特許無効審判とは
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
特許無効審判とは
0 特許の無効審判とはどのような制度か?
一度登録した特許権をなかったことにする、恐ろしい制度です。
一度成立した特許権(特許査定後登録された)について、
各種の無効理由(=拒絶理由とほぼ同一)が実はあったのに、
それが看過されて登録されてしまったことを理由に、審判を請求することを言います。
代表的な無効理由は、
新規制違反
進歩性違反
記載不備
29条柱書違反
ですが、これ以外もマイナーですが、無効理由はあります。
なお、
拒絶理由だけど無効理由でない事由も、
無効理由ですが拒絶理由でない事由も、
存在します。
1 無効審判がどのような時に起こされるのか
特許無効審判は、単独で起こされることはほぼありません。
その目的は、通常、その特許がどうしても邪魔な場合に起こされます。
より具体的には、その特許権によって侵害の警告を受けている場合、
より切迫した状態になっている、その特許によって侵害訴訟を提起されている場合、
に、その相手方からの対抗策として提起されます。
そのような状態で、特許が無効になるというのは、特許権者側から見れば、
まさに死活問題です。
せっかく、苦労して特許を出願して登録までこぎつけ、
その虎の子特許を無断で使っている悪いやつ(権利者から見ればデス(笑))
を懲らしめようとしたら、
その基礎となる特許、苦労して取った虎の子特許が無かったことになる(無効)
になるというのは、正直耐え難いでしょう。
その為、この無効審判は権利者(たいていは、侵害訴訟の原告)も、
無効審判を起こす者(たいていは、侵害訴訟の被告)も必死です。
まさに、企業間戦争の様相を有することになります。
この訴訟の勝敗が、ほぼそのまま、侵害訴訟の勝敗ともなっていくのです。
更に、経営者同士の面子や、プライドをかけたものとなり、
泥沼の様相となっていくのです。
なお、侵害訴訟については、知財紛争(警告・訴訟)も参照にしてください。
2 植村の経験
植村は、侵害訴訟の訴訟代理人(原告も被告も)も何回もやりましたし、
この無効審判の代理人(原告も被告も)何回もやりました。
正直、どの立場でも苦しいです。
当然、当事者の会社などはもっと苦しいはずです。
ただ、無効審判は特に、過去の証拠が重要です。
訴訟の場よりも、過去の文献を探す無効調査(無効検索)がその勝敗を決します。
3 調査(検索)範囲及びその順番
その為、
日本の特許・実用新案は当然重点的に調べます
(見落としの可能性を下げるため複数の会社に頼むことも多いです。)
さらに、日本の意匠、
中国の特許・実用新案・意匠
アメリカ、ヨーロッパ、の特許等も当然に調べます。
そこから先は、
各種の業界紙、雑誌、論文、展示会などの情報も調べます。
相手の過去の取引相手で協力してくれそうなところ
更には、全世界の特許・実用新案・意匠・学術論文・雑誌あたりまで調べることが普通です。
この調査で、どのぐらい強力な先行文献が存在するかが、
実は、無効審判が成立するか否かの最も重要な要素だったりします。
4 調査(検索)費用
ここまで調全部調べると、数千万円という額になってきます。
それでも、特許権侵害を認められる可能性があるのが、億を超えてくるような場合には、
調べることも普通にあり得ます。
さらに、アメリカでの侵害訴訟はそもそも侵害額の認定が高いこと、3倍賠償もあることから、
ここまですることも普通に行われます。
アメリカでの訴訟で、代理人に支払う額だけで、10億円近いこともあります。
5 無効審判費用
日本国内での場合は、無効審判単体は、弁理士で対応できるのでかなり安く済みますが、
それでも、50~100万円程度は覚悟いただくことになってしまいます。
6 関連ページ
特許の調査(特許検索)の種類(先行調査・無効調査・侵害調査)
以上
©弁理士 植村総合事務所 所長弁理士 元審査官 植村貴昭