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放送設備の構成機器|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

放送設備の構成機器

建築設備の分野で設ける「放送設備」を構成する各種機器の名称、
特徴について解説しましょう。

ここでは建設設備用の機器を中心に解説することとし、
音響設備としての機器については割愛しています。

建築物に設けられる放送設備は、
音声を電気信号に変換する「マイクロホン(マイク)」、
CDやマイクなど数多くの音源を混合する「ミキサー」、
音源を増幅するための「アンプ」
アンプから送られた電気信号を音に変換する「スピーカー」などがあります。

マイク、アンプ、スピーカーのみでは、手動による音声放送しか対応出来ないため、
建物用に設置する放送設備には、自動放送を行うための「プログラムタイマー」、
CDやDVDを再生する「BGM装置」を組み合わせて使用します。

自動放送はプログラムタイマーを組み合わせる

複数の音源が混在する場合は、
「マトリクスユニット」と呼ばれる装置で優先順位を与えて放送が行われます。

 

ミキサー

マイクやBGM装置など、数多く存在する音源装置の信号をまとめ、
混合してアンプに送り出すための装置です。

自立ラックやワゴンに収納し、自動音声を流すために使用する「ラックマウント型」の他、
生放送やライブで用いられる「コンソール型」など、いくつかの種類があります。

コンソール型は入出力の個数や調整可能項目が非常に多く、
充実した音響調整が可能ですが、操作には習熟が必要であり、
建築設備に用いられる非常放送や業務放送には適してはいません。

イベントステージや舞台など、多くの演目やイベントが行われる用途であれば、
コンソール型を採用する事例もありますが、
ほとんど簡易に自動放送ができる「ラックマウント型」の製品が用いられます。

 

パワーアンプ

パワーアンプは、CDプレイヤーやマイクなどから送られる音声信号を、
電気信号として増幅するための機器です。

スピーカーを駆動させ音声信号を放出するには、パワーアンプによる信号増幅が必須であり、
スピーカーの総ワット数よりも大きな出力のパワーアンプを選定しなければなりません。

建築用途の非常放送や業務放送では、
数十~数百台のスピーカーを同時に駆動させる必要があるため、
ハイインピーダンス方式のパワーアンプが採用されます。

10~50W程度の小出力なパワーアンプであれば、
可搬型としてワゴンラックなどに収容して持ち運ぶことも可能ですが、
120Wを超えるような中大規模のパワーアンプを複数組み込むような計画であれば、
自立ラックに収納(マウント)し、合わせてミキサーやイコライザー、
プログラムタイマーなどの装置も一括収納するのが一般的です。

 

マイクロホン

マイクロホンは、音を電気信号に交換するための機器で、単に「マイク」とも呼びます。
マイクロホンで拾った音声信号は、ミキサーでまとめられてアンプに送られ、
増幅されてスピーカーに伝送されます。

マイクロホンには、安価で耐久性の高い「ダイナミックマイクロホン」と、
高価であるがレコーディングに適している「コンデンサマイクロホン」があります。

マイクロホンは、構造の違いだけでなく集音の指向性についても違いがあります。
一般的に用いられるマイクロホンは「単一指向性」と呼ばれます。
一方向からの感度が高いマイクロホンが用いられます。

正面だけでなく、左右90度程度までの感度が特に高いのですが、
背面の感度はほとんどないのが特徴です。
流通しているマイクは多くがこの方式となっています。

トークショーなど、
色々の方向からの音声に対して集音したいのであれば「無指向性」と呼ばれる、
360度どの方向からでも同一の感度を持つマイクロホンが使用されます。

報道における取材や、スポーツ中継など、限られた方向からの音声のみの集音が目的であれば「超指向性」と呼ばれるマイクロホンが用いられます。
正面方向に対して極めて高い感度を持ちますが、
少しでも角度があると感度を失うという特殊マイクロホンです。

 

マイクロホンの指向性の違いと特徴

音声を集音するためのマイクロホンは、指向性によって幾つかに分類されます。
感度方向の分類としては
「無指向性」「単一指向性」「超指向性」「両指向性」の4つに分類され、
かつマイクの性能として「感度」と「周波数特性」があります。

マイク感度とは、マイクロホンに向けて一定の大きさの音を与えた時、
出力として取り出せる大きさを示します。

感度が高いマイクロホンは小さな音でも集音出来ますが、
感度の低いマイクロホンは、集音のために大きな音が必要になります。

周波数特性とは、マイクに一定の大きさの低音(低周波)~高音(高周波)を与えた際、
出力側に発生する電圧の変化を示しています。
低周波から高周波まで平坦であるのが最も望ましいのですが、
「高音域が若干高い」という特性を示す状態が、最も使いやすいとされます。

 

無指向性マイクロホン

マイクロホンの周囲に対し、どの方向からの音に対しても、
変わらない感度を持つマイクロホンです。

周辺の音を偏りなく集音するのに適しており、対談やトークショーなど、
一方向に限らない集音を必要とする環境では、無指向性マイクロホンが適しています。

全方向からの音を全て拾うため、反響しやすい空間ではハウリングが懸念されます。

 

単一指向性マイクロホン

正面方向に対する感度が高く、
側面からの集音は正面方向の約半分まで感度を低減したマイクロホンです。
背面からの集音は10%程度であり、ほとんど集音されることはありません。

一方向からの集音性能が特に高いので、反響が大きな空間でのハウリング防止に適しています。流通しているマイクロホンの多くが、単一指向性です。

 

超指向性マイクロホン

正面に対する感度が、単一指向性マイクロホンよりも高く、
側面からの集音を0%としたマイクロホンです。

残響や反響のあるホールでも、支障なく集音できるという特徴がありますが、
集音できる範囲が極めて狭いため、音質の劣化が懸念されます。

記者会見や取材など、限られた一方向のみに限って集音し、
対象以外の方向からは出来る限り拾いたくないのであれば、
超指向性マイクロホンが適しています。

 

両指向性マイクロホン

正面と背面の指向性が特に強く、
側面の感度を10%程度まで制限した特殊マイクロホンです。

対談や講話など、対面する両方向のみ集音する用途に適しています。
無指向性マイクロホンに比べて、ハウリングの発生は起こりにくいでしょう。

 

ワイヤレスマイクロホン

マイクを有線で接続せず、電波や赤外線などを用いて信号を伝送し、放送を行う方式です。

有線方式のように、接続端子からの長さに左右される事なく、
どこでもマイクを取り扱えられるという利点がありますが、
電波を効率良く受信できるように、レシーバーを各所に配置しなければなりません。

赤外線方式

赤外線方式は、音声信号をFM変調し赤外線で伝送する方式です。

赤外線による伝送は直進性が強いが、指向性が狭く透過しないという性質のため、
回り込みによる混信が少ないという特徴があります。

回り込みが発生しないという特性は、
放送区画外への情報漏洩の可能性が少ないという利点につながります。
ただし、受信センサーを多数設置しなければならないという欠点につながります。

電波方式

電波方式は、FM変調した音声信号を800MHZ帯域の電波として伝送する方式です。

電波は球体状に広がるため、回り込みによる受信が期待でき、障害物があっても通信可能です。ただし回り込みは混信の原因ともなり、漏洩には十分な注意を要します。

金属体であれば電波は完全反射されますが、
ALCや石膏ボード、木材などは、減衰するものの電波を透過するので、
放送区域外への情報漏洩が懸念されます。

 

ワイヤレスマイクロホン方式は、
ワイヤレスマイク、ワイヤレスアンテナ、ワイヤレスチューナーで、構成されます。

マイクロホンからアンテナまでは無線方式であり、
アンテナからチューナーまでは有線方式となります。
チューナーは、受信した電波を取り外してアンプに送信する役割を持ちます。

ワイヤレスチューナーを同一エリアで複数使用する場合、
周波数は0.25MHZ以上の間隔を開けて設定するのを基本とします。
同一エリアで、最大30チャンネルを使用出来ます。

付近に同一の方式で動作するワイヤレスチューナーが運用されている場合、
電波が混信するので、チャンネル番号が重なっていないか確認しなければなりません。

最近では、256チャンネルを選択できるデジタルワイヤレスチューナーが開発され、
電波の混信が発生しないよう配慮されています。

電波法により、800MHZ帯域の電波がワイヤレスマイクロホンに割り当てられており、

陸上移動無線局の免許が必要な「A型」、
免許不要の特定小電力無線局となる音声・楽曲用音響システムの「B型」、
特定用途の音声拡声に用いる300MHZの「C型」、
劇場やホールの音声ガイドに使用する70MHZの「D型」があり、

用途毎に使い分けがなされています。

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