商標法第3条第1項第3号|商標拒絶理由対応編|商標の教科書

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

商標2:拒絶理由対応:3条1項3号対策

1 問題提起

商標の拒絶理由通知で、先願が存在する(第4条1項11号)以外では、
もっとも多い拒絶理由だと思います。

通常は、4条1項16号の品質誤認も同時に通知されると思います。

審査官への反論方法・対応方法を以下解説しています。

2 この拒絶理由通知の解説

 (1)条文

   商標法第3条第1項第3号は次のように規定しております。

    「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、
     次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

  (中略)

    その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、
     生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は
     その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、
     提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で
     表示する標章のみからなる商標」

 (2)解説

  この条文は、その商標の文言などが、その商品又は役務(以下、「サービス」といいます。)
  の、品質や内容を表すものである場合には、それを登録にしないというものです。

 (3)特徴

  この条文は、非常によく使われます。
  しかし、この規定を言われると反論することが非常に難しいです。

3 対応案

  対応が難しいからと言って、対応しないわけにはいきません。
  以下に、対応案を列記して解説します。

商標法第3条1項3号への反論

 (1)「普通に用いられ」ていないとの反論

  この条文は、普通に用いられる方法で表示する場合だけ、適用されます。
  そのため、出願商標が普通の方法での表示ではないとの反論があり得ます。
  この反論は、標準文字での出願の場合には極めて難しいです。
  

  他方、ロゴで出している場合には、一般的な書体だけで図形的ではない場合を除いて
  特に有効です。(もっとも、ロゴの場合で、この拒絶理由通知が来た場合は、
   大抵一般的な書体での出願だと思います)

 (2)品質や内容を表すとは言えないとの反論

  この反論は、例えば、審査官の認定のように必ずしも品質等を表すものではない
  との反論がありえます。

  たとえば、ラーメン屋(飲食物の提供)の役務について「小麦」の商標の場合は、
  材料に直ちになる可能性がとても高いですが、「こむぎ」であれば、
  必ずしも小麦であるとは言えないとの反論があり得ます。

  更に、(1)の反論もあり得ます。

  具体的には、小麦の場合、小学校の比較的低学年で学ぶ漢字ばかりであり、
  通常は漢字で書きます。それに対して「こむぎ」のようなひらがなは
  普通に用いられていないということができます。

 (3)間接的(暗示にとどまる)であるとの反論

3号に該当するには、その商標がたとえ品質等を表すとしても、
直接的ではなく、間接的にとどまるということも重要な反論のポイントです。

 (4)具体的ではないとの反論

例えば、その商標から漠然と何らかの品質的な物をイメージできるとしても、
それが具体的ではないという場合は、品質等を表すものではないということになります。

漠然としかイメージできないかどうかは、
その時点でその商品・サービスがどのようになされているかによって異なってきます。

つまり、ロボットという言葉がですが、産業機械であれば、ロボットは皆さん
イメージできるということになり具体的になってしまうので、
ロボットという商標は3条1項3号に該当するため取ることができません。

他方、セミナー等の教育の分野でロボットの場合、
現実にロボットが使われていないため、

ロボットが教師の容姿をして教えるのか
単なるパソコン学習をロボットというのか
ロボットがセミナーの受付だけをするのか
質疑応答をロボットがするのか
教師がロボットのコスプレをして教授するのか

いずれか、具体的にイメージできません。
このような場合は、具体的ではないということになるのです

逆に言うと、いずれかのサービスが一般的に行われて、
多くの人が、どれかのイメージに固定された後は、3条1項3号に該当することになります。

つまり取引の実情から判断されることになります。
この取引の実情は、上記(1)~(3)でも同じように、判断の基礎となっていきます。
この取引の実情などは、他の3条1項の条文も同じように判断されます。

4 その他

正直これに対する反論が商標における拒絶理由通知の中で最も難しいので、
この回だけでは書ききれません。
そのため、今後も思いつくたびに、記載させていただこうと思います。

  特許庁の商標法第3条第1項第3号の審査基準はこちらです。

5 注目すべき判例、事例

白を意味するとして拒絶理由が通知されたが、
ローマ字の場合「white」等を使うので、識別力があると、意見書で主張したところ、
登録になった事例。

「幸年期」について、特段の意味を生じないとした判断。

単に間接的に思い描けることと、具体的に品質等を思い描けることとは別もの

辞書等にないから造語。
使用の例があっても、直ちに直接的具体的に理解されるとまでは言えない

関連ページ

特許庁の商標審査基準 商標法第3条1項3号

また、拒絶理由対応のまとめページは以下です。

商標の拒絶理由通知対応の仕方

©行政書士 植村総合事務所 所長 弁理士 植村貴昭

 

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