特許権・特許を受ける権利の移転・譲渡
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
特許権・特許を受ける権利の移転・譲渡
特許権の移転というと厳密には、特許となって登録された後の譲渡等を言います。
ただ、特許権となる前の譲渡も特許権の移転に含まれる場合が多いので、
ここでは、特許権となる前の「特許を受ける権利」についても説明します。
(1)一部譲渡も全部譲渡も可能
特許権及び特許を受ける権利は、
全部譲渡することも、その一部譲渡も可能です。
一部譲渡の場合は、
1%~99%の範囲で、さらに細かくでもどのようにでも割合を変えることができます。
(1%は0.00001%も可能ですし、99%は99.9999%でも、いくらでも可能です。)
ただ、注意していただきたいのは、一部譲渡になると、
譲渡後は、特許権又は特許を受ける権利は、「共有」とう状態になります。
この共有は、もともとの権利者にとっては、いろいろな制限がかかることになりますので、
共有状態は、面倒なことが多いということになりますので、注意が必要です。
また、下記の移転の登記の際には、
この割合も登記することもできますし、割合は載せないということもできます。
このとき、割合を載せない場合は、等分の割合だと推定されます。
(2)効力発生要件
なお、特許権の譲渡は登記がなければ、効力自体が発生しません。
第九十八条 次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。 一 特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限
二 専用実施権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は特許権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
三 特許権又は専用実施権を目的とする質権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
2 前項各号の相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。
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そのため、特許権(意匠・商標・実用新案も同じ)も、譲渡を受けた場合は、契約書で満足せずに、
必ず、特許庁に申請して、所有者の移転登記が必要です。
(3)登録前の移転
出願人名義変更届で対応します。
庁費用は、4200円 です。
(4)登録後の(特許権となった後)の移転
移転の原因には、譲渡(普通は有償でしょうが、無償も含まれます。)が代表的です。
他には、移転というか微妙ですが、会社であれば吸収合併などがあり得ます。
出願人が個人の場合は、相続による場合もあり得ます。
なお、特許庁でのガイドのページは、こちらのページです。
(5)登録後の移転の注意点:収入印紙に注意(特許印紙ではない!)
注意事項:特許商標等の手続きのために、特許印紙というのが存在します。
そのため、特許権・商標権等の移転なども、この特許印紙で対応できると思うのが普通です。
しかし、普通の
収入印紙
(↑ 郵便局とかコンビニに普通に売っているものです。)
じゃないと受け付けてもらえません!気を付けましょう。
しかも、結構な額になるので、間違えて買ってしまうと後でとても困ります!!
庁費用は、3万円です。
(6)移転の際の注意
移転の際に最も注意しなければならないことは、利益相反取引に該当していないかどうかになります。
下記の表で、丸がついている場合は、特段の書類(取締役会の承諾、株主総会の承諾等)が必要になります。
「(代表)取締役」は、代表取締役、又は、取締役 いずれでもという意味になります。
他方、代表取締役の場合は、ただの取締役の場合は除かれるということを意味します。
なお、上記表で、有償の時に厳しいのは、個人所有の物を不当に高く会社に買わせていないか、
のチェックを必要とするという考え方のようです。
(5)移転の際の必要書類
移転の際には、少なくとも、譲渡証書が必要です。
こちらについては、弊所で用意いたします。
また、(4)の利益相反取引にあたるため特別な証書が必要な場合もこれが必要です。
こちらについても、弊所にて用意いたします。
また、一般には、譲渡先の会社に移った後も、年金等の管理を行うために、
譲渡先にも包括委任状を頂戴して、各種の管理をすることが一般的です。
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