、共同出願について

1 最重要事項 出願人!

特許を出願する際に、手続きで
もっとも重要なことは、出願人を誰にするかです。

その理由は、
出願人=権利者
だからです。

他方、発明者は名誉があるだけで、
何の権利もないのです。

その為、出願人を誰(どの法人)にするか、
更には、個人、法人のいずれかにするかなどは、
とても大切です。

今後の事業(会社)の運営方針にも関係してきます。

出願人は誰

なお、個人と法人のいずれがいいのかについての記事は
中小企業が知るべき知財戦略講座
を参照ください。

さらに踏み込んで、個人事業主ホールディングスという考え方を、
提案した記事がこちらです。

2 ちょっと考えましょう1 発明者!

次に決めなければならないことは、発明者を誰にするかです。

発明した人には、根源的に発明に対して権利があります。
特許を受ける権利というものです。

その発明者がそのまま出願した場合は出願人になりますが、
大抵の場合(特に会社の場合)は、会社が出願人などになるため、
この権利を譲り受けて、出願人として会社が権利者になるのです。

その為、発明者と出願人が異なる場合は、
その間で、発明の譲渡(特許を受ける権利の譲渡)が発生していなければなりません。

もちろん、無償で譲渡を受けてもいいのですが、
後から、会社には譲渡していないなどといわれることを防ぐために、
譲渡証書などが揉めたときに備えて必要になります。

そのような、面倒ごとが発生しないように、
発明者とすべきではない人を安易に、発明者に入れないでほしいのです。

安易に入れると、後から、譲渡の対価を貰っていないという主張されたときに、
実は発明者ではないと後から言うことが難しいので、後から困ってしまいます。

ただ、本当に発明者なのに入れないと、今度は冒認出願とされる可能性があります。

3 ちょっと考えましょう2 発明者!

逆に、発明者なのに、入れないのも後から問題になりえます。
その為、どこからが発明者なのかを明確に判断しましょう。

なお、判断の基準は

単に言われて手足を動かしていたり、していただけでは足らず、
どうしたら発明できるか、実際に考えていた人で、
その発明部分を見出した人

= 発明者

です。単なる管理者、補助者、等は発明者になりません。

4 住所等

出願人の住所は、登記簿上の住所を正確に記載しましょう。
後から修正するのが面倒です。

また、住所変更の際には費用をかけて変更する必要がありますので、
できるだけ、変動のなさそうな場所にいたしましょう。

5 個人の住所等は居所でもいい!

個人の住所を知られたくないようなニーズもあろうかと思います。
その時は、
発明者住所、出願人住所も、会社等の住所でもいいです。

例えば、こんな感じです。
「さいたま市西区西遊馬1813-1-1-203 植村総合事務所内」
という、住所(居所)も可能です。

個人が出願人となるときの、出願人住所もこのような表記でもいいです。

6 共同出願(出願人2人以上)

出願人を複数にするというお客様がいます。
正直、やめてほしいです。

その理由は、2人以上だと、特許の権利に互いに制限がかかるからです。
力関係が本当にイーブンならいいのですが、
そうでないのに、安易にいい人を演じるために、
出願人に複数入れる方がいます。

それは、とても危険な行為です。

いままで、何度も、「あの人、あの会社出願人に入れなければよかった」と、
後から後悔しているお客様を見てきました。

まずあることとしては、
① 仲たがいする
② 連絡がつかなくなる
③ 他の陣営に引き込まれる
④ お亡くなりになる(相続人全員が権利者になってしまいます。)。
⑤ お金出してくれないので、一人で費用は負担するものの、権利は共有という不公平感
等があります。

そして、権利も制限がいろいろついてしまいます。

例えば、
譲渡の際に好きに譲渡できない。

共同出願人の一人が他の陣営に行ってしまいそちらで好き勝手に作られる
(たとえ1%の持ち分でも、100%の実施ができてしまいます。)
等々の不利益があります。

ですから、できれば、出願人は一人にするべきです。

関連ページ

特許庁の出願人、発明者についての説明

特許(発明)を盗まれた!=冒認出願

以上

特許申請知識編

©弁理士 植村総合事務所 所長弁理士 植村貴昭

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