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勝敗予想:「Re就活」と「リシュ活」就活サイト名の商標権(訴訟)の争い
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 |
勝敗予想:「Re就活」と「リシュ活」就活サイト名の商標権の争い
問題の発生
「Re就活」と「リシュ活」で争いになっているようです。
称呼が、かなり近いということとで、類似ということなのだと思います。
また、Re就活の概念も、近い場合があるということなのだと思います。
商標権、不正競争防止法で争っているようです。
私の判断
定型的には
商標は、称呼・概念・外観のいずれかが類似する場合は、
商標全体として類似と判断されます。
そうすると、
呼称は似ている音である。
概念(意味)も近い場合があり得る。
以上からすると、普通に考えると類似ということになります。
特殊事情1(記述的商標)
「Re就活」からは、再度の就職活動という意味が容易に生じるため、
記述的商標といえる部分があると判断できます。
(記述的商標(識別力のない商標):標準文字記述的商標を参照してください)
そのような、記述的商標は、普通の創作商標に比べて、
その権利範囲は狭く判断されるべきです。
外観が大きく異なる
外観が大きく異なっております。
この要素がとても大きいです。
今や、再就職市場の場合、ほとんどWebで行われており、
称呼は外観よりも重要視されることは少ないという事情もあろうかともいます。
称呼が同じではない。
「リシュウカツ」と「リシュカツ」で、
称呼は異なり、かつ、聞き間違える可能性は高くない。
概念
「リシュ活」は、リシュカツであり、「シュウカツ」とならないため、
「シュカツ」から就職活動という意味が生じることは、かなり困難である。
結論
以上からすると、Re就活さんが勝つのは、難しいかと思います。
ただし、「リシュ活」が、サイトの構成などで、似せているような他の事情があれば、
侵害とされてしまうかもしれないなぁと思います。
なぜ取り上げたのか
たまたま、記述的商標の記事を本日書いていたのと、
お世話になっている、ロースクール時代の先生の牧野和夫先生が、
コメントしていたので、記載させていただきました。
裁判の結果等
上記の内容は、裁判があったということを聞いたときに書いた内容です。
以下は、裁判の結論(和解)があったのちに書いた内容です。
時事通信で記事になった
時事通信さんからインタビューの申し込みがあって、
答えたら、下記の記事になりました。
時事ドットコムさんに乗った、私のコメント
元特許審査官の植村貴昭弁理士は
「『Re』の視覚的な印象は強力だ。音は似ていても無視できないほど大きな差異があれば類似とはならない」と指摘。
社団法人側から「ただ乗り」する動きがなかったことも有利に働いたと評価した。
との記事でした。
裁判の結果等の解説:経緯
出典等
リシュ活側(一般社団法人履修履歴活用コンソーシアム)のWebページからの出典です。
地裁判決時のリシュ活側の発表(2021年1月13日発表)
和解時のリシュ活側の発表(2021年11月1日発表)
経緯
2019年02月01日 地裁における裁判開始
2020年10月20日 地裁について口頭弁論終結
2020年12月24日 「リシュ活」登録査定について異議申立への特許庁決定 リシュ活 維持
2021年01月12日 地裁判決 「リシュ活」と「Re就活」は類似との判断で、リシュ活側敗訴
(なお、特許庁の決定は口頭弁論終結があったのちなので、この事情は法律的に配慮されない)
2021年01月末ごろ? 「リシュ活」側 不服として控訴
2021年10月7日 「リシュ活」側実質勝訴で和解成立
地裁の判断
「リシュ活」と「Re就活」とは、称呼が類似
アクセントの違いで区別できるほど印象が異ならない。
特許庁の判断
ざっくりいうとアクセントで区別できるとの判断
ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標は、それぞれ、上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、本件商標は、「リシュ」の片仮名と「活」の漢字との組合せよりなるのに対し、引用商標は、「Re」の欧文字と「就活」の漢字との組合せよりなるものであるから、外観上、明確に区別できる。 また、称呼についてみるに、引用商標は、「就活」の文字の語頭に「Re」の欧文字を付した構成からなるところ、語頭に「re」を有する親しまれた英単語である「reaction(リアクション)」、「reform(リフォーム)」、「reset(リセット)」、「regain(リゲイン)」が、「re」の直後の音節にアクセントを置いて発音されること、及び、「就活」の文字は「シューカツ」と一気に称呼される親しまれた略語であることに照らすと、その全体から生ずる「リシューカツ」の称呼は、第1音節の「リ」の音を明瞭に発音した上で、第2音節の「シュー」の音にアクセントを置いて「シューカツ」と一気に称呼されるものといえる。さらに、当該「シュー」の音は、長音を伴うために、より強調して聴取されるものである。 これに対し、本件商標から生じる「リシュカツ」の称呼は、短く平坦に称呼されるものである。 してみれば、これらの差異が、5音又は4音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいい難く、両商標をそれぞれ一連に称呼するときは、語調、語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはなく、十分に聴別し得るものである。 加えて、本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標は、「再度の就職活動」程の観念を生じるものであるから、両者は、観念において紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標は、語尾の「活」の文字が共通するものの、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのないものであるから、各商標から生じる外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるというのが相当である。 |
私からのコメント
外観がかなり異なっていること、概念も異なること。
そして、Reについて、通常はアクセントが入り、かつ、就活との間に通常、一瞬間を置く、
ということから、平たんにかつ連続して発音する「リシュ活」とは区別できるということから、
上記のような判断になったものと判断します。
また、商標の実務において「長音についてより強調して聴取される」という判断は重要かと思います。
@弁理士 植村総合事務所 所長弁理士 元審査官 植村貴昭