法的観点から:「セイウンスカイ」「ニシノフラワー」馬主・西山茂行氏の『ウマ娘』二次創作使用の許可や撤回について
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
法的観点から:「セイウンスカイ」「ニシノフラワー」馬主・西山茂行氏の『ウマ娘』二次創作使用の許可や撤回について
何があったのか?
いま(2021年4月)の時点で、「ウマ娘 プリティーダービー」というソーシャルゲーム
がかなり遊ばれているようです。
このゲームは、競馬の馬を擬人化(少女化)して、
その少女が走るというゲームのようです。
テレビでも2シーズンアニメ化を行って、
広告していました。
その中で、実際に存在した馬の名前が使われています。
「ライスシャワー」「トウカイテイオー」「スペシャルウィーク」「サイレンススズカ」等です。
私は、競馬には詳しくありませんが、
私でも聞いたことのある馬がほとんどです。
ほとんどの有名馬が登場するといっていいのだと思います。
馬主さんの許可?
そのなかで、この週末(2021年4月23日ごろ)に、
どうやら、馬主さんである、西山茂行さんという方が、
二次創作していいよということを言ってしまったようです
それを聞いた一部のネット上の方が、
何でもやりたい放題だと言い出したようで、
それを聞いた、西山さんが許可を取り消す発言をしたということのようです。
なお、この西山さんが所有している(所有していた)馬で、
「ウマ娘 プリティーダービー」に出てくるのは、
セイウンスカイ
ニシノフラワー
という2頭の馬のようです。
ネット、コミケ等の二次利用の状況
現状、コミケやネット上でアニメ・ゲーム等のキャラクターが、
2次利用されているという現状があります。
ただ、その利用は健全なものよりも、
裸や性行為などが描かれる対象として利用されていることが多いようです。
そのような現状をみて、撤回になったということかなと推測しています。
法的見解1(パブリシティ権)
ここから、法的な判断をしたいと思います。
人間の名前の場合、その名前を利用した場合には、
パブリシティ権という権利が与えられており、
勝手に第三者はその名前(写真)などを使うことは許されません。
ただ、馬にまでその権利を認めるかとなると、
かなり難しいです。なぜなら、このパブリシティ権は人間の基本的人権の人格権から由来するものだからです。
現実に、この馬の名前の利用について争われた判例があります。
ギャロップレーサ事件 と
ダービースタリオン事件 です。
下級審、控訴審とそれそれ馬主側勝訴・ゲーム会社勝訴と結論が分かれ
最終的に最高裁判決まで争われたものです。
結論から言うと、馬にまでパブリシティ権を認めないというものです。
他の法律構成
他の法律構成、不正競争防止法、著作権法、商標法
等を検討しましたが、もし、パブリシティ権が認められない場合には、
他の法律でも、馬主が馬の名前を勝手に使うということについて、
差し止められる方法はなさそうです。
ただ、商標などを取っていたり、その馬の名前で何らかの商売をしているなどすれば、
可能性はあると思います。
ただ、2次創作が自由なわけではない
ただ、上記のような法律論になりますが、
コミケやネット上で自由に、
「ウマ娘 プリティーダービー」でキャラクター化された馬を自由に使えるかというと、
そういうことはないです。
馬主にはないですが、このゲームを作った、Cygamesには、当然著作権が存在しております。
2次創作はそのゲーム会社の著作権を侵害することになるので、
自由にできるものではないのです。
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